第23話 桜の危機
「殿。庵原将監は殺されたようですな」
「我が師よ。将監が倒されるほど
信秀は強かったのでしょうか?」
「殿。天下は空のように広うございます。
庵原将監程度の者なら
そこらの石ころでも変わりになります」
「それよりも、織田は長子の信長が跡目を継ぎました
警戒すべきは信秀では無く信長のほうです」
「大うつけと言う評判の者がですか?」
「殿。世間の評判など噂を広めれば何とでもなります」
「あれは仮の姿です。時が来れば必ず強敵となりましょう。
手練れの暗殺者を雇って行かせましたが、
誰も戻りませんでした」
「ふむ。師が言うならばそうなのでしょう。
北条と武田は大丈夫でしょうか?」
「武田は信玄の元、結束が固くなりましたが、
北の春日山城にいる上杉謙信が信玄と戦う事に
なりそうですので、特に問題にはなりません」
「小田原の北条は?」
「北条は早雲の遺言通り、関東を制圧するつもりです。
北条家に長年仕えて来た風魔衆は厄介ですが、こちらが
怪しい動きを見せなければ敵視はされぬでしょう」
「師は何でも知っておりますな。
知らぬことはあるのですか?」
「勿論ございます」
「では恐れるものはあるのですか?」
「ふむ……恐れるものですか。あります。
誰もが産まれるように、そして誰もが死ぬ。
その倫理の過程は恐れております」
「師にはまだまだ生きて頂かないと困ります。
まだまだ教えを乞いたいと思っておりますゆえ」
「ご安心くだされ。まだまだ死ぬ事は決してありませぬ。
それにお教えしたい事は、殿が思われるように、
私も殿にはお思いの事を教えようと思っています」
「?!! 出あえぃ! 何者かがおる。捕らえてまいれ!」
雪斎はどこからか視線を感じて、声を上げた。
大声と共に直ぐに忍者が幾人か現れて、
その場から散って行った。
「仮に逃げられても、運よく特別問題になるような話は、
しておりませなんだので問題はございませぬ」
雪斎は天上を見上げた。
「しかし、この駿府城に忍び込み、
ここまで気配を断ってくるとは、
私に気配を感じさせないとは、相当な手練れです」
真田蒼紫は敵将を討ち取り、
更に岡部兄弟を救った事などから今川義元の信頼を得て、
今川家の本城であるこの駿府城の城下町に屋敷も頂き、
まだ家中の者達だけではあるが、
誰もがその名を知る武の将として認められていた。
突然、何の前触れもなく、桜が慌てて飛び込んできた。
「桜? また問題を起こしたのか?」
「うん。ちょっと後で説明はするから隠れさせて」
「よいよい。俺の知人だと言って追い返してやるわ」
「今回はちょっと無理だから隠れるね」
真田はあの慌てようから見て、
居間に立っているのはまずいと判断して、服の上から
水を浴びて、髷を取って髪に水で汗をかいたようにして、
広々とした部屋に急いでいき、木刀を手に持ち、
稽古を始めた。
蒼紫は神経を集中させて、外で話している内容を聞いていた。
「おい。確かなのか? この屋敷は真田蒼紫様の屋敷だぞ?」
「はい。ですが、確かにここに逃げ込みました」
忍者頭は部下の言う通りだとしても、
いきなり
するのは失礼だと判断して、まずは頭が尋ねることにした。
そして小隊の忍者たちには自分が話している間に、
真田にバレぬよう調べるよう命じた。
もし気配を感じたら、
ここでも関係なく捕らえるようにと伝えた。
忍者の姿ではまずいので、変化の術を使い、
刀を仕込み杖にして、老人の姿に変わり
真田の屋敷に入っていった。
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