第22話 プレイヤーの目的

遺体の無いまま、織田信秀の葬儀は行われた。

丹羽長秀から父の死に様を聞き、最期の行動だけは

認めるしかないと信長は思った。


信長には子飼いの自慢の配下が大勢いた。

その中にはプレイヤーも大勢含まれていた。

そして他よりも圧倒的に信長を選んだ

プレイヤーたちには理由があった。


この世界の住民ではないプレイヤーたちは未来から来ていた。


この会社は本来、今の医学では治せない病気を治療する為の人体を冷凍保存する会社であった。

その為、未来に行く為の研究も同時に

進められていた。


しかし、想定外な事が起き、

未来には行けないが過去には行ける事が判明した。


会社は過去に行けるイベント的なツアー等で集客したが、過去を知っていると言っても、

それは歴史の1ページに過ぎず、過程を知る者はいない為、実際に過去に行って、

帰って来れる者は皆無であった。


つまりは命を落としたのである。


会社は裁判で赤字になり、

社内でボーナス付きの良案の募集を出した。

そして、一人の社員が元々ゲーム会社に

売り込む予定であったものを国に提供した。


歴史から多くを学べる事を売り込み、その利益は

莫大なものに繋がる事を話し、国も納得した。

会社は国に無料で提供した。

国家予算にはいざと言う時の為に、

使用される資金があった。


無料で機材は提供するが、過去に送り込む為に

必要不可欠な特殊なプラズマを

会社は生成していた。

そのプラズマエネルギーを国家は買い取ると

いう形式を取り、利益とする事にした。

会社はこれで莫大な利益を生み出した。


国は兵士を送り込んだが、

誰一人として戻って来なかった。

これにより、

この社員は大量に兵士を送り込んだ事により、

未来である現在に影響が出る恐れがある事を

進言した。


これにより国は厳選したエリート部隊を

各国から募り、小隊規模で各地に送り込む事に

した。

しかし、それでも戻る者は

誰一人としていなかった。


国は開発した会社に実際に

過去に送られているのか?と

疑問を持つようになった。

そして売り込んできた男に

その有無をどうにかして確認できるよう迫った。


そしてその男はシステムを改めて調べたが

その答えを見つける事は出来なかった。

考えに考えを重ねて、

自ら行き事の詳細を調べて、

歴史上、過去からあるとされる場所へ、

詳細を記した物を埋める事にした。

戻って来れない恐れもある事から

社員自身も覚悟を決めて、

彼を守る為に精鋭中の精鋭チームが組まれた。


そして一般人に対しては、謎を解き明かした者には、莫大な賞金を支払うものとした。

ただし、命の危険性も示した上で誓約書も

書かせて、募集をかけた。


戦国時代には多くの謎があった。

特に信長の死や他にも多くの謎があったが、

本当はどうだったのか?

と言う名目で出したが、男は知っていた。


違う時代に干渉し過ぎれば、

必ず歴史は変わることを。

その為、細かいルールは設けなかったが、

大きく歴史を変えようと、

故意にした者は退場となり、

エリート部隊に殺される事とした。

男は研究所に協力を要請し、ある事を調べ出した。


いわゆる過去に干渉した場合の分裂した

未来の件であった。

その点に関しては様々な説はあったが、

あくまでも1つだけの過去に絞って出来る限り、

分裂しないよう調整役として、

まずはプレイヤーにも内緒で、

いわゆるゲームマスターが送り込まれた。


研究所の人間はゲームマスターを送り込んだ事は、

特別大きな問題とせず、男に報告したのは数日後の

自らが行く日の前日であった。

男はすぐに研究所に連絡し、

ゲームマスターを即刻戻すよう要請した。

戦国時代には存在しないモノで

極々特殊な状況下でないと、送られない帰還する

特殊なボールのようなモノで、

握り潰すと僅かな時間ではあるが、

現在と繋がるモノであった。


理由は単純に、ゲームマスターはゲームの制作に

関わっていた為、知識が少しある程度であって、

このような実際の戦国時代に送ったところで、

任務内とされるある程度の自由も与えていた為、

問題が必ず起きると、男は研究所に伝えた。


研究所の人間はすぐに全てのゲームマスターと

直接繋がる回線を予め用意していたが、

生きているにも関わらず、

メッセージの返信も来なかった。


それから数日後、全てのゲームマスターは一斉に

死亡した。

心臓をやられた場合は、

脳はすぐには機能停止せず、

その最後の最期の時は僅かだが見れる為、

すぐにその脳に残った映像を早急に確認した。

ゲームマスターの死ぬまでの直前の様子が

映し出された。


男の言った通り、ゲームマスターは終結して、

村などを襲う様子が見れた。

その惨状は、酷すぎるものだった。

金品も全て奪って証拠を消す為、

全ての村人を殺していた。


男は研究所からの要請でゲームマスターに

近い存在で、尚且つこの前のような事が

起きないようにするには

どうするべきか相談を受けた。


男は間を置かず直ぐに指定してきた。

まずゲームマスター同士の繋がりを無くして、

あくまでも個人でプレイヤーとしての権利も

認めた上で、悪質なプレイヤーを

取り締まる事を第一とし、

その他は1プレイヤーとして

認めれば問題は無くなると伝えてきた。


そしてタイムパラドックスが起きないよう

世界を完全に孤立させ、

ゲームに近い現実を作り出す事を提案してきた。


命を懸ける事には変わりは無いが、

孤立化させた場合にはこの現実世界では

パラドックスは起きず、

ハサミで切り離すように、

完全に独自の世界観を作り出す世界

ではどのような異常事態が起きても

我々の歴史には触れないというものだった。


実に理に適っていた為、即決された。

確かに戦に出たとしてもプレイヤーの制限で

悪質な事はできる暇もなく、

どこかの国に所属して悪事を働けば、

国に処罰される。


あくまでも過去を知る事を利用して

悪事を働く点に置いても、個人ではそれも

難しく命の危険に身を自ら晒さず、

己の命のほうを取ると判断された。

違反は男によって限定され、

問題が起きる事は無くなった。


簡単に言えば信長の暗殺や家康の暗殺、

秀吉の暗殺などがそれに該当した。

縛りは緩くして、大々的に募集をかけたところ、

圧倒的予想外な人数が参加希望者として

連絡してきた。

参加費用を払い、命を落とすかもしれないという

同意書にサインをして過去に次々と送ったが、

戦国時代故に、次々と死者は絶え間なく出た。


逆に10日ほど生きていたプレイヤーは、

長く生き残る傾向があった。


単純に戦国時代を楽しみたいという理由で

来たもののほうが、慎重で、

生き残る確率も高かった。

逆に賞金目当てのプレイヤーは

次々と命を落としていった。

これに対して、会社は男に分析を頼んだ。


次の日、男は分析結果を送ってきた。

会社の重役たちの一人になっていた男は、

会社には出社しないという約定の元、

契約を他社とはしないと約束していた。


たった一日の分析結果など役に立つ訳が

無いという、古参の役員たちは

すぐに口を閉じる事となった。

的確な意見であり、理由も納得のいくものだった。


男の分析結果は、まず歴史を知っている者ほど、

自分は理解していると思い込む為、

現実とのギャップで死亡率を高めている。

逆に歴史を知らない者は警戒心が強い為、

危険は出来るだけ避けようとする。

そして賞金目当てで行ったものは

安易に考えすぎている為、

歴史的に弱い敵だと思っていても、

現実では自分のほうが遥かに弱い事を

考えようとせず、あくまでも歴史頼りになる為、

死亡率が高くなるというものだった。


確かに歴史上弱いとされていた武将がいたとして、

それはあくまで真実かどうかも

分からない事であって、

自身の力を考慮してない点での死亡率が高いというものは十分納得のいくものであった。


男は自身の意見も添えてきていた。

現在生き残っているプレイヤーは少なく、

来てもすぐに死亡する為、

今の倍、行けるように設備を整えて、

生き残る率を高めるべきだというものであった。

実際にプレイしていない

プレイヤーの死亡率の高さから

考えてもそうするべきだと。


実際の歴史を知る者は誰もおらず、

想像以上の死亡率のため、我々が思うよりも、

遥かに難しいものなのだろうという意見だった。


賞金狙いのプレイヤーたちは圧倒的に多くいた為、

信長の配下にもプレイヤーが

多く集まっていたのだった。

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