第18話 真田蒼紫対河尻秀長

元信が静かに寝息を立てて、

休みだしたのを確認し、

真田は陣幕から出て、先ほどから挑発を続ける

討ち取った河尻秀隆の息子である秀長を、

強い眼光を当てて見た。


そして一騎打ちを望む、秀長に対して馬に跨ると陣営からゆっくりと近づいて行った。


「お主が我が父の仇の真田蒼紫に相違ないか?」

「間違いない。確かに俺が討ち取ったが、お前はまだ若い、

死に急ぐよりも、もっと強くなったら相手をしてやる」


「ふざけるな!」

秀長は槍を大きく振るいながら、

場を詰めて来た。

3回転目も届かず、4回転目にようやく接触した。


真田は片手で軽くあしらうつもりで、

槍で弾き飛ばそうとしたが、

4回転目であったが為か、

柴田勝家のとの戦いの疲れのせいか、

槍と槍は交差して、鍔迫り合い状態になった。


顏も近く、怒りに満ちた眼で、

真田をにらみつけていた。

勝家の一撃は確かに重かったが、

ここまで響くとはと改めて鬼柴田の

恐ろしさを肌で感じた。


しかし、周囲はそうは見て無かった。

鬼柴田と戦った者が、

河尻の息子と互角の戦いをしていると誤解した。


こうなると織田方の士気は上がり、

今川家の士気は下がりつつあった。


真田には帰れと言われたが、桜はずっと見守っていた。


まだ戦場で戦える術は覚えてない彼女は、

臆病な性格であった為、戦闘系の術では無く、

幻術系の術を幾つか覚えていた。

晩熟おくてで、

はっきりと言えない性格だった。

その為、一番簡単な仕事である兵糧の売買で、

黒字にする事が出来ず、

プレイヤーであった二人の男は、

足手まといだと言って離れていった。


その彼女を勇気づけ、金子きんすもくれた上に、くノ一へと導いてくれた。

彼女は生まれて初めて、自ら戦いの場に身を置くと決めた。


真田さんなら一瞬の隙さえあれば、

必ず反撃するはずだと判断して、

彼女は動かす事は出来ないが、

見せかけの分身の術を使った。


本物は一体だけで、二人を隙間なく囲んだ。

忍術は多くの精神エネルギーを必要とする。

桜は全てのエネルギーを術に注ぎ込み、

その場で倒れて気絶した。

その命を懸けた幻覚で、蒼紫は桜が思っていた通り、

まさに刹那のタイミングで槍を槍で絡め取り、

河尻秀長の槍を空高く飛ばした。


そして、その槍を追う目よりも速く刀を抜き、

その刃で秀長の首を一刀両断両断した。


馬上にあった体は安定が取れず、

そのまま首が無いまま地面へと崩れ落ちた。


気絶した少女を片手で支えながら抱き込み、

真田は桜に危険な真似しやがってと

気を失っている少女に声をかけたが、


心の中では、ありがとうと言っていた。

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