第8話 帰還
「お前と言う奴は! また失敗しおったな!
一番簡単な任務を失敗してどうする?!」
城下であの少女が、台所奉行に叱られているのが見えた。
「ごめんなさい! 次こそはちゃんと計算して黒字にして、
見せますのでお許しください」
少女は頭を何度も下げていた。
「次にもしも失敗したら、お前は追放じゃ!」
「はい! がんばります!」
台所奉行が去った後、信頼度が薄い青になっていた真田蒼紫の方から
近づいてきた。少女の近くの草陰に隠れていた2人の男も、少女の近くに
駆け寄った。
「おい! お前ら戦場でも全く戦果を上げて無かったな。
お前たちみたいな恰好をした弱い奴らは大勢いたが、
あれもお前たちの仲間なのか?」
「一応、仲間になります」
「やはりそうか。女、
「え?! わたしはそう言うのはしないのです」
「そんな恰好をしてよく言えるものよ」
「次の戦は、立春の春先と決まったぞ。
八カ月もあるからその間に俺は、身分上げをするつもりじゃ」
三人とも顏を見合わせるだけで、何の事か分からない様子を見せた。
「お主らまさか、そんな事も知らんのか?」
三人は頷いて、返事として返した。
「呆れた奴らじゃ。よいか? お主たちみたいに、一番小さな仕事
ばかりしても話しにならん。仕事が出来る奴らには、それぞれに
見合った仕事を割り振るわけよ」
「お主らのような仕事は、友好的な国の人や、浪人と会う機会が多い。
町には居酒屋があるから、そういった奴らと仲良くしておけば、後々
役に立つ訳だ。不仲よりも友好的なほうが何かと助かるからのぅ」
三人は感心しながら聞いていた。
「不思議な奴らよ。お主たち程度の奴らを、
何故全員合格させたのか、実に興味深いものよ」
「おい、女。戦で生きるか、知を持って生きるかさえも、
まだ決めておらぬようだったな」
「城下町には剣術道場や、知略を学ぶ所がある。簡単な仕事は
さっさと片付けて、そう言った所で皆、己を磨いておるんじゃ」
「次の戦には、恐らく俺の倒した河尻の息子も来るはずだ。
信秀は名古屋城を死守するつもりだろうから、
織田方も猛将を出してくるだろうが、俺は死ぬつもりは無い。
だから日々腕を磨いておる。お前たちも生き残る為に精進せい」
真田蒼紫はそういうと、懐にあった手持ちの金子袋ごと少女に手渡して、
城下町に入って姿を消して行った。
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