第5話 信頼と悪意
試合会場は全て片付けたれ、広々とした庭にも入り切れないほどの人が
集まっていた。焦っても仕方がないと真田蒼紫は思い、
場内の石垣に腰かけて、人が減るのを待っていた。
「おにぃーいさん」
「またお前か。客は釣れたのか?」
「わたしはそう言うのじゃないのよ。あなたがNPCなのはわかったわ。
おにいさん、一人でしょ? わたしたちは仲間を探してるの」
「仲間? お前たちは今川様の家来になるんじゃねぇのか?」
「そうよ」
「だったら仲間じゃねぇか。何が言いたいんだ?」
「毎月ある評定は知ってるでしょ? わたしたちもあなたも今川様の家来に
なるけど、新入りのわたしたちに、評定で難しい仕事はまわってこないの」
「そりゃそうだろ。まずは仕事をきっちり期限内に終わらせて、
信頼を得ないと手の内を明かすような仕事がくるわけねぇ」
「気づいてないようだけど、おにいさんは別格なのよ?」
「別格? 何のことだ?」
「おにいさんの強さならすぐに出世するはずよ。そこでわたしたちと協力して仕事を…」
「待て待て、お前たちは俺からすれば足手まといだ。お前もお前の仲間もな。確かに俺は評定で命懸けの任務を受けようと思ってるが、お前たちはどう見ても、兵糧や味噌の買い込みをやらされるだけだ。俺を利用しようとしてやがるな」
真田と少女と、その仲間らしき者たちの信頼度が薄い青から白くなり、赤く染まり出した。
まだ薄い赤色だが、薄い赤でも警戒心や同国の仲間意識が低下する。言葉を選ばないと赤色はさらに濃くなり、それは敵対視や敵対関係を意味した。
更に赤くなって炎が燃えさかったら、完全に殺しの対象を意味するものだった。
少女の仲間は、真田の強さを試合で直接見たから、その恐ろしさを知っていた。仲間らしき男が間合いを十分に取って、声をかけてきた。
「すまない。あんたと敵対する気は全くない。今後は話しかけないので
許して欲しい」そう言うと、少女にも退くよう合図を出して、3人組は
真田の前から消えて行った。
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