第2話 真田蒼紫の試合開始
五平太は駿府城の城下町に初めて来ていた。
まるでお祭りのような賑わいを見せ、町娘たちも可愛くもあり
美しくもあった。
和尚に木刀を持って行くなと強く念を押された故に、手ぶらで
五平太は来ていた。和尚から、僅かばかりの金を渡され、
町へ行く前に必ず、身なりを整えるよう言われていた。
五平太でさえも、和尚の言葉の意味は一目瞭然に理解出来た。
あんな小汚い姿では、良い笑い者にしかならないと五平太は思った。
晴天の空のように青い着物に、腰の得物は無いものの、その着物に隠れた
鍛え抜かれた肉体で、武芸者だと分かるものもいた。
賑わいを見せていた城下町を通り過ぎると、大きな城が見えて来た。
町にいた者たちとは明らかに違う目的で来た大勢の者が、名前を記載され
順番に中に入って行った。
刀を帯びてる者も居た為、五平太はその列に並んだ。
皆、自信に満ちた
五平太は笑みを浮かべて悠然と歩いていた。
彼は、優男で一見すると女性のような面構えをしてはいたが、
他の男たちよりも遥かに鍛えられた力を持っていた。
名前の帳簿の順が回ってきて、名前を聞かれた。
和尚から授かった名前だった。五平太では農民出身だとバレてしまう。
五平太は和尚より金子と名前を授かっていた。
真田は初めて見る城を見上げた。太陽が邪魔で天守閣までは見えなかったが、
これからは俺もここに住めるのかと、夢を見たような気持ちになった。
ひとしきり辺りを見回した後、城内に設置された会場へと足を向けた。
すでに4つの青畳を正方形に組み、戦いが行われていた。
負けた者は、入り口とは別の門から出されていた。
勝った者の中でも、特に強い強者は1試合だけで合格と見なされ
大勢いる足軽大将の家来として振り分けられていた。
勝った者でも、勝負でいまいち強いのか分からない者たちは、
更に新たな試合を組むようになっていた。
試合の待合室では、古今東西の武器が揃えられていた。
各々は己が得意とする武器を手に、その待合室で気合を入れて待っていた。
色々な武器はあったが、真田は木刀を手にした。一番自信があったからだ。
「真田蒼紫!対 大山大吾! 2番で試合を開始する。所定の位置につけ」
大山大吾の得物は棍棒であった。一撃でも直接体に食らうとヤバいと思った。
体格も真田蒼柴の倍近くあり、背も高く、腕の太さも、蒼柴の太ももほどあった。
「岡部元信殿!対 山下菊之助! 3番で試合を開始する。所定の位置に」
真田は最初は運が悪いと思ったが、今川家の御家来衆も参加している事に
驚いた。今川家の武将たちも、試合に参加しているのかと思うと冷や汗が出た。
しかし、岡部元信の武勇は有名なだけに、足軽大将の家来の選抜に何故
出て来ているのか、真田には分からなかった。
岡部元信や他の勇名を轟かしている今川義元の家臣たちは、相手の強さを
見抜ける能力がある為、将来性があると判断すれば取り立てていた。
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