NPCよ!主役はお前たちだ!!

春秋 頼

第1話 仕官

出自が農民の五平太は、何もしてない家族の妻も、子供も、殺されたあの日から

力が尽き果てるまで、木刀を振り続けていた。


今日も、俺が戦国の世を終わらせてやる! と意気込み木刀を振るっていた。

夜も更け、鳥のさえずりも聞こえなくなった頃、疲れ果てて寝ていた五平太は

目が覚めた。


立ち上がり、いつものように家までの道筋を歩いていた。

その道程、昨日は見かけなかった立て札が建てられていた。


しかし、教養の無い五平太には何が書いてあるのか分からなかった。

明日、寺の和尚さんに教えて貰おうと思い、そのまま帰った。


次の日、いつもよりも早く起きた五平太は、寺の和尚さんの所に尋ねに行った。

寺にはあの道にあった立て札が建てられていた。

寺の中屋敷にいた和尚の元へ行くと五平太はあの立て札の意味を乞うた。

「和尚様。あれは何と書いてあるんじゃ?」


「あれは昨日来た、この地を治める今川様の配下が立てて行ったものじゃ」

「今川様は何というておられるのだ?」


「太原雪斎の知略により、北の武田家、東の北条家と三国同盟が結ばれ、

西進を本格的に始める故に、城内にて兵士の募集をしておるようじゃ」


「誰でも兵士になれるのか?!」五平太は常々思っていた

念願の日だと思って飛びついた。


『誰もがなれるものでは無い。勇あり者、知ある者、策ありき者は、

その能力を我が地の大名であられる京への西進が悲願である今川

義元様の為に集まれ』


「そう書いてあるのじゃ」


「強ければすぐに城持ちになれるのか?」

「馬鹿者。五平太、お主の様に同じ思いの者はいくらでもおるわ」


「だけど、俺も剣術だけは自信あるが、それでも無理か?」

「無理じゃ。お前は初めてうた者に、銭を貸すか?」


五平太は黙ってしまった。その様子を見た和尚は声をかけた。

「まあの。雇われるかどうかは、試練によって決まるはずじゃから

対する者に圧勝すれば、一目を置かれるじゃろう」


「よく分からんが、要するに一撃で倒せばいいんだな?」

飲み込みの悪い五平太に、和尚は軽く舌打ちをした。


「まあ、そんなところじゃ。募集は毎日しておるようじゃから、

まだまだ準備中ということじゃろう。戦までにはまだ時間はかかるじゃろう

五平太よ、武技だけでは人はついて来ん。学も学び、知も知れば、

おのずと人は集まるものじゃ」


話半分も理解出来てない様子の五平太には、これから体験を経て知ると

和尚は思った。

「和尚様。ありがとな! 行ってくる!!」



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