第8話 実験と検証と現実3
「心配しないでいいわよ。私もそういうの口にして言うやつは嫌いだから」
「だろうな、だから今までお前とは友人関係が継続しているんだ。お前のそういうところは好ましいぞ」
「裏表のある人ほど、綺麗事が好きなのよね。本当に『綺麗な事』は『綺麗事』にはならないもの。私もね、言っても悠子と似てるところがあるしね。何より悠子に嫌われるのはイヤだもの。そういう事は思ってないし思いたくもないわ。それに親友とかそういう言葉でまとめなくっても、何だかんだ言って、一緒に来てくれる良いヤツだし」
「いや、何だかんだ言っても頑として譲らず、無理から連れてこられてるよな?」
「あら、本気で逃げてたら私は捕まえられなかったと思うけど?」
「はぁ、まぁ、あわよくばではあったが、逃げさせてくれるとは思ってなかったからな。それに折角だし、爺さんが作り上げたアホ一家を見るのもまた一興かもとも思ったし」
ことさら楽しそうに微笑する悠子を見て、京子は呆れたように言う。
「ほんと、西条のお爺様と大差ないわね、悠子も」
「あれと一緒にされるのは少々不愉快だが」
「何言ってるのよ、ほぼほぼ一緒でしょ。アレを楽しめるなんて。あの連中は私だってニコニコはしてても、蹴り飛ばしてやろうかって位に嫌いで、いくら悠子が一緒っていっても今から気が重いわよ」
「ふむ、考え方を変えればいい。滅多にあえない人種なんだから『観察のしがいがある』とか、『どうからかって楽しんでやろう』とかな」
「無理、絶対無理。見た目ぐらい小奇麗にしていれば まだましだろうけど、見た目も中身同様汚らしい上に、ほんと品も何もないのよ。本当だったらこんなパーティに出て知り合いだって思われるのも嫌なんだから。でも、悠子の言う通り脛齧りですから、いっちょ頑張ってやってやるか! ぐらいの気持ちは持ってるわよ。それに悠子のを聞く限り今回で終わりっぽいから、それを希望に我慢するわ」
「そうだな、おそらくこれで最後だ。となると、あの人種を観察できる最後のチャンスってわけだ。それは、それは……」
ニヤニヤしながら本当に楽しそうに笑う悠子に京子は溜息をついたが、京子はそう言う悠子だから一緒に居るため、まぁいいかと放っておいた。
ちょうどその時、船が到着し2人は荷物を手に乗り込んだ。
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