第7話 実験と検証と現実 2

「えぇ~、自分勝手すぎない? っていうか、それ自分の会社がダメになるコトわかってたってこと?」

「爺さんは別に会社自体というか、西条自体がどうなっても構わなかったんだよ。自分が良ければそれでいいんだ。会社にしても一族についても。会社がつぶれて馬鹿な一族が路頭に迷っても、その時に自分が巻き込まれていなければそれでいいって潔い考えの持ち主なんだよ。ただ、そこに関係のない社員が巻き込まれることだけは許さなかった」

「……まぁ、そこはまともで良かったわ」

「自分が倒れて、その間に馬鹿が勝手したことがわかるとオレに頼まれてくれないかと言ってきた。自分ではじめたことだ自分でケツを拭けといったんだが、爺さんも随分弱っていたからな、策を授けてやったんだ」

「で、高見沢にって、他にもあったでしょ」

「無いな。高見沢の人当たりの良さとお人好しは知れ渡っている。が、高見沢の計算高いところは全くと言って良いほど知られていない」

「そうですね、娘も知りませんでしたからね」

「ククク、そう拗ねるな。変な駆け引きに可愛い娘を巻き込ませないための親心でも有る。例え利用したとしても知らなければ巻き込まれようがないからな。話をもどすが、お人好しだと思わせておいて、裏で計算ずくで動ける。そんなちょうどいい人材は高見沢の他には居ない。あんな西条に手助けをして怪しまれないのは高見沢ぐらいだし、良いようにあしらえるのも高見沢だ。何より、爺さんの育てた連中は、ヒノワには必要のない人材ばかりだったが高見沢には必要な人材がそろっていた。これこそWin-Winの関係だろ?」

「はぁ、まさか我が親がそんなだとは」

 京子は知られざる自らの親の姿を知ったことに大きなため息を付き、悠子は大きなあくびをしながらまぁまぁとなだめる。

「京子に気づかれるようではどうしようもないからな。あぁ、でも高見沢の娘の溺愛は本物だからな。それは間違えてやるな」

「……利用するくせに?」

「少しぐらいさせてやれ。脛齧り」

「西条じゃなければね……。ホント、西条じゃなければ」

「仕方ないだろ。今回のはお前以外に適任が居なかったんだ。それに今頃、心配で死にそうにはなってるはずだぞ。オレのところに再三連絡が来た、『一緒に行ってやってほしい』『貴女にしか頼めない』『どんな礼もしよう』諸々、ほんと鬱陶しかった」

「……なのに逃げたの?」

「当たり前だ、オレに何の利も無いだろう? 面白いことが有るならまだしも、オレが何故お前や高見沢のために面倒なことをしないといけないんだ」

「親友のためにとか思ってくれても良くない?」

「非常に仲のいい、馬の合う友であるだけで、そこに相手に依存する信用やら、心から敬愛のという意味を含めるなら今すぐにでも友人をやめてやるぞ」

 ニヤつく口元はそのままに、鋭い目つきで京子を見てくる悠子。

 その様子に諦めたような息を吐いて京子は「わかってるって」と返事をした。

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