第4話 招待状2

「それでも多少は自分が出来ないっていう頭があったのか、少しはブレーンを残してたからな。かなりの落ち目になるだろうが何とか踏みとどまっている状態だと思ったが。パーティねぇ? パーティを開いている場合でないと思うが。それとも頑固で偏屈、自分がNO.1って思ってるアホが治って、まともに経営がいくようになったのか?」

「治るわけないでしょ。今ではオッサンだけじゃなくってあの一家、奥様は別にしてアホばっかりよ。まぁ、経営については大変らしいけど、私はそういう系統はまるで関心ないし、知らないわね。……ん? 今の状況知らないってことは悠子ん家は付き合い無いの?」

「家としても企業としても取引も何も無いな」

「へぇ~珍しい。西条って馬鹿だけど、金のためならどんな事してもつながり求めて来るようなガツガツした感じなのに」

「付き合いがあったのは爺さんの代までだ。オッサンの代になった時にうちにあいさつに来たんだが、その前段階では先代の苦労もわかっていたからどうするか半々の状態だったんだ。でもな、うちは常に企業として更に人間としての価値がなければ、今までの付き合いがどうであろうと追い出すだろ? オッサンは挨拶に来た会場で、ぶつかったオレの親父に『君はどこの誰かね! 私を西条と知ってぶつかってきたのか!』って言ったんだよ」

「は? いやいやいや、日下部のおじさまの顔も知らないってこと? まじで?」

「もう、まじで腹がちぎれるぐらい笑ったね。うちの親父はただでさえ派手な顔立ちしてるうえに、顔出しNGってわけでもない。少しでも会社って体裁でやってるなら知ってて当然だろ? それを知らないってだけで西条に会社としても価値は無いし、何より、あんな態度をとったんだ、人間としての価値が無いのも丸わかりだ。しかも、その間違いを近くの人に指摘されて謝るどころか怒り狂ったからな、なお無い話だ。言われたことを重く賢く受け止めていればまだ救いはあったのだが、あれではだめだ。あまりのダメさにオレがその場で引導を渡してやったからある意味、印象には残る奴だったが」

「あらら、悠子に渡されちゃ、もう詰んでるわね。こうみえて、ヒノワの頭脳だもんね、悠子は」

「昔の話だろ、あの頃はヒノワグループ自体に興味があっただけだし、今は勇退している」

「まぁ、興味の有無でムラができちゃうところが悠子の唯一の欠点よね」

 京子はもったいないと言わんばかりにため息をつき、悠子はその様子を横目で見ながら疲れたのか、待合室の椅子に座っていた腰をズルズルと下へ滑らせて、だらしなく椅子に腰掛けた。

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