第3話 招待状1
対照的な二人が出会ったのは高校に入るよりずっと前。企業同士の接待の場であった。
悠子は今と変わらずそのままであったが、京子は完全にリラックスモードで気を抜いているところを悠子に目撃されて現在に至る。ゆえに、京子は悠子の前では大きな猫を脱ぎ捨てるのだ。
だが、京子の才色兼備で立派なお嬢様というの猫のかぶり方は堂に行ったもので、親族以外の人物となれば、悠子以外にばれたことはない。
その完璧な猫のかぶりっぷりが悠子には面白く、完璧なお嬢様と変人お嬢様という、他者には理解しがたい関係性に見える2人は、息の合った親友である。
そんな2人が妙なやり取りの後、車でやってきたのはフェリー乗り場もある大き目の港。
大型連休初日に、特別にチャーターさせられたという船の到着を待っていた。
「で、京子。こんなところにやってきてコレから何処に行くつもりだ?」
大きなあくびをして、つまらなさを前面に出しながら、悠子が京子に尋ねる。
すると京子はじっとりとした視線を悠子に向けて大きなため息を吐いた。
「はぁ~ヤッパリ、人の話を聞いてないんだろうなとは思っていたけど、本当に聞いてないわね。興味がなければ鼓膜すら動かさないっていうの止めてよね。連休前に説明したでしょ。西条の毎年開催されてる成金パーティに行くからついて来てって」
「そんなことを聞いたような気もするが、おそらく断ったよな?」
「嫌だと言うから断るのは却下だってちゃんと言ったわよ? あの西条のところに1人で行くなんて絶対嫌だもの。しかも今年は島の別荘でやるからってご立派な招待状をいただいたのよね。でも! 島までの足はご自分でとか勝手な事言いやがってさ~。はじめはね、両親が行く予定だったのよ。でも都合がつかなくって、私に回ってきちゃったの。で、今はウチのチャーター船をここで待ってるの」
「ふむ、西条って確か元財閥だったよな。まだパーティなんて開けるのか? あそこは先代の爺さんは優秀だったが、オッサンは阿呆だったからな。先代も事業を息子に譲る気はなかったし」
「そうなの? でも結局継いじゃってるじゃない?」
「あの爺さん、そうさせないように動いてた最中に倒れたんだよ。で、爺さんの意識がない間にあの息子が色々手を回して取っちまった。爺さんが会社を任せようとしていた人材全員首切ってな。残しておけばもう少しマシな経営出来てただろうけど」
「うわ~、予想通りのクズね」
「まぁ、うちにとっては良かったよ。使える人材が育てること無く手に入ったからな」
「うわぁ、抜け目ないわね」
じっとりとした視線を向けてくる京子に、にやりと笑う悠子は少し考えるように小さく息を吐いた。
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