第22話
一段落して、モチオはベンチに座っていたリルのところへ行くと、
「良かった。モッチーのおかげだね」
褒められたのにどうも釈然としなかった。
「………………」
「どうしたの?」
リルは立ち上がると、無言で見つめるモチオに尋ねた。
「いや、なんか、格の違いを思い知らされたなあって……」
「“とおし”のこと?あれはほとんどモッチーの力だったよ」
「リルが手助けしてくれなかったら、すぐに見つからなかったよ」
「どうやって移動したか、きちんと見えてたし、元の絵がしっかり描けてたからだよ。モッチーはめきめき上達してる」
「そうかなあ……はっきり見えてないし、絵も下手くそだし」
「 “とおし”は見つけることが目的じゃないんだ。
どうやって見つけるかが大事なんだよ。
特定の地点を探し出せたとしても、実際現場に行くまでにはタイムラグが生じるからね。
もしその間に移動しても、ある程度予想がつけば追いやすいから、慎重に見ることが大切。
モッチーは丁寧に見ることができてるよ。
絵は正確に描き表すのは玄人でも難しいから……足りない部分があっても着実に伸びてる」
「ホントに……?」
「うん。だからあんまり自分を卑下しないで」
リルの言葉にモチオは懐疑の念を抱きながらも、気になったことを問うた。
「さっき、すらすら修正してたから、リルは向いてると思うんだけどな。何で極めようと思わないの?」
「う~ん……モッチーみたいに絵を描くのも得意じゃないし。それに何より、植物の世話をするほうが好きだから」
「そっか……『できることと、自分がやりたいことは違う』って言ってたもんな」
「そうそう」
「できることがいっぱいあるのって羨ましいなあ……特別なことじゃなくても。さっきはさっと子供を助けてたし」
「あれは体が勝手に動いただけ。見るからに何か起こりそうな感じだったから」
「ぼやっとしてるわたしとは違うな……」
「気にしなくていいんだよ。今日はよく頑張ったよ」
「うん…………」
自己嫌悪に陥るモチオの頭をリルは優しく撫でた。
「そろそろ行こうか……あ、途中で雑貨屋に寄りたいんだ」
そういうわけで、駅近くの雑貨屋に立ち寄ることになった。
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