第17話
今から100年近く前のこと。
モチオがリルの部屋で一緒に寝ていた時、話の流れで彼に「どんな人が好きなの?」と疑問を投げかけたことがあった。
「一緒にいて心地良いなって思う人かな。誰でもいいってわけじゃないよ」
「それって雰囲気じゃないの?」
「雰囲気か……それもあるかもね」
「わたしもそう?」
「モッチーは、かしづきたいとか愛でたいとか、そういう気持ちのほうが強いな」
「よくわからない……」
「大切な存在なんだよ」
その台詞にドキリとしたモチオだったが、
「身も心も満足できる人がいるのに」
と遠回しにカナエのことを言ってからぷいと顔を背けた。
「……カナエに何か言われた?」
「言われてはない」
「じゃあ何か見たの?」
「え……なんでも……」
モチオはすぐさま目を瞑ったが、じっと見つめられる視線に耐え兼ね、
「実は……この間ここに来た時、2人でいるところ見たんだ……」
正直に話し、更に布団を深くかぶった。
「気分悪くさせてごめん……急に押しかけてきて断れなかったんだ」
リルはモチオ以外の恋人を自分の家に入れることは決してなかった。
「…………別にわたしが勝手に行ったんだし。それで嫌いになるとかないから……」
「モッチー……こっち来てよ」
つんつんと人差し指で背中を突つかれると、モチオは布団から顔だけひょこっと出した。
「美人でスタイルも良くて、料理上手な恋人がいて幸せ者だな」
「幸せ者?僕はモッチーと一緒にいるほうが幸せだよ。彼女とは、もう長い付き合いだから……」
「わたしが口出しできることじゃないもんな……美男美女、お似合いのカップルだよ」
「嫉妬してるの?」
「嫉妬じゃない……いや、そうなのかな……わたしじゃ、リルを満足させられないもん」
「どうして比べるの?」
「だって、わたしにはないものが彼女にはあるんだろう?」
「それは、彼女だって同じことだよ。彼女にはないものがモッチーにはある」
「………………」
「あの人と一緒にいると、息が詰まる時があるんだよ。
快楽は得られるけど疲れる……ふと虚しくなるんだ」
「じゃあ、行くのをやめたらいいのに」
「待っているから応えてあげたいんだよ。それに……心のどこかで刺激を求めているのかもしれない」
「それはリルが相手に“好き”っていう気持ちがなくても?」
「好きじゃない人となんてしない」
「じゃあ何で悲しそうな顔してるの?」
「…………気のせいだよ」
視線を落としたリルにモチオは声を張った。
「そんなのいつか倒れてしまうよ。もっと自分の気持ち大切にしてほしい」
「別に気持ちを殺してるわけじゃない。モッチーといるとゆったりした時間を過ごせるから……」
抱き寄せられたモチオはやや不安を覚えた。
普段は煌めくほどまばゆい存在なのに、こうして2人で密着していると、今にも消えてしまいそうな脆く儚い存在に感じることもあった。
「リルはずるい。そうやってすぐはぐらかす。きっと、わたしがいると迷惑なんだ……」
「どうして?」
「すぐに眠ってしまうから。つまらないって思ってるだろ」
「寝顔見るの好きだけどな……安心して眠れるってことだから嬉しいよ」
「物足りなくない?」
「うん。大丈夫、モッチーが寝息立ててる時でも、いっぱい愛してあげるから」
「…………!!」
赤面するモチオにリルは笑って、
「自分で聞いといて照れるなんて……こうされるの好きなんでしょ?」
モチオの首筋を軽く食み、
「あっ………」
「ふふっ…………可愛い」
ぎゅっと抱きしめた。
(どうせ、他の恋人達にも甘い言葉かけてるんだろ……)
そうとわかっていながら、耳元で優しい声で囁かれ強く抱きしめられると、体中が蕩けて身を委ねてしまう。
程よく引き締まった体からじんわりと伝わってくる温もりに十分浸った後は、決まって全身を食まれる。
すべすべモチモチした柔らかな肌を、彼は愛撫しながら少しずつ丁寧に食んでいく。
モチオが悶えながらしがみつくと、ますます燃え上がり、敏感な部分まで舐め上げられてしまい、すぐに昇りつめてしまった。
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