第5話 大型モンスター
「さすがにお子さんを連れていきなり大型モンスターのクエストに行かせるわけにもいかないので、とりあえず様子見を兼ねて薬草採取に行ってきてください」
「取ってきてほしい薬草はこの紙に書いてあります」
受付の人がそう言ってナギにその紙を渡す。
「わかりましたこの紙に書いてあるものを取ってくればいいんですね?」
「はいそうです、 それから分かっているとは思いますがお子さんが危険になりそうだと思ったらすぐに戻ってきてください」
「分かっています」
力強くそう言葉を返す。
ギルドを出て受付の人からもらった地図を見ながら森の方へと向かう。
その薬草が生えている場所が森の中らしいがベビーカーでは移動ができないので普通に歩いて向かった。
しばらく歩くと無事に地図に書いてある場所までたどり着くことができた。
「無事に目的地にはたどり着いたみたいだけど道が複雑すぎてどこをどう行けばいいのかわかんないわね」
『ここにずっと立ち止まってても仕方がないしとりあえず前に進んでみよう』
クエストでいくつかの薬草を手に入れなければいけないので時々地面の方を見渡しながら見落とさないように歩く。
「あったあったこの薬草ね」
「それにしてもこの薬草小さくて見つけにくいわね」
不満の言葉をもらしながらクエストに書かれていたぶんの薬草をとる。
なんとなく辺りを見回すとぶよぶよしたキノコのようなものが目に止まった。
その奇妙なものを見た瞬間になぜか無性にそれに触れたくなった。
理由はよくわからないがとにかく謎の好奇心が心の中で膨れ上がっていくのを感じる。
「ちょっとクロリスどこ行くの!」
掴んでいたナギの手を離し少し遠くにあるその奇妙なものへと近づいていく。
生まれ変わる前の僕なら決してこんなものには興味を持たなかっただろう。
ということはつまりこれが魔王にかけられた呪いの一つなのか。
「ははは!!!」
僕の意思とは関係なく笑い声をあげてしまう。
「どうしたのクロリスいきなり掛け出して何かあったの?」
疑問の表情を顔に浮かべながらそう聞いてくる。
「ていうか何でそんなに笑ってるの?」
『ナギこれは僕の意思とは関係ないんだよ多分魔王にかけられた呪いのせいでこうなってるんだと思う』
そう訴えかけつつも体が言うことを聞かずに僕の手はその奇妙なものに触れていた。
その触れた感触はブヨブヨしていてなんだか気持ち悪かった。
『どうにかして助けて』
「助けてって言われても一体どうしたら」
『そうだ!この変なものからなんとか目線を外して別のものに気をそらせばこの衝動から解放されるかもしれない』
そんな単純ともいえる考えはすぐに打ち砕かれた。
目線をそらして左の方に目を向けるとかなり遠くの方に似たようなものがあるのがなんとなくわかった。
はっきりと見えていないにも関わらず再び心の中で好奇心が芽生え始める。
僕の体は意識に反して勝手に動き赤ちゃんのハイハイのような感じでその奇妙なものに近づいていく。
「ちょっとクロリスどこ行くの!」
ナギの言葉は届いてはいたのだが僕の体は止まらずに湧き上がる衝動に任せてただひたすらに進んでいく。
ナギが後ろから追いかけてきていることが足音でわかる。
『どうすればこの症状を抑えることができるんだ!』
そう思いながら頭をフル回転させるがいい方法が全く出てこない。
『どっかの木にわざとぶつかってこの心を鎮めるか?』
『いや僕の想像が正しければもしそうなったとしてもその木を自動的に避ける』
さっきよりも後ろから追っかけてきているナギの足音が近づいてきているのを感じた。
僕の体が気にぶつかるかぶつからないかの直前でナギが先回りをして受け止めてくれる。
目の前に何か物があっても自動的に避けてくれるという僕の予想は外れたが結果的に泊まれてよかった。
『ありがとうナギ』
「見失わなくて良かったけどいったいここどこなの?」
疑問がこもった口調でそう言いながら辺りを見回す。
僕も同じように辺りを見回す。
さっきまでいた場所の景色とはまるで違う。
さっきの場所には所々に触っていた変なキノコのようなものが生えていたが。
ここら辺にはその変なキノコは生えていなくただ周りにたくさんの木が生えているだけだった。
『これって道に迷ったってことだよね ここら辺の風景全然見たことない』
「とりあえず来た道を戻ってそれからクエストの薬草探しをするわよ」
『それでそのきた道ってどっち方向だったっけ?』
『あの時はただ前に進んでただけだったから僕は道がわからない』
後ろを振り向く事も出来なかったので尚更だ。
……。
『ナギどうしたの?』
そう語りかけても返事が返ってこない。
ただナギの唖然とした表情を見て全てを察することができた。
ナギも来た道を覚えていないのだ。
『ごめんナギ僕のせいで』
ナギは口では何も答えない。
『そんなことで謝らないでよ全部魔王にかけられた呪いのせいなんだからクロリスのせいじゃない』
どうやらナギはお互いに心の声が聞こえることを完全に忘れているみたいだ。
言おうかどうか迷ったが少し悩んだ結果素直に言うことにした。
『ありがとうナギ』
僕がそう言うと心の声が聞こえていたことに気づいたようで恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている。
「今の私の心の声聞いてたの?」
さらに恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてそう聞いてくる。
『えーと…そういうことになるのかな?』
僕はナギからあからさまに目をそらしながらそう言った。
「忘れなさい忘れなさい今のことは完全に記憶から消去しなさい」
そう言いながら思いっきり顔面を殴られた。
ものすごく痛い、おそらく僕が普通の赤ん坊だったらこの一発で死んでいるだろう。
『赤ん坊になったのが見た目だけで本当に良かった』
「仕方がないこうなったら私がもつ改ざんの魔法でクロリスの記憶を改ざんするしかない!」
『待って待ってそれじゃいくらなんでも代償が重すぎるよ!』
相手の心を読んだだけで記憶の改ざんをさせるなんていくらなんでもやりすぎじゃないか。
ナギからしたら深刻な問題なんだろうけど。
そんな会話をしていると、モンスターのうなり声のようなものが奥の方から聞こえてきた。
「うおおおーーー」
その唸り声と同時に足音がだんだんと近づいてきた。
もちろんこの時僕は驚いてはいたがそれと同時にホッとしてもいた。
記憶の改竄をされずに済んだんだから。
とはいえここで死ぬわけにはいかない。
だがここは初めて来た森の中だからどこがどうなっているのか全く把握できていない。
するとナギは僕のことを抱っこして急いで逃げようとする。
モンスターは複雑に入り組んでいるこの森の中を一切ためらうことなく移動して僕達との距離を詰めてくる。
『あのモンスターは確かかなり上位のモンスターだったはず、そんなモンスターがなんでこんなところに!』
『確かクエストの神にはこの場所には そんなに強いモンスターはいないので初心者でも比較的安全ですって書いてあったのに」
どうやら僕達は運悪く強いモンスターと遭遇してしまったようだ。
(後書き)
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