第3話拷問のような育児の始まりわ

「そもそもこの部屋の中に綿棒があるかどうかが問題だけど」


そう言って辺りを見回す。



すると部屋の隅っこの方にいくつかの綿棒が入った入れ物を見つけた。


ナギがその綿棒が入っている物事横に持ってくる。


「とりあえず耳かきやるから横になって」


『はい』


心の中でそう返事を返して言われた通り横になる。


『それじゃあ行くわよ!』


ナギは相当緊張しているようでその証拠に綿棒を持つ手が震えている。


『手震えてるけど大丈夫変なところに刺さない!』


そしてゆっくりと綿棒僕の耳の穴に入れる。


「どう変なところに刺さってない?」



今度はナギが反対にそう確認してくる。



『うん…』


するとナギが耳の中でゆっくり綿棒を動かし始める。


その間には気まずい空気が流れていた。


『どうしたらいい!何か喋れたらもうちょっと気まずいこの空気もどうにかなったのかもしれないけど今喋れないからなぁ』


『っていうかお互いの考えが読めるんだから今僕が頭の中で考えたことが直接なぎの脳内にも流れ込んできてるってことだよね!』


そう思いながら恐る恐るナギの方に顔を向ける。


するとナギの顔は何とも言えない複雑な表情に変わっていた。


『ごめんナギ別に一緒にいるのがやとかじゃなくてこの状態が気まずいってだけで!』


『ってそれはそれでどうなんだ?』


急いでそう訂正する。


『分かってるわよそんなこと、ただクロリスがあのパーティーの中にいた時私がもうちょっと頑張ってたら結果が変わってたのかなと思って』


『それこそクロリスがこんな赤ん坊の姿になることもなかったかもしれない』


『クロリスがあんな毎日毎日団長達にいじめられなかったかもしれない』


『私はその光景を見ているだけで何もできなかった』


ナギが申し訳なさそうにどこか語りかけてくるような口調でそう言ってくる。


『ナギは何も悪くないよ…何も悪くない』


なだめるようにそう言葉を返す。


『第一こうして赤ん坊の姿になったのだって僕の力不足だし、 あの時何も言い返さなかったのだって僕が弱いからだ』


『今度こそ魔王を倒す!』


力強くそう宣言した。


『だからナギは何も気にしなくていいんだよ』


「ええとりあえず早く魔王を倒してこの呪いをとくわよ!」


『痛』


さっきからずっと硬い地面で耳掃除をしてもらっているため首が痛い。


するとナギがゆっくりと僕の頭を持ち上げ自分の膝の上にのっける。


『え!なんで?』


そう疑問に思いながらナギのほうに顔を向ける。


「首が痛そうだから」


僕の言葉に答えるようにそう言ってくる。


『でも…』


『いいから黙ってをきなさい』


下手に怒らせるわけにもいかないので言われた通り黙って顔を横に向ける。


それからしばらくして両耳の掃除を終えた。


「これでおしまい」


それと同時に僕の目の前にポイントの表示が出てきた。


《100ポイントを取得しました》


『とりあえずこの後どうする?』


僕がそう疑問の言葉を投げかける。


『とりあえずあの魔王との戦いからどれだけの時間がたってるのか調べる必要がありそうね』


『それもそうだね』


『街の風景から考えるとそんなに変わってないから、 たいした 時間は流れてないような気がするけど』


『それはそうかもしれないけど調べておいて損はないでしょう』


『そうだねまだ暗くなってないし今のうちに聞き込みをしようか』


ナギはフードを深く被り顔があまり見えないようにする。


僕と違い見た目が変わっていないため 魔王を倒しに行っていたはずのナギが街の中にいるとわかれば大騒ぎになるだろう。


街の人達にあの魔王の戦いの後どうなったのかを聞いてみる。


「確か勇者様達が魔王を倒しに行かれたのは今から10日前ぐらいのことだったかな?」


「その勇者様達はまだ戻って来てないみたいだけど大丈夫かね」


1人のおばあちゃんがそう言いながら心配そうなため息を漏らす,。


「そうですか教えて頂いてありがとうございます」


『団長達どこにいるんだろう?』


『なんでクロリスが自分をいじめてた団長達を心配するのよ』


『いや心配してるって言うか単純に気になって』


『私もそれはわかんないけど今頃勇者なんてやめて悪どい商売かなんかしてるんじゃない』


『あの時の魔王との戦いで自分達との力の差は認識しただろうし』


『勇者を辞めるにしても1回王様のところに戻って報告しなきゃいけないからそれはないと思うけど』


『もしそうだったとしたら街の人達にその情報が行き渡ってるはずだし』


『それよりも問題なのはどうやってこれからお金を稼いでいくかよ』


ナギのステータスは全体的に千万を超えていて元々魔法の勇者なので全然問題ないのだが…


見た目が赤ん坊の僕を連れて行くことはおそらくできないだろう。


というかそれをやってしまったら大問題になることは間違いない。


『とりあえずずっとこのまま何もしないってわけにもいかないしナギだけでも冒険者登録しといたら?』


『それもそうね仕事がなくて飢え死しても困るし』


僕達は再びギルドの方に足を向けて歩き始めた。


「さっきからあの赤ん坊よく見かけるけどすあしで歩いてるな」


「あら本当あのまま歩かせて大丈夫なのかしら」


街の周りにいる人達が内緒話をするようにそう言っていたが僕達に全部聞こえていた。


このままでは変に注目を浴びてナギの正体がバレる可能性が高まる。


『ねえナギ 1回宿に戻って対策を練った方が良くない?』


若干気にしすぎのような気もするが用心しておくことに越したことはないだろう。


『そうね注目を浴びるのはなるべく避けたいし』


僕達は1度ギルドに向かうことをあきらめ宿に戻った。



『戻ってきたはいいけどどうしたらなるべく人に注目をされないようになるんだろうね?』


「そうだいいこと思いついた!」


ナギはそう言うと魔法の杖を構える。


そして何かを創り出しているみたいだ。


『ナギこれは?』


僕はナギが作り出したものを指差しながらそう言った。


『ベビーカーよ』


『今のクロリスは見た目は赤ん坊だからこれに乗ってても何の違和感もないでしょう』


『確かにそうなのかもしれないけど!』


『なんだかこれに乗ることを受け入れてしまったら色々失いそうな気がする』


「いいから早く乗りなさい!」


そう言いながら僕の体を抱えてそのベビーカーに乗せようとする。


『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!』


必死にそう抵抗するがナギは一切気にすることなく僕 をベビーカーに乗っけた。


「よしこれで傍から見たらベビーカーに乗ってるただの赤ん坊にしか見えない」


顔に満足そうな笑みを浮かべてそう言った。


『それはそれで傷つく』


「ごめんごめん」


『僕はついこの前までは勇者であること以外は普通の15歳の少年だったはずなのに、今は赤ん坊の姿でベビーカーに乗ってるなんて』


深くため息をつきながら心の中でそう言った。


「でもこれで街の人達が私達を気にすることは減ったはず」


『でもその代償に失ったものがとてつもなく大きいもののような気がする』


「じゃあ魔王を倒すために必要なことだったと思っておいて」




(後書き)


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「今後一体どうなるのっ……!?」


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このお話は人気があれば続きを書こうと思っています。

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