第2話幼馴染は育児をするのが大変です
慌てていて気づくことができなかったが横にナギが倒れていた。
(大丈夫かナギ!)
「あああ!」
そう声に出しているつもりではあるのだが口から出てくるのは叫び声のような声だけだった。
声を出しながらナギの体を揺する。
するとゆっくりと目を覚ました。
僕がさっきしたのと同じようにあたりを見渡す。
僕の方を見て動かしていた視線を止める。
『この子どこの子かしらこんな広い草原の中にいたら危険ね』
するといきなりどこからともなく誰かの声が聞こえてきた。
『なんだこれいきなり頭の中に誰かの声が!』
「え!何これ頭の中に直接誰かの声が流れ込んでくる!」
ナギのその反応を見て僕はすぐに理解することができた、 この頭の中に流れて来ている声はナギが頭の中で考えているものだということに。
『それにしてもなんでいきなりこんなことが起こってるんだ!』
「そんなことを私に聞かれたってわかるわけないでしょ!」
そう怒りがこもった言葉を返してくる。
もっともナギはまだ頭の中に流れ込んできている声が僕のものだと気付いている様子はないが。
とはいえ今喋れない僕にとってこれは不幸中の幸いだ。
『ナギ聞こえるかナギ』
「なんなんださっきから私の頭の中に直接語りかけてくるなんて!」
苛立ちがこもった口調でそう言葉を口にする。
『僕だよ僕クロリスだよ』
「クロリスどこどこ!」
そういって辺りを見渡す。
『だからここだってここ目の前にいるよ』
そう言うと僕の方に視線を向ける。
「クロリスがこんなちっちゃいわけないでしょもう今年で15歳なんだから」
『信じられないかもしれないけど本当に僕なんだってばさっき一緒に魔王と戦ってたでしょ』
「え!……」
「えええーーー!!!」
ようやく状況が理解できたようでそう驚きの声を上げる。
「本当に本当にクロリス!」
そう言いながらなぜか抱きかかえて若干高い高いをするように手を上に上げる。
『だからさっきからそう言ってるじゃん!』
「でもなんでなんでクロリスの顔が生まれつきベビーフェイスだから!」
『そんな理由で赤ちゃんに転生するんだったらベビーフェイスの顔で生まれてきた人全員が赤ちゃんに転生していることになる』
「それもそうか」
というより生まれてきた生物全員が最初は赤ちゃんの状態で生まれてくるはずなのでやはり顔は関係ないだろう。
『とりあえずずっとこんなところにいるわけにもいかないし
とはいっても裸で街の中を歩くわけにもいかないのでナギに魔法で服を作ってもらいそれを着る。
それから僕達は今日泊まるための宿を探すために歩き始めた。
お互い逸れては困るので手を繋いで歩く。
『幼馴染とこうして手をつないで歩いている事を考えると何とも言えない緊張感があるなぁ』
「私もその緊張感に耐えてるんだから頑張って耐えなさいよ!」
頬を赤くして恥ずかしそうにそう言葉を返してくる。
『そうだったお互い考えてることがわかるんだった』
その何とも言えない緊張感に耐えながら泊まるための宿を探した。
しばらく歩いていると目の前に1つの宿を見つけた。
『ここでいい?』
『うん』
ナギの言葉にそう返してお店の中に入った。
「すいませんこの子と2人で泊まりたいんですけど部屋空いてますかね?」
「あいてますよ少し小さめのお部屋ですがお子さんと一緒に過ごすには何の問題もないと思います」
『はたからみれば確かに僕はナギの子供に見えるのかもしれないけどそう言われるのは複雑な気持ちだな』
「分かりましたその部屋に泊まります」
「それでは金貨3枚になります」
そう言われてポケットの中から金貨を取り出そうとするが途中で手を止める。
『どうしたのナギ?』
『お金がない』
『え!』
そう言った後ナギは膝から地面に崩れ落ちた。
「お金が…ない!」
『どうしたらいいんだこのままじゃ森かどっかで野宿することになっちゃう!』
「あのお金はいらないので泊まっていってください」
「でもそれじゃあ…」
「構いませんお子さんにこのままずっと街の中を歩かせるわけにもいきませんから」
「ありがとうございますいつか必ずお金を支払いにきます」
頭を深く下げてそうお礼を言った後部屋に向かった。
部屋の中に入ってみると確かに受付の人の言うとおり2人で過ごすには十分な広さだった。
「結構広いね」
『そうだね』
『あ!そうだ魔王にかけられた呪いがどんなのかステータスを見て確認しないと』
「魔王にかけられた呪いって?」
疑問の表情を顔に浮かべてそう聞いてくる。
『確か魔王が僕を殺す前に3つの呪いをかけたと思うんだけど』
ステータスを開く。
《HP10万1125》
《MP10万1095》
《攻撃力10万1055》
《防御力10万1044》
《勇者の加護》
《呪い3つ》
『普通の勇者ならステータスの数値はだいたい千万超えなんだけど』
今更気にしても仕方がないのでかけられた3つの呪いを1つずつ調べることにした。
《幼児化》この呪いは見た目を幼児化させる呪いで育児の呪いをかけられた対象者に育児をしてもらわなければスキルポイントが貯まりません。
それと歳を取らなくなります。
《言語能力停滞極み》この呪いは言語能力が0歳まで落ちます。
《赤子の衝動》この呪いをかけられた相手は気になるものや追いかけたくなるものがあると自分で感情をコントロールできない。
「私がその育児の呪いにかかってるんだけど」
そのナギのステータスを見る。
《育児の呪い》この呪いをかけられた対象者は一切年を取らなくなる代わりに幼児化の呪いをかけられた対象者の育児をしなければいけません。
「なんで私がクロリスの育児の世話をしなきゃいけないの!」
『それを僕に言われても』
「うあああーーー!!!」
そう言うといきなり両手で自分の頭を押さえて地面にうずくまった。
『大丈夫ナギ!』
急いで駆け寄る。
「なんなのいきなりこの頭の痛みは!」
『もしかしたら子育てをすることを拒否したからかもしれない?』
『僕だってナギに育児をしてもらうどうこう以前にこんな拷問みたいなこと恥ずかしすぎて耐えられない』
『だけど一刻も早く魔王を倒すためにもスキルを覚えることは重要になってくると思う』
「それもそうね一刻も早く治してこんな呪い早く解きましょう」
『ところで育児って何をすればいいんだ?』
「私に聞かないでよ私だって育児なんてしたことないんだから」
そんな会話をしていると僕たちの部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「先ほど大きな声が聞こえてきましたけど何かございましたか?」
「すいません大丈夫です気をつけます」
足音が遠ざかって行くのを確認した後、僕たちはホッと胸を撫で下ろした。
『それで育児をするにしても 何をするの?』
また大きな声を出すと迷惑がかかるので僕の頭に直接声を送ってくる。
『そうだな…耳かきとか?』
『なんで私…』
おそらく、がと言葉を続けようとしたのだろうだが、そうすると子育てを拒否することになるので言うのを断念したみたいだ。
『わかったとりあえず行ってみましょう』
(後書き)
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このお話は人気があれば続きを書こうと思っています。
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