第7話 モニタールームで主催者は
「思ったよりも盛り上がりに欠けますね」
モニタールームで主催者が呟いた。
周りにいた男たちは、無表情のまま心の中で同意した。
心の中で思うだけで、誰もが沈黙したままだ。虎の尾を自ら踏む奴はいない。
沈黙を破ったのは遠くでコントローラーを握っている女だ。
「ウチは金を貰えればそれでいーっスけどね。お客さんが盛り上がらねーと困るなァ」
女は運営側のプレイヤーだ。逃げ惑うプレイヤーと同じように、条件を課せられてゲームに参加している。その数10名。
取り巻きからの返事が貰えない主催者は女に近づき、無駄話を始めた。
「盛り上がると思ったんですけどねぇ」
「でも、そろそろ面白くしてくれるんデショ?」
新しく出されたミッションは『全て破壊しろ』であった。このゲームの最終ミッションになるが、最も長い時間がかかることは想像に難くない。
逃げるプレイヤーには知らされていないが、予算の都合上、ドローンにも復活可能回数を設定している。参加者一人当たりが飛行型36機を撃墜すれば終わる計算だ。
といっても、撃墜に積極的なプレイヤーは少ない。誰もがパンツを見られるリスクから逃げ、残機はほとんど減っていない。
最大同時飛行数150機、うちNI型が10機。最大同時飛行数は一向に減らない。プレイヤーはリスポーンし続けるドローンに悪戦苦闘することだろう。
「カメラ映りが悪いプレイヤーを狙ってもらえます? さっさと退場して欲しいので」
「あいよ」
相槌を打ちながら、運営側のプレイヤー達はミニスカートの男たちを追いかけ始めた。こちらは逃亡者のライフをゼロにした者のみが報酬を貰えるのだから、協力は望めない。全員が敵同士のようなものだ。
「あの子は適度に追って逃がしてください。一番ウケがいいので」
主催者が直接捕まえてきた男と徒党を組んだ女性はだけは集金率がよかったので、泳がせることにした。
「まあでも、もう少ししたら皆さん課金したくなるでしょう」
ジワジワと部屋が
「あとは女を狙えばいいんですよ。スポンサーが金を払ってくれるのは、若い女だけですから」
「そりゃそうっス、ね!」
移動可能速度が最大に達して扱いづらくなった機体を、女がコントローラーを振り回しながら操作している。
カメラがスカートの端を捉えた。チャリンと音を立てて、観客からの投げ銭が支払われた。
「もっと支払えよ豚どもがよォ」
「投げ銭の数もいまいちですねえ」
投げ銭の集金率は悪かった。
なお初回開催のこのゲーム、赤字ではないが、会社としては利益率が低すぎる結果に終わった。
「次回はペナルティを重くした方がいいですかねえ。みんなもっと必死で逃げて、ドロドロの人間関係で、足の引っ張り合いをして欲しいものです。仕込みの男が役に立たなかったのもいけなかった。それに……」
主催者は大きな独り言を垂れ流し続けている。
そもそもパンツを覗くのは止めておけ、と周りの男たちは思った。もちろん声には出さなかったが。
借金のカタにパンツを撮られたら 紫 小鳥 @M_Shigure
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