第4話 協力しよう
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「開始します」
一斉に散らばった飛行型ドローンは速度を落としながら等間隔に並んだ。
一度ホバリング状態になった後、高高度からゆっくりとプレイヤーに向かっていく。
対して、部屋の四隅からは歩行型のドローンが現れた。これまたゆっくりと、列を成して扇状に広がっていった。
緩慢なドローンを眺めたまま私が動けないでいると、一人の男が後ずさりながら近寄ってきた。
「なあ、君。ルールは理解できたか?」
「え、えぇ。……何か?」
ドローンを見つめたままの男は、まるで猛獣を前にしたちっぽけな人間みたいに、腰を落として身構えながら提案してきた。
「協力しよう」
「協力、ですか?」
「このゲーム、私たちプレイヤーが争う理由はない。全員で……とはいかないかもしれないけど、チームを作って動くべきだと思う」
他社との利害関係が発生しないこのゲーム、確かに他のプレイヤーと協力出来れば安全度は高いだろう。
「それは……そうですね」
「だから協力しよう」
「いいですけど、なんで私に?」
「今にも駆け出しそうだったから。あと、私よりも足が速そうだ」
実際には動けずにいた私だけれど、この言葉が後の行動指針になった。
動け。
これはピンチじゃない。チャンスだ。
「あの組織は、どこまでもフェアだ。やると言ったらやる。ルールに嘘はない」
「だから、ゲームをクリアして、報酬ももらっちゃおう……ってことですか」
「そうだ。……虫のいい話だが頼みがある――」
彼は前置きして、序盤の構想を語った。
序盤にばらまかれた飛行型は、AI搭載の自動追尾ドローン。時間が経つごとに性能が上がるが、今は緩慢に飛び回っている。
開始の合図の後に部屋の四隅から現れたのは、同じくAI搭載の八つ足ロボットだ。蜘蛛を模したロボットは床のみを徘徊している。壁面を走ることはない。
両方とも破壊していいが、飛行型は一定数を下回った後は同数まで補充されるらしい。一方で、蜘蛛型の補充はない。
「まずは蜘蛛型を破壊しよう、ってことですか?」
「そうだ」
「その間に、貴方が仲間を集める、と」
「そう」
「私だけ危険なことをする」
「……ああ」
「貴方を守りながら?」
「…………だから、虫のいい話なんだが――」
いい案だと思う。だから不安そうに振り返らないでほしい。
「いいですよ、やりましょう」
「いいのか!」
「ええ。でも、一人目だけはもう決めてるんです。あの子を」
私が指さした先を見て、男は走り出した。
「是非もない!」
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