第3話 おじさんのスカート

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 オジサンにスカートを履かせて何が楽しいんだろうか。そんなにオジサンのパンツを見たいのだろうか。

 そもそも、何故こんなゲームに参加させられているのか。

 自分で同意したからだ。


 私は返済不可能な借金を抱えていた。

 公の救済制度が使用できず途方に暮れていたところ、ある機関が借金を肩代わりしてくれたのだ。

 その代わり、一年以内にゲームに参加すること。


 内容は非公開。誰かと競うのか、何かと戦うのかもわからない。時間も場所も非公開。とにかくゲームに参加すればいい。

 ゲームが開催されなかった場合、一年後に義務が失効するらしい。

 私は無償で借金がなくなる可能性に賭けた。しかし、それは始まった。


 田舎のファミレスに呼びつけられた私は、ゲームが開催されることを教えられた。弁済から三百二十日を過ぎた頃だ。

「覚悟なら一年前にしたよ。まるで父親になるような心境さ」

「そうですか」

 私の渾身のギャグを華麗にスルーした彼は、金に関する取り決めを再確認した。


「参加は強制ですが、参加するだけであなたの借金相当額は消滅し、当機関との関係性も解消されます」

「ゲームの内容はわからんが、それでいい。そういう話だった」

「では、改めてこちらにサインをいただきます」

 そう言って契約書とボールペンを差し出してきた男は、私が書き入れた名前に満足して、茶の一杯くらいは奢りますよ、と伝票を持ち去り店を出て行った。


 残された副本を手にした私は、自腹で頼み直したコーヒーを啜りながら一息つく。

 やっと解放される……。

 約一年、戦々恐々とこの日が来るのを待っていた。

 いや、願わくは何も起こることなく一年が過ぎてほしかったが、ヤツらが貸した金を回収することなく私を解放するとは考えられなかった。


 無料のお代わりを注文して、手持無沙汰に手元の紙へ視線を落とした。表面をなぞるように目を滑らせる。

「――なんだこれは」

 うまい話なんてなかった。

 私は解放されない。


 契約書に記載されている成功報酬・金二百万円。これはいい。何をさせるのか知らないが、とにかく生きて、金を手にして戻ってくる道がある。

 半年分の給与に匹敵する非合法の報酬金だ。是非もない。


 その後ろ、挑戦料・都度二十万円。罰金・都度二十万円。

 なんだこれは。

 ゲーム開始時で二十万円。なにかさせられて、失敗すれば二十万円。それが複数回。私が支払わなければいけないのか。


 たまったものではない。貯金だってろくに出来ないのに、こんな大金をどこから捻出すればいいのか。

 ――当日持参なき場合当社利息にて貸し付けます。とあった。

 私は解放されない。借金地獄だった。

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