掛け合い台本 失われた輝き

A:

B:


A「こんちわ〜!」

B「いらっしゃい、僕ちゃん」


A「いつものやつちょうだい!」

B「はいよ、80円ね」


A「え〜と、はい!80円!」

B「毎度あり。それ好きだね〜」


A「うん!超好き〜!」

B「いつも君が来てくれるおかげで、店が賑やかになって嬉しいよ」


A「だって、ここが一番落ち着くんだもん!」

B「それは何より。でも、あんまり夜遅くには来ちゃダメだよ。特に最近は暗くなるのが早いし…」


A「大丈夫だよ、僕怖くないもん!」

B「そっかそっか。でも、何があるかわからないよ。特に、この辺りは…ね?」


A「うーん…じいちゃんから八尺様ってやつがいるって聞いたことあるけど、それって本当?」

B「さぁねぇ…ただの噂かもしれないし、本当かもしれない。けれど、君はちゃんと気をつけてね」


A「うん、気をつけるよ!」

B「いい子だね」


A「そういえば、このお店、なんだか高い棚が多いよね。あそこのダンボールなんて天井とくっついちゃってるし…」

B「ここは狭いからね。それに子供もたくさん来るから、躓いたりしないようわざと高い位置に置いているんだ」


A「でもちょっと高すぎない…?お兄ちゃんは届くの?」

B「もちろん届くよ。手を伸ばせば、天井の隅だって楽々さ」


A「いいな〜僕もお兄ちゃんみたいにおっきくなりたい…」

B「きっとなれるさ。いっぱい食べて、たくさん寝ればね」


A「わかった。いっぱい食べて、たくさん寝る!なんかお兄ちゃんって本当に八尺様みたい。まぁ、八尺様は女の人だから違うけどさ!」

B「大きくなると、見えるものが違ってくるんだ」


A「え…?」

B「大きくなればなるほど、見えるものはどんどん醜くなってしまう。汚い世の中を生きるために、心が次第に貧しくなっていく。だからこそ、僕ちゃんのような純粋な子供に、どうしようもなく惹かれてしまうんだよ」


A「よくわかんないけど…わかったよ!じゃあ、また来るね!」

B「それでいいのさ。はい、またね。気をつけて帰ってね、僕ちゃん」

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謡蹟めぐり @hiyamiutai846

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