第47話 ひぐらしのなく頃に祭(ADV)

 昭和58年、○○県鹿骨市。

 県境にある寒村の雛見沢ひなみざわ村。

 この二千人にも満たない村にてとある事件が夏に起こる。


 雛見沢村連続怪死事件(1979年~1983年)


 毎年6月の決まった日に、一人が死んで、一人が神隠しで消えるという奇妙な出来事。


 村を沈めて巨大ダムと作る反論から引き継がれる残虐な人たちの末路。

 昭和後期の決まって起きる殺人事件に偶然引っ越してきた前原家の前原圭一まえばらけいいちにもその悲劇は襲いかかる。


 いるはずの人間がいなく、いないはずの人間が存在する。

 昨夜に生きていた人がいなく、今生きてる人がいない。


 果たして前原圭一はプレイヤーの目を通じて、惨劇を続ける真犯人を見破ることが出来るのか──惨劇に抗え!


 ──元はパソコンの同人ゲームで大ヒットし、その口コミがネットを通して広まり、瞬く間に社会現象までもなった本格派サスペンスアドベンチャーゲームである。

 プレステ2への移植先はゲームの移植専門を主軸にしたアルケミストだったが、現在は倒産して存在しない会社でもある。


 ──このゲームは当時は無名の同人作家、竜騎士07がシナリオもキャラのイラストも音楽さえも全部手がける所から始まっており、出題編4作、解答編4作とコミケなどで売っていて、このプレステ2にはこれらを纏めて一本のゲームとして発売。


 癖のあったキャラデザの変更に、圭一以外のキャラは豪華人気声優によるフルボイス、さらに三つにも及ぶ新規シナリオに、最終章は祭囃し編でなく、プレステ2ならではのオリジナルのエンディングと発売前から人気が沸騰していた。


 ──さらに本作は選択肢が出るようになり、主人公が惨劇ルートを回避しようと選んだきっかけでルートが変化してゲームオーバーになってしまうこともあるが、内容によっては解答編の真相が出てしまう場面があり、多くのプレイヤーから批判を浴びた。


 ──ゲームスタートの鬼隠し編ではレナにスポットを当てているが、一見真面目で清純とはかけ離れた陰日向な行為に、圭一は徐々に疑心暗鬼となり、村を警戒していた警察の大石にも相談するのだが、最終的にそれを知ったレナと同じクラスメイトの魅音みおんの手によって圭一に悲劇が待ち受ける。


 一人電話ボックスにて背後から迫る真犯人を大石に伝えようとするが、異様なほどに首をかきむしった出血多量が原因で、その場で息をひきとる圭一。


 大石は警察総員を尽くし、真犯人を暴こうと色々と調査をするが、圭一の家で仲間のレナと魅音を金属バットで殺害していた線から、圭一が何らかの薬物を使用して錯乱したものと考えられたが、鑑識を通じてもその薬物の痕跡も一切なし……。


 さらに壁時計の裏には圭一が隠したと思われる物がテープで貼っていた物も持ち出された形跡があり、圭一が書いた遺言状はある部分を取り除いて破いたような二枚の紙切れのみで、犯人の証拠も掴めないまま、結局は迷宮入りするという奇妙な内容となっている……。


 ──この出題編から真犯人が読めたプレイヤーの正解率は僅か1%しか満たず、解答編の罪滅し編が出るまで大いの謎となった。


 ──可愛いものならケンタ君人形でも、沙都子さとこ梨花りかなどの幼女でも何でも『お持ち帰り~♪』と暴走し、普段はポヤンとした柔らかい笑みのレナが……

突然シリアスになり『圭一君、隠し事はいけないよ……』と言いながら、いきなり豹変して、『嘘だ‼』と叫ぶ迷シーンはプレステ2でも健在である。

 プレステ2ではボイス入りで『嘘だ!!』の瞬間に画面のグラフィックも変化するので、そこで二度驚くことになる。


 しかし、このゲームには前途も告げたが、選択肢が出来たため、選びようによっては原作とはかけ離れた方向に進んでしまい、そこでゲームバランスが崩れてしまう。


 物語の展開もやや信憑性があり、後ろからつけてくる足音の持ち主がいたいけな少女だったり、首をかきむしる薬物が妄想行為の一部だったり、真犯人は鬼隠し編ではほとんど出番のないあの人だったという突拍子のない場面もある。


 一応サスペンスということで圭一たちを殺害した犯人は誰だ? と思ってプレイしていたのだが、実はあれは圭一による自害で、時計に貼っていたのは黒マジックであり、圭一自らが仲間を信じきれずに殺害したという結末を、別世界の圭一が思い出すというカラクリとなっており、折角の推理劇が水の泡である。

 この衝撃の推理ものではない解答編はネットなどで過激に炎上され、当時の同人ゲームの製作側は廃業寸前にまで追いつめられた。


 ──最終章のシナリオも祭囃し編とは違い、即バッドエンドの選択肢が増え、内容がおかしなものに。

 原作とは違い、重要人物がいなくなるという事件はハッピーエンドで爽快な祭囃し編とは違う最悪な位置付けとなった。


 ──またシナリオ(文章)の量が膨大過ぎて、全てのシナリオを読み終わるまで、平気で100時間以上はかかってしまう。

 普通のRPGクリアが40時間だとしても、その倍以上の内容である。


 このゲーム、時間が有意義にとれるプレイヤーでないとクリア自体も難しい。

 小説に慣れていない人にとっては辛い物語設定かも知れない。


 ──さらにサスペンスのわりには血飛沫などの表現も低めで味気無い感もある。

 発売当初のプレステ2によるソフトの価格も高めで、少しでもひぐらしを知らないと中々手を出せるゲームでもなかった。


 主題歌やエンディング曲は良く、彩音による気だるい感じで上品な歌声は高く評価できるのだが……。


 ──そういうわけで初心者はまずは漫画版を読む方をお勧めする。


 シリーズごとに分かれて発売しており、ゲームとは違う真の惨劇を読むことができる。

 ホラー好きな友人も鬼隠し編の漫画を読んでみて、ガチで怖くて続きが読めないと身を震わしたほどだ。


 ドラマCDも発売しており、聴くことによってひぐらしの怖さを気軽に体験できるのがポイントだ。

 だが、現在ではプレミア価格がつけられ、中古市場にもほとんどなく、入手には一苦労するだろう……。


 アニメにもなっているが、ある程度の描写は抑えられていたり、カットされたシーンがありといささか不満が残る内容で、さらに劇場の実写映画は原作を知らないと意味不明に終わってしまう。


 ひぐらしを知るには、まずは原作に目を通すしかない。


 ──ちなみにこのひぐらしの舞台は実際の場所でもある白川郷をそのまんまイメージして作られており、その場所に聖地巡礼するファンもいたりする。


 ──その後、竜騎士07による続編として『うみねこのなく頃に』という続編が発表されるが、登場するキャラが異様に多すぎたり、サスペンスの部分も奇想天外な内容となっており、とてもじゃないが、人間のできる犯行じゃないよね。明らかに超常現象だよねと思いつつ、重い蓋を閉じてしまった。


 ──圭一の周りに色々な女の子が出てきて、ハーレム要素に溢れたギャルゲーに見えなくもないが、実はホラー色が滅法強い、いや完全なホラーゲームな部分も評価され、実写ドラマにもなり、万人受けとなったこのゲーム。


 本当に怖い真犯人はあなたの後ろにすでに、『あうあう……』と呟きながらいるのかも知れない……。



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