第42話 シェンムー 1章 横須賀(ACT+ADV )

 製作費用70億という大予算をかけて発売となったセガが発売した大作アクションアドベンチャーゲーム。

 全11章のシナリオとなっており、現在でも完結していないゲームでドリームキャスト(以下略ドリキャス)ではシェンムー2までが発売された。


 その後、プレステ4にてシェンムー3が発売。 

 今もなお、未完の壮大な規模のゲームとされている。


 ──第1章、横須賀編の舞台は80年代の昭和の香りが漂う横須賀。


 物語のプロローグに当たり、主人公、芭月涼の暮らす柔道道場で師範の父と謎の中華服の男が父が中国から持ち帰った価値のある二枚の古い鏡をめぐって争いに遭い、最終的に父は男に殺害されてしまう。

 誕生日に悲惨な状況を目の当たりにした涼は男への復讐を近い、家で見つけたもう片割れの鏡を探し当てて、男がいる中国へと旅立つ決意をするという内容である。


 ──キャラクターはサブキャラを含めて全てフルボイスで展開され、実際の建築士が関わった建物のリアルな作りに、主人公の動きは声優自らが実際に体を動かして作り上げたモーションキャプチャでの再現などと随所にこのゲームに対するこだわりが見られる。


 ──ゲームはキャラも風景も何もかも3Dのフルポリゴンで描かれており、当初はサターンの時から製作をしていたが、容量と新ハードに幕を開けたドリキャスの影響により、ドリキャスでの発売を余儀なくされた。


 ──基本、このゲームは自宅に毎日使用人に貰える500円玉を資金とし、父の命を奪った男に関しての情報を集めるアドベンチャーモードがメイン。


 主人公の持っているメモ帳により、相手と話した内容が刻まれるようになっていて、進行に思い悩んだり、行き詰まった時にメモ帳を見ることにより、ヒントを掴め、次にやるべき行動が分かるようになっていた。

 あのデスノートとはちょっと違う。


 ──だが、時にはクイックタイマーイベントというシステムが発動され、画面に表示されたコントローラーのボタンをタイミングよく正確に押すことでイベントが進行していく。

 ボタン入力に少しでも失敗するとやり直しなパターンで再度挑戦になったり、物語が変化することもあり、瞬時の判断力ととっさの決断力が試されるのだ。


 自転車に乗った蕎麦屋のおじさんが急に突っ込んでくる時もあり、ボタン入力に失敗すると、避けきれずに荷台に積んでいたざる蕎麦が散乱してアウトに……。

 これはギャグなのか、本気なのかとツッコミを入れたいこともあった……。


 ──主人公の芭月涼は空手の武道を会得しており、絡んでくる不良相手やチンピラと争う場面が多岐にあり、その場合はコマンド入力のバーチャファイター風のバトルモードに突入する。


 技は奥義書を手にし、主人公の師匠に技を教わることで覚えることができるが、ナイフなどの凶器を持つ悪党を相手にするパターンでは一つの入力ミスが命取りであり、そのままやられてしまうという最悪な結末もあった。


 それでもコマンド入力に慣れてしまえば、そんなに難しい内容でもなく、簡単なボタン入力で敵に勝ててしまうので、格闘技のような究極のコマンド入力は必要ない。

 何も心配せずとも、入力を終えた後には敵さんは地面に寝転がっているからだ。


 ──キャラも全員がフルボイスということは前途に触れたが、さらに職業や身長や体重の設定、血液型や性格など、細かい部分までみっちりとしたキャラクター像が出来上がっている。

 これが何百人もいるサブキャラの分も描かれているので圧巻のため息しか出てこない。


 だが、似たような声の人もおり、通行人に話しかけても『今は忙しいから』と拒否られる始末。

 キャラは表情だけでなく、服のシワまでと細部まで描かれており、誰一人、似たような顔つきの人物がいないだけに、これには誠に残念である。


 ──そんな癖のある内容だったせいか、シェンムーの売り上げは伸び悩み、このゲームの中古市場が膨張。

 ドリキャスで続編を発売しても40万本と現状の売り上げは確保できなかった。


 テレビのCMでも大きく表現したのに目標額には到底及ばなかったのだ。

 そしてシェンムー2に至っては発売時にドリキャスの製造が中止になっていたことも原因であろう。


 いくらスペックがあってもドリキャスはセガが生み出したマニアなゲームハードと噂され、映画のような重厚な作りをしたシェンムーでさえも、ドラクエやFFのように爆発的に人気に火がつくことはなかったのだ。


 しかし、プレステに移植され、長い年月をかけて熟成することにより、シェンムーはセガによる大作なゲームシリーズという尾ひれがつき、人気と売り上げが徐々に上昇。

 よってプレステ4にて20年ぶりにシェンムー3が意欲的に製作され、順調に発売できるようになった。


 ──物語では常に時間が流れており、一定の時間以内に中国へと船で旅立つ準備までたどり着かないとゲームオーバーになる仕組みでもあった。

 時期が来ればクリスマスや正月の風景となり、街の人の服装なども変わり、リアルな時を感じることもできる。


 ──自販機のジュースをガブガブと飲んだり、カプセルトイにハマって何回も回したり、朝から夜までゲーセンで暇をもて余したりすることも可能だが、最終的には重要なイベントを到達できず、そこで物語は終わってしまうのだ。


 バッドエンドというシナリオもあるのだが、この時間の流れは省略できないので、何時間も待つしかないのも問題である。

 夜中遅くになると強制的に我が家に帰ってお眠だし……。


 ──後半はフォークリフトのバイトの仕事がメインになり、工賃が貰えるのだが、街に戻ることは出来なくなり、ミニゲームやカプセルトイなどは楽しめなくなる。

 そこへフォークリフトレースという強引なイベントまでやらされるのだ。


 このバイトのイベントにより、RPGを越えたフリースタイルなゲームというキャッチフレーズを付けておきながら、この不可思議な点は何だ? と良否な意見に分かれている。


 ──やがて空港に向かうため、バイクで走行するミニゲームがあるのだが、このゲームの難易度がこれまた高い。

 普通に走っても制限時間がギリギリになるのだ。


 キャラうんぬんより、この辺の細かな部分も調整してほしかった。

 同じバイクゲームでもFFⅦの方が面白かっただけに……。


 ──莫大な予算と人員で作り上げたシェンムーだったが、当初は予想以上に売り上げは伸びず、赤字の年月だった。


 この世知辛い状況を突破するために『龍が如く』シリーズを発売するが、これが飛ぶように売れて続編も好評な黒字だった。


 似たような世界観で、なぜこうまで売れたのか。

 それは熟れたトマトにでもならないと分からないのかも知れない……。


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