第41話 バイオハザード コード:ベロニカ(ACT+ADV)

 バイオの生みの親であり、発売元でもあるカプコンから、今回のシリーズはドリームキャスト発売ということで、ナンバリングを付けずにオリジナルのタイトルにしたいという考えからコード:ベロニカというタイトルになった本作。


 物語は前半は南米の孤島、後半は南極基地とおよそ二作分のボリュームがあり、そのせいかインクリボンが無くてもセーブポイントが設けられている場所もある。


 ──主人公は2の主人公の女性クレアと兄であるクリスの二人であり、主に前半はクレア、後半はクリスの出番が多い。

 真の兄妹愛とは何か、本当に怖いのは怪物じゃなく、人間様と今までにない展開で製作側の人形劇が鈍く光る仕掛けでもある。


 ──バイオの特徴として取り上げられるのがロード画面が表示されず、ドアなどを開ける時の時間を利用しながらその最中に読み込みをしている部分。


 本作には階段を上ったり下りたりする動作なども加わり、主人公の胸の高鳴りに合わせてコントローラーが振動する仕組みもあり、プレイヤー側もその肌を通じて怖さを共有できるようになった。

 天井の照明が左右に揺れる度に、プレイヤーの影も左右に揺れるなどと、細部に渡る演出に肝が冷えきってしまったほどだ。


 ──正直、バイオシリーズも無印からプレイして免疫を受けていた私は立っていただけでも怖かったゾンビに何の恐怖を抱くことはなくなり、強力な武器のロケットランチャーやガトリングガンで、これでもかという風にゾンビたちを倒し、怖さよりもスッキリ感の方が上回っていた。


 あの進撃の巨人のように『ゾンビたちを一匹も残らず、駆逐してやる!』と立体起動装置のように左右に揺れ動き、コントローラーを駆使してあちこちから攻めてみたものだ。

 近くに敵の気配がすると『来やがったな、こそ泥め!』と銃を構えて出てきたと同時に瞬殺。


 慣れとは恐ろしいものだが、プレステのバイオ3くらいには怖さも何も吹き飛んでいた。

 所詮しょせん、バイオも慣れれば、この程度の怖さかと軽口を叩いていたのだ。


 ──当時、ホラーゲームが苦手だった友人にドリキャスに移植されたバイオ2をプレイさせた所、多少は怯えながらも『こんにゃろー』と騒ぎながらゾンビに向かってガトリングガンで蜂の巣にしていたことを思い出す。


 遊園地の絶叫系ではやたらと驚く相手でもあったが、相手が別次元のゲームとなれば話は別。

 慣れないバイトで溜まったストレスのはけ口をゲームで発散……とでも思っていたのだろうか。


 そういうことで今回のバイオシリーズも全然怖くないから万事オッケーと思いながら、友人の忠告も聞かずに本作をゲット。


 しかしこれが後にイタい目にあった。

 身も心もアイタタタだった。


 サターンやプレステとは違い、3D表現が細かく作れたドリキャスは先のハードよりも立体的な映像となり、私の心を再び恐怖へと陥れた。

 特に墓場の土を掘り上げて出てくるゾンビが怖すぎて夜中に一人でトイレにも行けなかったほどだ。


 ゾンビがウーウーと唸り、ペタペタと足音を立てながら近づく場面にこれでもかと怯え、バイオ無印のように慎重に歩きながら探索し、一部屋を移動するだけでも相当な時間がかかった。


 ──私はここでつくづく思った。

 バイオシリーズの怖さに限界と頂点はないということに。

 リアルに積極的に迫ってくる怪物相手に私はひたすら怯えて逃げるさまだった。


 ──物語は3のバイオで侵された街が核兵器で消滅した数ヵ月後であり、2で警察署でのTウィルスの情報を探っていたクレアは無事に生き残り、ヨーロピアンに行った兄の行方を探す毎日だったが、ゾンビなどを研究した一味を探していたスパイか、カレーのスパイスか何かと思われて、ゾンビ制作会社の研究所出身による警備員に捕まるさまに遭い、二度と生きては戻れない南米の孤島にある刑務所へと閉じ込められる。


 ──だが、それは束の間の平和だった。

 逃げられないと認識していた絶望的な状況は無印などでタイラント殿などを作り上げたが、洋館と一緒に死んだと思われたキザなグラサンの男性の再来より、この孤島でもTウィルスが蔓延したのだ。

 バイオ至上、最悪な野郎である。


 これにより孤島でもゾンビが大量発生し、同じく捕まっていた少年とどさくさで牢を出て、脱獄計画を企てることに……。

 バイオハザードの新章、バイオ4ではなく、コード:ベロベロのストーリーの始まりである。


 ベロベロとは友人がつけた名称でもあり、『ベロニカじゃ、何のセンスもなく怖いだけだろう?』という理由でベロベロとなった。

 妖怪垢舐めのことでもないらしい。


 ──今回はラスボスも三形態に変形し、中々手強い相手となっている。


 最終的には人間から空を舞う虫のような形態に進化するが、いかにもこれは人格を捨ててしまった失敗作らしく、ウィルスを投与しても強靭な人間のように生まれ変われるという実験は幻に終わっている……。


 ──ちなみに、このゲームの一番の難易度はラスボスではなく、終盤の一コマにある。

 一見、何も無さそうな部屋かと思いきや、目の前のアイテムを手に入れようと通ると、床にあるスイッチを踏んでしまい、天井から巨大な鉄球が落ちてくるのだ。

 この進撃の鉄球に当たると即死扱いになり、そこでゲームオーバーになってしまうという恐ろしい罠。


 この鉄球、落ちてくるのも意外と速いため、目視だけでの移動も困難で要するに勘で避けなさいみたいなパターン。

 私はここで何回も凶弾に倒れ、何度もリプレイをした記憶がある。


 本当に怖いのは怪物じゃなく、人間様の作ったトラップであるという今までにない展開でプレイヤー側も大いにビビらせた。


 ラスボスより、このトラップのかわし方が難しいとは。

 これまた、世も末である……。


 ──ベロニカはゲームをクリアするとバトルモードというオマケモードが加わる。

 専用の武器を無制限に使用できるキャラを選んで、画面に出現する敵を倒し、最後にボスを倒すと終了となるが、クリアタイムの条件を満たせば本編で強力な武器が最初から使用できたり、クレアの衣装が変わったりする。

 シリーズのファンにはお馴染みのモードだろう。


 ──プレステからドリキャスという新しいプラットホームに立ち、様々な要素を組み込んだ、まさに言葉通りのコードベロニカ。

 後にプレステ2などにも移植されるが、当時のバイオを一番賑わせたのは間違いなくドリキャスからのベロニカだった。


 そのタイトルの都合上、続編のリリースもないまま、ベロニカは今日も生き続ける。

 まさに生ける屍として……。

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