第31話 蒼穹紅蓮隊(STG)

 縱スクロールで比較的ゆったりと進む2Dポリゴンシューティングゲーム(以下略STG)だが、端に移動するにつれて画面も遠ざかって広くなるこだわりが新鮮で、各ステージでも神ゲーの演出と噂されたアーケードからが始まりなSTG。

 そのゲーム名は蒼穹紅蓮隊そうきゅうぐれんたい


 ──蒼穹紅蓮隊とは表向きには人工衛星の設備と管理をする自衛部隊の異名であり、危険と判断された作業を代行したり、依頼人からの要請で紛争の鎮圧などに乗り出したりなど、要するになんでも屋部隊。

 その部隊に所属する男女三人が自社の戦闘機を操縦して任務にあたるゲームである。


 ──ゲームシステムは乗組員のスタート前のキャラ絵と共に万能型、スピード型、パワー型の三つの機体が選択できる。


 ──攻撃方法は主に三つ。

 普通のショットとボタンの長押しでワイヤーフレームのような絵柄のウェブを展開してロックオンができたり、緊急回避用のボムの攻撃ができる。


 ショットではパワーアイテムで六段階までパワーアップし、特定の攻撃力まで上がり、このアイテムを取るとボーナスポイントが貰え、二倍などと倍数になって増えていく。


 また網の目のようなウェブを表示すると範囲内にロックオン攻撃が可能。

 高低さは関係なく一点に攻撃を叩き込む集中型と、幅広く攻撃する拡散型が選べ、全方向にそのウェブを展開できる。

 この攻撃では四機以上の連続ヒットでポイントが稼げるが、二機以下だとポイントが下がる。


 だが、一見便利そうな攻撃だが、ウェブ使用中は普通のショットは使えず、さらに一部の敵やボスキャラにはロックオンのみで攻撃はできないため、この攻撃のみでクリアは望めない。


 ボムはピンチの回避以外にも意欲的に攻撃に持っていくこともでき、ウェブでロックオンしてボムを投げ込み大ダメージをあたえるという方法もできる。

 使用中は一時的に無敵になるが、ボムで敵を撃破するとポイントがぐんと下がる。

 ボムのストック数が限界になり、新たにボムを入手するとポイントが加算される。


 このゲームではこのボムを上手く多用してステージを進むことで戦況を有利に進めることができる。

 これでラスボスも将棋倒しのごとく、あっという間に倒せるよー。


 ちなみに自機が破壊されてもその場に取得したアイテムが散らばるので、復帰することは容易にできる。

 攻撃力も一段階下がるだけなので比較的初心者にも優しい作りである。


 しかし、パワーアップアイテムがこれでもかと登場するため、弾除けの邪魔になる時もあり、それプラス処理落ちも発生する。

 よって理不尽に撃墜される時もたまにある。

 猫型ロボのアイテムに頼りきったのび男のような末路でもあった。


 さらにサターン版は連続ボーナスでバグが発生し、高得点を叩き出すと何十万というとんでもないポイントがいきなり加算される。

 どうやら元のゲーセン版もそうらしい。


 ──また二人同時プレイになると画面の範囲が広々と見渡せ、周囲の敵や敵弾が見やすくなったり、戦略もやりやすくなる。

 二人になってもその分アイテムも大量に出現するので取り合いにもならない。

 STGにありがちな二人で遊ぶとごちゃごちゃ感になる=神でも予測できない大喧嘩という展開にはならない。


 ……と良作なSTGと言いたい所だが、プレイ中にデカデカと堅苦しい日本語のテロップが表記されたり、敵キャラのボスの機体などが、同時期にブームとなったアニメのエヴァンゲリオンと演出などが似ていたためか、パクリのゲームという噂も広まって話題となった。

 実際はそのアニメの製作前からこのSTGを開発していたため、パクリではないのだが……偶然の産物とは恐ろしい。


 ──攻撃方法のロックオン攻撃も同時期に稼働した『レイストーム』のパクリとも言われたが、ロックオンの攻撃の仕方が違うため、これも誤解である。


 ──このサターン版は元のアーケード版からそのまま移植された形となっており、移植に関してのクオリティーは高い。

 というかアーケードがサターンと似たような基盤で作ったと表現した方が正しい。


 後に新機種の機体を追加したプレステ版も発売するが、たった一機の追加のみで万能型とほぼ同じ作りであり、サターンよりも処理落ちも激しいので洒落にならない。

 原因としてプレステのソフト素材ではなく、サターンと同じCD ROMで製作したことが考えられる。


 ──物語の搭乗キャラもかなりの癖があり、受け入れがたい。


 バツイチで百合な関係に興味がある女性だったり、社長の隠し子の青年だったりと取っつきにくい。

 プレステの新キャラなんて刈り上げの厳ついおっちゃんときたものだ。


 ──ゲーム自体は面白く表面的にはヒットしたが、裏側では色々と火種が燃え広がり、ゲーマーから叩かれ、様々な苦情を受ける中、同時期に販売された『レイストーム』の気迫にも押されたのか、続編の製作は見送る形となった。


 ──その後、2D STGの名作として、演出面の際立つ『サンダーフォース』、ロックオンという熱い切り口の『レイシリーズ』と肩を並べる三大作品の仲間入りともなったが、現時点でもそのような続編の話はない。

 ヒット作にも関わらず、珍しいパターンの2D STGとも言えるだろう。


 ──そんななか、当時の友人とこのゲームを自宅で遊んでいたのだが、その友人の口から溢れたのは『いい加減プレステは買わないの?』というショックな発言だった。


 友人の言いたいことも分かる。

 サターンの売り上げも愕然と落ち込み、販売するソフトはプレイする人を選びそうなマニアックなギャルゲー(美少女ゲーム)がメイン。

 セガの屈指のゲーム機セガサターンは次世代機競争に敗北し、世界はプレステに軍配が上がりつつあったのだ。


 ──その後、後日、私の家に遊びに来た友人はサターンソフトによるセガの3D格闘ゲーム『ファイティングバイパーズ』を持参して、一人で技の練習ばかりしており、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


 ──こうして私のサターンの物語はここで終演となり、やむ無くソニーのプレステ本体を購入した。

 遊ばなくなったサターン本体とソフトたちと、Nintendo64は邪魔になるので思いきって処分したのだった……。


 ──次回からライバル視を抱いていたプレステのとんでもない実力と面白さを思い知らされることになる……。

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