第30話 AZEL -パンツァードラグーンRPG-(RPG)
サターンで好評だったセガ製作によるパンツァードラグーン(以下略パンドラ)という3Dシューティングゲーム(以下略STG)をロールプレイング(以下略RPG)にした異例作。
元は三作目のシリーズだが、物語の流れは無印と2のゲームがリンクしたパンドラの最終章の世界観となっている。
──舞台は高度な文明が消え失せた古代のような世界。
過去に人類が生み出した攻性生物が暴発し、人類の命を脅かす危害を加えるようになった攻性生物に対して、帝国の人類たちは過去の遺産からエネルギーを得て、同じ攻性生物であるドラゴンを操り、全ての敵対する攻性生物を滅ぼすことにした。
そんな帝国の傭兵で警備員でもあった主人公エッジは洞窟で遺産を守る任務にあたっていたが、そこに普通の攻撃が通用しない攻性生物が出現。
次々と仲間が倒れる中、エッジは偶然にも岩の中に閉じ込められた攻性生物のような骨格に長い髪を身にまとった少女を見つけてしまい、唖然とし……そこへやって来る攻性生物にエッジは追い詰められる。
そこで退路を立たれたエッジはランチャーで床を武器で破壊し、少女もろとも深い闇へと落ちていくのだが……と、まずは物語の作り込みが半端じゃない。
基本、イベントや日常の会話シーンには字幕つきのムービーが流れ、一本の映画を観ているような感覚だ。
このムービーはボタン一つでカットすることも可能でサクサクと物語を進めることもできる。
──ハードがサターンであり、3Dの作り込みが古臭くて雑だが、色合いは丁寧で、それが逆にこの古き良き文明を上手い具合に表現している。
サターンの限界に挑戦した3Dによる映像、キャラクターはフルボイス、総プレイ時間は10時間あまりだが、それに反してCD枚数は四枚組と、いかにこの濃密なパンドラ感を気軽に楽しんでなー感がビリビリと伝わってくる。
──このゲームの主役でもあるエッジが乗るドラゴンも色々な育成要素があり、敵を倒した経験値でパラメーターを割り振ると色々なタイプとオリジナルな形のドラゴンへと成長していく。
しかし、攻撃を上げると技の威力が下がる、防御力を上げると機動力が下がるなど、相反したタイプになっていくので育成には注意しないといけないが、中には伝説のドラゴンなどにも成長できるので、色々と試してみる価値はある。
──戦闘シーンはFFシリーズのようにリアルタイムで過ぎていき、画面下のゲージが溜まると行動開始。
ドラゴンに乗って空を舞いながら、敵と戦うパンドラらしいSTGのようだが、中身はRPG感覚と少し変わった作りだ。
背景が流れるように過ぎ、よく見ると同じ映像を繋げて流しているが、それを補うようにカメラ視点がコロコロ変化し、空を飛んで戦闘をするという高揚感が前面に押し出されているせいか、そんな細かいことなど気にもならない。
敵の中に攻性生物以外にも、エッジを敵と見なした帝国軍が所有する巨大戦艦などと対決する場合もあり、大きな戦艦の周りを移動しながら迫力のある映像美が見てとれた。
──攻撃方法はゲージが溜まると行動ができ、主にやれることは三つ。
敵をロックオンして複数の敵を追尾レーザーで攻撃したり、エッジのハンドガンで敵の一部分を連続して攻撃。
二倍のゲージとMPも同時に使用し、バーサークという魔法で敵全体にダメージをあたえられ、無敵などの補助魔法も使える。
なお、攻撃にしろ何にしろ、行動前にカット出来ないムービーが挿入される仕組みとなっており、例えば普通の攻撃だとドラゴンが翼を大きく広げてレーザーを放つという映像が流れる。
この強引なムービーの導入により、一回の戦闘時間は長めとなっているが、このゲームは敵との遭遇が極端に少な目でレベル上げも気にせずともいいので、それほど面倒には感じない。
──RPGに敷居が変わってもパンドラの一番の醍醐味と言えばリアルな3D STGだろう。
戦闘後には戦況によっては追加のボーナスポイントやアイテムが入手でき、敵の画像や情報も記録に残り、エッジの面白コメント(趣味の一言日記?)も記載される。
戦闘シーンも気楽に楽しんでという練り込みさも何とも言えない。
──また戦闘時には位置取りもできて、敵の背後などに回ると相手に弱点ができて、ダメージを倍にしたり、逆に敵に背後をとられると大ダメージを受けたりする予定だと警告表示が出たりとシミュレーションのような戦略性も試された。
この位置を決める最中にはゲージは止まるので動き回ると逆に敵から攻撃を受けることになる。
──マップの移動はボタン一つで選択でき、フィールド内もドラゴンで空を飛びながら移動でき、ダッシュもできて、障害物や宝箱はレーザーで破壊と快適な操作。
後者の箱の中には素敵なアイテムが入っていて、この宝箱はドラゴンの成長によって幾度も出現する。
──時にはドラゴンから降りて、エッジのみで街中を移動するが、朝、夕方、夜と時間帯が変化し、時間帯によっては会えないキャラとかもいる。
街の傍に待機させているドラゴンと直に話しかけることも可能だ。
話しかけることでドラゴンの体調を知ることができ、仲の良い親と子のような雰囲気になれる。
エッジ「ガウガウ?(調子はどう?)」
ドラゴン「ピカチー!(サイコー!)」
※実際の会話とは少し異なります。
──このようにパンドラを見事に表現した世界観、丁寧で絶妙に練られたシナリオ、STGのような流れの戦闘パート、壮大で優雅なBGMと、このゲームは非常に優れた作品である。
売り上げは前作までのパンドラのSTGの売り上げには及ばず、半分以下の10万本と残念だったが、プレステ全盛期に後退していた末期のサターンで発売されたゲームであり、実はあまり知られていないだけなのでは? と錯覚してしまう。
パンドラのファンから幾度もなく、このRPGの移植やリメイクの声が上がったが、リメイクされたのはSTGの方のみという惜しい結果となった。
──結果、サターンでしか遊べないゲームとなったが、サターンのハードを中古で入手し、どのゲームを選べばいいか迷うのなら真っ先にこのRPGをお勧めする。
前作を知らなくても違和感はなく、STGのような爽快感を持ったRPGなので、ドラクエやFFとは違う新しい切り口のゲームとして存分に楽しめるはずだ。
──この作品をクリアした後、前作のSTG のパンドラもプレイしてみたのだが、そのリアルなドラゴンの上下の揺れと動きで見事に3D酔いしてしまい、泣く泣くプレイを中断した想い出が思い浮かぶ。
プレステ4のリメイク版もそうなるのだろうか。
まあ、酔うくらい丁寧な作りをしているのだろう。
シリーズを通して名作がゆえに、ここはパンドラらしく脳内ロックオンで合掌である。
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