第23話 ワンダープロジェクトJ2 コルロの森のジョゼット(育成SLG)

 私は博士から生み出されてこの世に生をもたらしたジョゼットという女の子。 

 ブルーランドという街にある潜水艦のドルフィン号の中に博士とやって来た私は博士の古い知り合いの『こちらからは顔も見れないプレイヤーさん』を紹介され、これからはこのプレイヤーさんと仲良く暮らしていくんだよと言われた。


 そんな博士はある日から眠ったまま、目を覚まさなくなったけど、きっと私と色んな旅をしてきて疲れてしまったのだろう。

 博士が作った鳥形のロボット、バードは『博士は死んだんだよ』と教えてくれたんだけど、死ぬって何のことなの?


 ──一見ゲーム好きでも聞き慣れないこのゲームタイトルはドラクエなどを製作していたエニックス(現在はスクウェアエニックス)が夢と希望を乗せ、満を期して発売したプロジョクトシリーズの2作目である。

 キャラクターデザインはとなりのトトロなどの大ヒットアニメを製作しているジブリからだ。


 ──物語はNintendo64のゲームとして珍しいスタイルで、機械仕掛けのギジンという人間に近い姿をした14歳くらいの少女、ジョゼットを相手に、同じくギジンのバードの指示により、色々とコミュニケーションをとる内容であった。


 ジョゼット本人は初めはロボットということさえも理解してなく、何も知らない赤ちゃんと一緒だ。

 本や虫を見かけたら食べてしまったり、手にした道具を指示しても、とりあえず口に入れようとするので、あれは駄目、それは正しい、これはこうやって使うなど子供をしつけるように細かく指示をしていかないといけない。


 俗に言う育成型シミュレーション(以下略SLG) という代物で当時のゲームでは初の人工人格を搭載しており、プレイヤーが何も指示を出さなくても向こうから色々と話しかけてきたりもする。


 その気分は自分が親となり、我が子を育てている状況と見事にリンクするだろう。

 自分の子供を一人前にしつけをし、立派な大人として成長させるのは大変なことだと、このゲームを通じて教えてくれる。


 そんなプレイヤーの育て方次第で悪さばかりする非行少女になったり、真面目で純心な女の子になったりと、様々な性格のジョゼットへと成長させることができた。


 ──ゲームのステータス画面もRPGのように複雑ではなく、大雑把な数値だ。

 実際の子供との接し方でも、心の真相までは読めないという思惑から、育成型のSLGにもありがちな細かいステータスの表示もなく、本物の人間に近いジョゼットとの成長が楽しめる。


 ──道具を正しい使い道へと、一つずつ教えるのも一苦労だ。

 例えば地面に置かれたスコップを手にしたとしても、まず口に入れることを止めさせ、手でそれを握らせ、スコップとは穴を掘るものと分からせるために地面に向かって指示を出す。

 しかし、最初はその意味さえも分からず、頭の上にのせて遊んでみたり、その場で剣のように振り回したり、地面に一突きしてその場を離れたり、しまいには飽きてきて興味を示さなくなり、スコップを放り投げて無視するなどの行為をとる。


 ここで『何で無視するの、命令をちゃんと聞いてよ?』としつこくバードで指示を続けるとジョゼットが怒ってしまい、『どうしてこんな無意味なことさせるの』と逆ギレしたりもする。

 そうなると最早、手に終えず、スコップには興味を示さなくなるが、ギジンの大好物であるプリンを食べさせることで機嫌が良くなり、再び命令を聞くようになる。


 だが、このプリンのやり過ぎも良くない。

 味をしめたジョゼットが指示された道具を放り投げて無視するとプリンをくれると認識して、わざと指示を聞かない場合もあるからだ。


 しつけだからと頑なに教育しても、物で釣って嫌なことを真っ向から指示するのは良くない。

 いくらギジンと言えど、人間と同じような人工人格を持った一人の少女。

 何事も程ほどなさじ加減にということを教えてくれる。


 ──ジョゼットに指示を重ね、色々と行動を共にしていると色々な感情が生まれ、顔の分からないプレイヤーに好意を示したり、女の子らしい行動もとってきたりもする。

 だが、時には心に刺さりそうなキツい言葉も投げかけてきて、正当なことをして褒めていることに反抗して、『いい人ぶらないでよね!』と怒ってきたりもする。


 ラストはこんなほのぼのとした生活を覆す感動的な展開となっており、このエンディング見たさに最終イベントをセーブ(セーブには専用のパックが必要)しているプレイヤーも多い。

 涙ながらにハンカチは必須である。


 その後、このシリーズは大反響となり、リメイクや続編を望む声も大いに上がったが、一部の機種しかプレイできない携帯版での移植のみとなり、その後の続編も販売されてない。


 ──内容は育成モードとダンジョンを攻略するストーリーモードの二部構成となっており、一本筋のクリア型で飽きやすかったスーファミからの失敗点を踏まえ、やり込み要素や自由度が大幅に上がり、色々と改善された作品で前作と同じく名作と呼べるゲームともなったが、ゲーム自体は売り上げが伸び悩んだゲームでもあった。


 その理由としてテレビのCMが影響していたらしく、謎の女の子の声を聞いた若い男性が彼女とのデートをすっぽかし、暗い部屋で声の主はジョゼットだったという真実に気づき、このゲームをプレイしながら、ジョゼットがキスをしてきたら、自分もテレビ画面に唇を重ねるという衝撃的な内容だった。

 このCMの影響で、このゲームはギャルゲー(美少女ゲーム)の一種という認識が高まり、売れ行きが良くなかったのではという意見が出ている。


 どうプレイして捉えてみても恋愛要素はなく、ギャルゲーではない育成ゲームなのだが……第二部のモードではトラウマになりそうな事故もあるし、考えるほどに謎である。


 これ以降に続編がないのも、このCMが影響したのだろうか、全く新作の話が出てこない……。

 それに対しても誠に残念である。


 ──さて、私が楽しんできたNintendo64のゲームはこのゲームで最後となる。


 名作ばかりのNintendoハードと思いきや、前ハードのスーファミのようなハマれる多彩なゲームが少なく、子供っぽいソフトが多いと感じ、徐々にこの64から離れ、再びマニアックなサターンのソフトを楽しむようになったのだ。


 だが、64に触れて任天堂の良さに改めて気づき、サターンでSTGばかりしていた私の心に新たなゲームを教えてもくれた。

 この育成SLGもその一つでもあり、言うことを聞かないキャラを根気強く育成していくのも大変なことだと思い知らされたのだ。


 ワンダープロジョクトJ2。

 そのタイトル通り壮大な計画性を秘めたゲームでもあった。


 今はただ、この素敵なゲームとの出会いに感謝したい。

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