第16話 バイオハザード(ACT+ADV)

 プレステの発売から一年と少しして、今までのホラーゲームの常識を覆す恐怖のゲームが万を期してセガサターンに移植された。


 その名は今では有名なゲーム、バイオハザード。


 これまでロックマンやストリートファイターなどのアクションゲームを中心に製作をしていたCAPCOM(カプコン)が訳ありにより、新規メンバーで挑んだという未開拓のゲームでもあり、サターンに移植というのを耳にしたセガユーザーを心から喜ばした待望のゲームだった。


 元ネタはスプラッターホラー映画のスウィートホームからの題材で、この一作目は密室となった怪しい洋館を探索して、その閉じ込められた屋敷からの脱出を試みるサバイバルホラーな展開で、サバイバルアクションやサバイバルガンシューティングとも呼ばれている。


 ──このゲームはアンブレラという地下研究員が漏らした禁断の生物兵器に侵された洋館で、その生物兵器により、突然現れた生きる人間のしかばね、ゾンビという敵たちがプレイヤーの血肉を襲うという恐怖の内容で、場合によってはスタート直後でゲームオーバーになってしまう難しい難易度の作品である。


 ──初期の武器もベレッタという軽装な拳銃のみで弾薬も数発しかなく、全てのゾンビの相手をするわけにもいかずに逃げ回らないといけないが、通路の画面が切り替わる度に移動できる方向が変わる客観的視点のシステムで、ゾンビに囲まれてパニクる最中に移動方向を間違えて逆にやられてしまうなどと非常に取っつきにくい内容でもあった。


 また脱出をするには様々な罠やカラクリをクリアしないと先には進めない場所が多数あり、プレイヤーの頭を大いに悩ませた。


 そのせいか、発売当初は地に埋もれていた作品だったが、この難しい設定がスリル性が増して反対にリアルで面白いと評判になり、サターンに移植されても大人気のゲームとなった。

 またサターン版は幾つかの追加された要素があり、新しい敵の登場やバトルゲームというものが存在し、オリジナルの小説本も付いてくる。


 だが、サターン版は3D映像の表現がプレステより劣っていたため、キャラの絵柄や表現などが荒い作りとなっており、細かな映像が伝わらないのが惜しい。

 音質はサターンの方が上のため、それさえ気にならなければ文句なしに遊べる作品でもある。


 ──主人公は物語のスタートの警察手帳のイラスト画面で、男性警察官のクリスか、女性の警察官ジルのどちらかから選ぶことができ、クリスが上級者向け、ジルが初心者向けとなっている。


 しかし、ジルの方が簡単と思いきや、思いのほか、体力が少なく、銃の構えが遅い反面、クリスは体力が多く、敵も多めという内容となっており、どちらを選んでも初心者にとってはあまり変わらない。

 手持ちのアイテムが多く持てるジルの方がお得なようにも思えるが、どのみち敵の体力は変化しないので気休め程度だった。


 これがまたゲーマーの心に響いたのかは知らないが、ならば最初から銃を使わずにナイフ一本で立ち向かうという大胆かつ無茶な行動が雑誌などに取り上げられ、プレイヤーの間で一躍有名な攻略方法となった。


 ナイフでゾンビを一回だけ斬って、ゾンビの攻撃を辛うじて避けて、再び近づいてナイフで一回だけ斬って、再び避けるの繰り返し。

 初期のプレステやサターン移植版ではアイテムセレクト画面にすると、ゾンビの攻撃を初期化できるという芸当もあり、斬ってはアイテム画面、再び元の戦闘シーンに戻してナイフで追撃というヒット&ウエーい♪ なノリノリの荒業もできた。


 こうなればサバイバルというよりアクションみたいで、洋館の正義のヒーローになった気分だった……。

 まあ、慣れるまでは怖いだけだが……。


 ──基本、電灯などの照明もほとんどない薄暗い通路や部屋が多めで『ウー……』という耳に障る唸り声をあげながら近づいてくるゾンビたちに毎回ビビり、部屋から部屋へと抜けるのも精一杯だったチキンな私は拳銃を構えるだけでも大層怖がった記憶がある。

 慣れるまでは半端なく心臓に悪いゲームなので持病がある方は要注意である。


 そんなビビりな私を嘲笑うかのように、誰もいない通路を怯えながら進んでいると、いきなり窓を割ってゾンビ犬が突入してきたり、中盤からの前の行動が読めない強敵ハンターに苦しめられ、体力がない時は首を持っていかれて即死したりと、各所に様々な怖い仕掛けがあった。


 ──BGMもいつも鳴っているのではなく、無音の空間や、いかにもホラーらしい背筋が凍りそうな音楽が流れたりと音楽面でもバイオらしい要素が盛り込まれていた。


 ──セーブ方法も独特でインクリボンというアイテムを手に入れ、専用のタイプライターがある部屋で使わないとセーブが出来ないというシステムであり、いかにこのアイテムを使用せずにクリアするのかも攻略のカギでもあった。


 ──ラストはヘリポートで生物兵器のタイラント殿と戦うことになるのだが、どんな攻撃も物ともせず、ひたすら鋭く尖った爪を光らせてタックルしてくる姿には圧巻で、仲間の救助ヘリが落としてくれるロケットランチャーで攻撃しないと倒せない作りとなっている。


 それまでの制限時間は三分。 

 その巨体ゆえのタイラント殿は想像も出来ないほど機敏な動きをするため、呑気にカップ麺を作ってる暇もない。

 サターン版ではこのヘリポート以外でもこのやや大人しめな大いなる殿様と対決する場面がある。


 ──バイオハザードは実写映画にもなり、映画も大ヒットした。

 ゲーム内容とは違うサブキャラの女性キャラでゾンビのいる洋館を脱出する部分に、新たに格闘技の要素を埋め込み、肉弾戦でゾンビと戦う勇ましい場面は驚きの連続である。

 これらの映画はゲームと同様に何作に渡り続編も公開され、ゲームを知らなくてもバイオハザードという銘柄は多くの人が知る大作となった。


 ──バイオハザード。

 慣れるまではひたすら怖く、特定の条件を満たしてロケットランチャーを入手すると爽快感を生む作品。

 さらに実在する拳銃などのアイテムで発動を通じて、それ関係の知識も詳しく学べる作品。


 確かに恐ろしいゲームでもあるが良質な内容なので、ゲーマーならば誰もが通る作品ではないのだろうか? とつくづく思ってみたりもする今日この頃であった……。

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