第14話 サクラ大戦(ADV+SLG)

 時は日本、太正たいしょう十二年。

 帝国の海軍による士官学校を首席で卒業した主人公の大神一郎おおがみいちろうは知り合いの紹介で帝都の秘密部隊の帝国華撃団に任命され、現地に配属されることになる。


 ──花見客で賑わう桜舞い散る公園にて、花見がてらに街並みを見つめ、この帝都を守り抜くと気合いを込める大神。

 そこで彼は一人の少女、真宮寺しんぐうじさくらと出会う。 


 さくらは自身も勤めている華撃団から大神配属を支配人のめいに受け、自らが迎えに来たと挨拶をし、共に足を運ぶのだが、そこで待っていたのは撃団という呼び名でも、名ばかりの歌や踊りをする大帝国劇場の帝国歌劇団であり、大神は所属する花組の部屋掃除や劇場の切符切りと雑用ばかりの毎日を送るのであった……。

 

 そんな中、劇場内のブザーが赤く染まり、帝都に敵が出現したと警報が鳴り響く。


 するとそこで大神はさくらから、花組メンバー全員から大神の己としての器とやらを試されていたことを明かす。


 こうして大神は晴れて、大帝国劇場の裏の顔である帝国華撃団花組の一員となり、秘密裏で地下に眠っていた霊力で操る二足歩行の霊子甲冑、光武こうぶに乗り込み、敵の群れに戦いを挑むことになったのだった……。


 ──このゲームは、これまで硬派な作品ばかり発表してきたセガが新しく開発した、架空の太正時代をベースにしたドラマチックアドベンチャーゲームであり、後に音楽にドラマや劇場公演などにまでに拡がっていく、ゲームとアニメ映像を融合した新感覚の作品、サクラ大戦という代物である。


 ──ゲームシステムはヒロインと仲良くしながら信頼度を高めるアドベンチャーモード(以下略ADV)、その信頼度を活かして敵との戦闘を繰り広げるシミュレーションモード(以下略SLG)と二つのモードがクロスした独自のシステムとなっている。


 ADVパートでは基本立ち位置のキャラと会話をする普通の恋愛ゲームと変わらないが、時間制限のある選択肢『LIPS』というものがあり、その時の状況をリアルタイムに感じることができ、選択肢によってはヒロインの信頼度が変化し、その後のストーリーに影響することになる仕組みだ。


 また、ヒロインが喋る口元があいうえおの動きで微妙に変化し、実際のアニメのキャラと対話したような感覚になっており、全十章による物語の終わりには次回予告のアニメが流れ、ゲームというより、サクラ大戦というアニメらしさを追求した作風でもあった。


 それと引き換え、SLGパートでは硬派な作りとなっており、3D仕様のマップで簡単操作での攻撃、防御、移動などのコマンドを操作し、ターン性のシステムでターン終了で次の相手の行動へと繋がるが、このSLGパートも意外と骨のある内容で、単なるおまけのパートでは? となめてかかると痛い目に合う。


 セガの不屈の精神が生んだと言われたこのSLGパートもサクラ大戦というゲームの真骨頂でもあり、様々な戦略性を考えさせる内容となっている。

 私が久々にハマったSLGもこのサクラ大戦からだった。


 また、ダメージや溜めにより気合いゲージが満タンになると必殺技が使用できるのだが、CGを駆使したリアルなメカによる迫力のある技の発動はプレイヤーを圧巻させた。

 これは敵のボスキャラも同じ原理である。


 私も大神になりきり、二つのヘラを手にして『狼虎滅却ろうこめっきゃく解凍餃子かいとうギョーザ』と言いながらフライパンを振るっていた頃を思い出す。

(餃子なのに、どうやって振るうんだ?)


 ちなみに回数限定による大神独自のコマンド『かばう』では庇ったヒロインと大神のダメージを無効化し、さらにそのヒロインの信頼度を上げる効果があった。

 緊迫した戦闘時に『ピンピロリーン~♪』と場違いな信頼度アップのメロディーが流れていた情景に懐かしみを感じる……。


 ──物語が佳境に入ると信頼度が一番高いメンバーの展開となり、さらには激しい戦いへと身をゆだねていく。


 そして今までの鎧武者とは違い、新たな魔獣のような敵を前にして満身創痍で立ち向かう大神たちであったが、そこで光武は敵の驚異な攻撃により、修復不可能のダメージを追い、その役目を終えてしまう。


 もうこの帝都は誰にも救えないのか……。

 そんな絶望に浸っていた時、新たなる光武が完成。

 名は神武じんぶとなり、新たなる敵と互角に渡り合えるように──。


 その後、大神たちはこの機体を駆使し、敵の魔の手に落ちようとする帝都を死力を尽くして守ることを決意したのだった……。


 ──このゲームにはオマケのミニゲームも沢山あり、ゲームをクリアするといつでも遊べるゲームとして選べるようになる。

 中でも花札を使ってコンピューターと遊ぶこいこい対戦は別個のボードゲームのような感覚を味わえ、ヒロインとの勝ち抜きによる新次元の戦いに挑むことが出来た。


 ──なお、全ヒロインのイベントをクリアすると、SLGパートでの難易度が極端に上がる。 

 これまで信頼度でカバーしていたヒロインの攻防は一切無くなり、全クリアまで信頼度を完全に無視した初期能力の状態で戦いに挑むことになるからだ。 

 その弱々しい状態で進むにつれ、サクラ大戦の真の恐ろしさを知ることになるだろう……。


 ──サクラ大戦といえば歌謡曲のような音楽も魅力的だ。


 架空の時代、太正ということで、その時代の風景に合わせ、日本で馴染みあるJPOPばかりの音楽の世界観をひっくり返し、誰にでも親しみやすいゆったりとした昭和な歌謡曲にジャズや、ラテン系を混ぜたメロディーが主流となっている。


 ゲーム内のアニメの主題歌で流れた『激! 帝国華撃団』はゲーマーにとって言わずと知れた名曲となるが、個人的には熱い恋の駆け引きを描いたデュエット『愛ゆえに』やメンバー全員で歌うバラードなエンディング曲『花咲く乙女』も大好物である。


 サクラ大戦はゲームだけではなく音楽も大ヒットし、ミュージカルにもなり、今や人気のバンドリなど、様々な業界がカバーするような素敵な環境にも恵まれたのだ。


 だが、これだけ豊かな楽曲に恵まれても音楽のベスト版のリリースというものは中々なく、あったとしても現在ではやたらと高値。

 さらにケースがレコードの束のようなサイズで大きすぎて収納に困るという難点も発生。

 BGMも名曲ぞろいだが、こちらはベスト版すらもなく、音楽が好きで環境が整っているのならデジタル配信を狙うという点もある。


 ──サクラ大戦、これだけ人気に火がついた作品なのだが、発売元がキャラを売りにしていたセガならではであり、主にセガの機種を所持してないと遊べないという矛盾点もあった。 

 現にプレステに移植された本作はSLGパートなどで細かな変更点などがあり、セガ機種で遊んでいたユーザーを裏切る形となったのだ……。


 ──キャラがフルボイスではない、ADVモードでいつでもセーブできないという細かな悩みもあったゲームだったが、ゲームとしての完成度は高く、セガの代表するゲームの一つとして選ばれるようになったサクラ大戦。


 平成の世に出て、ゲーマーの心を大神と変え、太正桜で埋め尽くしたこの元祖サクラ大戦は発売から何十年が過ぎても愛され続ける良作なサクラ大戦となった。


 この大人気作となったゲームはどこまで走り続けるのだろうか……。


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