第11話 不思議のダンジョン2 風来のシレン(RPG)

 今となってはお馴染みの1000回遊べるダンジョン探索形RPGというのが売りで、ドラクエ、FF、テイルズと並ぶ大人気ゲームシリーズ。

 弟切草、かまいたちの夜などのノベルゲームを開発していた合併前のチュンソフトが最後に開発した作品で、前作に発売したドラクエ4のキャラが主役のトルネコの大冒険の続編である。


 構成はトルネコの大冒険とほとんど替わらない。

 ダンジョン内を一歩動けばモンスターも一歩移動し、失った体力は歩く度に少しずつ回復し、それに置き換えて減る満腹度はおにぎりなどの食料を食べることで回復できる。


 またトルネコ同様、ダンジョンの地面には様々なアイテムが落とされていて、それらのアイテムを強化させながら進めていく育成要素もあり、今作品では色んな能力を秘めたツボが初登場。

 合成や分裂、強化などの種類があり、ツボにアイテムを入れることによって、より強力な武防具や道具を作ることができた。


 ──キャラクターも齢11というシレンというオリジナルキャラになり、伝説の黄金の鳥という存在を求めて、村の外に繋がっている山へと冒険を始まる所からスタートする。

 そこで出会ったダンジョンの案内で入る度に部屋の構造が変わる世にも奇妙な不思議のダンジョンに挑むことになるのだが……、


 ……ここでハッキリと言おう。

 この風来シレンの攻略の難易度は他のRPG よりずば抜けて高い。

 一階ごとに時間制限のあるダンジョンに入って最弱なレベル1からのスタートになるが、突然のモンスターに襲われて即やられたり、地面に仕掛けられた罠のトラップにはめられてそれの延長戦でやられたりと、レベルを上げて、いくら注意して進んでも、このような理不尽な点でのゲームオーバーが多い。


 それに入る度にダンジョンの構造も変化するので攻略記事もあまり役に立たない。

 今までの冒険もののゲームとは違い、勘と運の要素も試されるゲームでもあるのだ。


 そしてダンジョンからダウンして村で目を覚ますと、これまで持っていたアイテムなどは全て綺麗に無くなって、レベル1からの始まりとなり、『もうやってられるかー!!』と文句を言いながら、そのダンジョンに新たに立ち向かう。


 そんな『例え命を失い、全てを無くしたとしても、そこにダンジョンがあるから下り続ける』という登山家のような不屈の精神をもたされ、どんな方法でやられたとしても諦めない、己のメンタルをも試されるゲームでもある。


 ──ダンジョン内で部屋に武器やアイテムなど並べて商品を取り扱うふくよかな店主が経営するアウトドアなよろず屋さんの店も新しく登場した。

 商品を手にすると店主は出口を封鎖するが、きちんとお金を払えば道を開けてくれる。


 だが、ここで何かしらの手でそれらのアイテムを盗み出すと泥棒扱いになり、ダンジョン内に沢山の警官隊と警察犬がシレンの下に速攻でやって来る。

 シレンとは違い、体力もあり、守りも鉛のように固いので強行突破も無理である。

 さらに二倍速で驚異なパワーを持って二回連続攻撃で来るため、泥棒して、そのダンジョンからトンズラできるかは持ち物のアイテムと運に頼るしかない。

 盗むにするも何にせよ、ギャンブル性の高いシステムである。


 ──ダンジョンに出てくるモンスターも多彩で個性的だ。

 シレンと同じくモンスターもレベルが上がるシステムとなっており、三段階の形態となり、より強力な攻撃方法に変化できた。

 普通はレベルは上がらないのだが、仲間のモンスターを誤って倒してレベルアップする点も少なくなく、特に遠方から攻撃できるオヤジ戦車には頭を悩ませた。


 ──トルネコと同じく、とあるダンジョンに入ったらモンスターの数十体の集団に囲まれるモンスターハウスというものがあるが、そこでそのオヤジ戦車がいると、そのオヤジ戦車がシレンに向かって攻撃をしたつもりが、他のモンスターが巻き添えを食らい、あっという間に最高クラスまでのイッテツ戦車にレベルアップ。

 二倍速に二回連続攻撃、一度に八方向の攻撃範囲による破天荒な鬼の攻撃となると、そこで私(シレン)の人生が終わった感はあった……。


 しかもモンスターハウスにも特殊なハウスというものが存在し、力任せのパワーハウス、金銭や道具をシレンから盗むぬすっとハウス、状態異常をかけてくるドレインハウス、壁などをすり抜けて攻撃するぼうれいハウスなどもある。

 どれも主人公のレベルが低い時は驚異の集団であったが……。


 その分、倒せば経験値も稼げ、モンスターハウスには貴重なアイテムなども沢山あるためメリットもあるが、特殊ハウスとなると、シレンの三倍のレベルによるモンスターだらけなので、まともに相手をするのは無謀である。

 普段は敵と一対一の戦いなので、部屋に飛び込んで『モンスターハウスだ!』などとナレーションが叫ぶ度に緊張感が増した。


 また、モンスターを特殊な武器で倒し、手に入れた肉を食すことでそのモンスターになりきることができた。

 特にカラクロイドというモンスターの肉がお気に入りで自身でダンジョンの床に罠を仕掛け、そのトラップにモンスターをはめるのに高揚感を覚えたほどである。


 ──シレンは音楽もクラシカルな民族音楽調で良かった。

 ダンジョンを下るうちに音楽が微妙にアレンジされていき、BGMが川のせせらぎや風の吹く音などという部分もあり、落ち着いてプレイすることができた。

 それもそのはず、あのドラクエの作曲家すぎやまこういち氏が手がけた曲もあるからだ。


 しかし、名曲揃いなのに現時点でも再版の知らせはほとんどなく、このシレンのサントラは今では入手困難となっている。


 ──やがて伝説の光輝く剣と伝説の頑丈な盾を手に入れ、このゲームを散々遊び尽くした後、トルネコの大冒険とチョコボの大冒険というものをプレイしてみたのだが、ゲームオーバーになってもレベルやアイテムはそのままなどという生易しい部分もあり、シレンで慣れた自分にとってはやり込みのあるゲーム性は感じられなかった。


 その後も風来のシレンシリーズはそのまま新作を出し続けるが、私が隅々までプレイした不思議のダンジョンシリーズはこのスーファミのシレン止まりとなった。


 風来のシレン、時代は変われど、このゲームは今プレイしても色褪せない名作の一つであると私は思う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る