第10話 クロノトリガー(RPG)

 スクウェア待望の新作RPGと歌われたこのゲームは後にゲーム界の存在を日焼け止めのように塗り替えることになる。


 人気作品ドラゴンボールの原作者によって描かれたキャラも魅了されたクロノトリガーがついに平成の世へとマグロ漁のごとく解禁されたのだった。


 主人公のクロノは千年祭という大きな祭りがある街に幼馴染みのルッカと共に出かけることになったが、その祭りで王族の王女であるマールと出会い、気が合った二人で一緒にこの祭りを楽しむことにした。


 ……いや、待て、ルッカとははぐれたのか? というツッコミが下るかも知れないが、何年も経った忘却の記憶を呼び覚ませているだけでも奇跡に近いので、そこは勘弁して欲しい。


 そんな矢先、ある時空移動が出来る二つのマシンの体験型交流会に触れ、そのマシンを肌で体験したのもつかの間、クロノとマールは不慮の事故で単なる物体移動ではなく、本物の時空移動を体験することとなる。


 やがてルッカが任意的に時空移動が可能になる発明をし、原始、古代に中世、現代に未来とワープを繰り返すが、未来という時代が荒廃した世界である灰の世界となっており、後にクロノたちはラヴォスという別の星の生命体からこの世界を滅ぼされるという衝撃の事実を目の当たりにする。 


 ……という重厚な物語なのだが、キャラクターもインパクトのあるキャラばかりだ。

 魔王にカエルにされた英雄カエル、未来の基地で眠っていたロボ、原始で狩りに勤しんでいたエイラ、そして終盤に仲間に入る魔王。


 戦闘時のパーティーは三人制だが、コマンドから表記内容までファイナルファンタジーと極時しており、ゲームにあまり詳しくなければ新しい形のFFシリーズと思わせる作りでもあった。

 ただ、モンスターと遭遇すると、その場で切り替わらずに戦闘になったり、戦闘中に二人、三人の行動の組み合わせで合体技が出来たりという面白いシステムが満載でもあり、このゲームは単調なレベル上げという戦闘でのイメージを覆し、敵とバトルすることの楽しさを教えてくれた作品でもある。


 三人パーティーで私のお気に入りはクロノ、カエル、マールだった。

 攻撃力のある二人に回復魔法が使えるマールがいて、万能的なメンバー構成だった。


 余談だが攻撃力重視ならクロノ、エイラ、ロボであり三人の合体技で最強のダメージを与えることもできる。


 また各ボスとの戦闘に戦術性が求められ、ただ闇雲に攻撃しても逆に大きな反撃を食らい、苦戦を強いられるようになっていた。

 例えば一つのボスとの本体とは別に右腕や左腕があった場合、右腕から倒して左腕を魔法のみで攻めて、ようやく本体を攻撃するという面倒なことをしないといけなかった。


 当時の私は攻略記事がなければ、最初のボス、ドラゴン戦車もどきすらも倒せない程の難しさであった。

 ルッカと二人だけという編成も厳しかったが……。


 さらに前半のラスボスと言われる中世の魔王戦にも苦しめられた。

 どう注意して戦っても、体力が残り少ない魔王からの魔法、ダークマターを使われると必ず全滅し、ゲームオーバーになってしまうのだ。

 攻略記事の通りに進めてきて、ここでつまずいた私だったが、後に単にレベルが足りなかったということを思い知らされた。


 ラスボスのラヴォスの攻略方法も難しい。

 ウニのような外殻から相手をして、それを倒して中に潜り込み、第二形態、第三と相手をしなければならなく、レベルをそれなりに上げても、攻略をきちんとしないと、第三形態の『こんにちは宇宙人さん』は半端なく強い。

 レベルを上げて何も考えずにごり押しで勝てるのはざらで、今まで遊んできたRPGのラスボスとは格が違った味わいだった。


 このゲームは一度ゲームをクリアすると、レベルなどが引き継がれて初めからゲームが楽しめる『つよくてニューゲーム』というおまけがある。

 つよくて~のシステムとして、ラスボスのラヴォスとの戦いで倒した時代の流れとパーティー編成によってエンディングが変わるマルチエンディングというシステムが売りに出されていた。

 その気になればクロノ一人のみでラヴォスを倒すことも可能である。


 何十回もゲームを全クリアしたせいか、今でもBGMも耳に残っている。

 サントラも何度も発売したが、この完璧な耳コピがあるため、とうとう買わず仕舞いでここにいる私。

 アレンジアルバムとかもあるが、中途半端な楽曲と噂され、ビビって自室で人体模型のようにカタカタと震えるという日々を繰り返した……。


 スーファミから誕生して数年後、このゲームはプレステに移植され、戦闘シーンの必殺技やイベント時にはアニメが流れる形になったが、私のゲーム時代はすでにスーファミから離れて、セガにハマってサターン世代になっており、このゲームが移植されたということにも気付かなかった。


 サターンの売れ行きが悪くて製造中止になり、仕方なくプレステを購入し、偶然手にした続編クロノクロスという物があったが、さらなる戦略が問われるクセのある戦闘シーンとなっており、一回クリアしただけでお蔵入りにした覚えがある。

 当時のプレステ最高峰の映像であると歌われていた続編だけにがっかりであった。


 人によってはクロスはクロノの正統派続編で面白い作品と評価されていたが、戦闘中一回しか同じ技や魔法が使えない? のはどうかと思う。

 近年にリメイクされたクロノクロスはどうかは分からないが……。


 ちなみにクロスとは違い、このゲームの3Dリメイク版は発売していない。

 ゲーム登場時の当初、とある人物がリメイク版を製作していた時期もあったらしいが、スクウェア側から反発の声が上がり、急遽製作を中断させたという苦いエピソードがある。


 クロノシリーズ、内容が独特のせいか、3作品目は登場していないが、二作だけで異例の550万本の売り上げを取った名作として受け継がれている。


 平成の時代で一番面白いゲームの冠が付いたこの名作は今でもどこかで遊ばれているに違いない。

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