第9話 テイルズオブファンタジア(RPG)

 このゲームは発売日前から『スーファミ過去最高峰による大容量のゲーム』と大きく告知され、ゲーマーの心をガツンと鷲掴みにし、今ではゲームに触れた方なら誰でも知っている作品でもある。


 後にドラクエ、FFに続く大人気RPGシリーズ作へとなるナムコというお国柄から出陣したRPG、テイルズシリーズ。

 待望の一作目による、このファンタジアは新しい年を迎える正月前にて、その産声を上げ、爆発的な売り上げを記録した。


 ──今までのRPGにはなかった二頭身での2D格闘ゲームみたいな敵とのバトルステージ。

 そこで簡単なワンプッシュなボタンにて、アクション動作で敵を倒すスタイル、リアルモーションバトルシステムにも驚いたが、何より戦闘中のキャラが九官鳥のようによく喋るのも今までのRPGにはなかった。

 キャラは喋って当然の如くに声を発し、当時の人気声優陣による声の吹き込み方も見事で隅々まで豪勢な作りだったのだ。


 またオープニングでは主題歌が流れるというスーファミの限界を越えたような作品であり、今までのピコピコ音のBGM流というゲームのイメージをことごとく良い意味で裏切ってくれた。

 最早、ゲームというよりアニメのイメージが強かったのだ。


 ──ソフトの価格も当時のスーファミの中では断トツの諭吉と漱石使用という高価な値段で販売され、貰ったお年玉の半分ほどを利用して購入したイタいゲーム。

 それなりに出費に悩まされはしたが、いつになっても色褪せない最高のRPGであったと今でも断言できる。


 ──物語構成もドラマ性があり、よく出来ていた。

 白馬の王子様的なイカした剣士でもある主人公クレスの故郷が何者かにより滅ぼされ、親友の弓使いであるチェスターと犯人を捜し、思うがままに復讐することを二人で誓うのだが、ひょんなことからクレスにある疑惑がかかり、地下牢に閉じ込められるドン底の始まりは多くのゲーマーの想いを打ち砕いた。


 癒しの魔法を使うミント、精霊を操るクラース、攻撃魔法使いのアーチェなど登場キャラにも個性があり、各キャラによる会話のシーンや、体力回復の料理スキルが作れたりするなど、各所にこだわりがある内容も話題だった。

 おでんカレーや麻婆カレーが流行り出したのもこの作品の影響かも知れない。


 ──クレス率いるパーティーは敵キャラのラスボス、ダオスを倒すために過去に未来と色んな時空を行き来するのであったが、ダオスの破天荒なワガママぶりに呆れ返り、これゲームだから許される行為だよね、テロリストも顔負けだよねと思いながらゲームをプレイしていたことを思い出す。

 こんな戦争ごっこが好きなラスボスでいいんですかあー!?

(元ゲーマーの心の声)


 なぜかスーファミ版のクレスのとある必殺技がどう聞いてもケ○シロウの『アタタ!』にしか聞こえなくて、クレスも北○真剣を極めたかったのだなと感じていた時もあった。

 それ以降の移植作品ではきちんと技名を言っているからにギリギリまで容量を使いきった反動かな? と思わせてくれた。


 ──クレスとミント、チェスターとアーチェの二組の仲が友達から恋仲になっていく要素も魅力的で、最終決戦に近い場所で告白に近い体験を味わせてくれた。

 これはこれで青春だなあと思う。


 クラースにはすでに想い人がいたので、そのような場面はなく、恋愛指南書という名の分厚い辞書を片手に想いに更ける毎日であったが……。


 ──このゲームは超長いボリュームの大作RPGでもありながら、スーファミ、さらにプレステを含め、何度も全クリアを積み重ねてきたのだが、今遊んでみてもあまり古臭さがない。

 バトルシーンもやりがいがあり、難易度の調整がいつでも選択でき、鬼教官のような敵の攻撃に挑戦することも可能だった。


 あの闘技場の隙を見せれば一方的にボコボコにやられるボスに勝つ方法を教えて欲しいくらいだ。


 ただ、スーファミ版は敵遭遇のエンカウント率が非常に高く、秒ごとに戦闘に突入を余儀なくされ、これでは逆にストレスになって、楽しめないとゲーマーからの苦情が相次いだ。

 そのせいかプレステ版では、ある程度モンスターとの遭遇率を下げた状態にしている。


 ──ゲームクリア後もそのままゲームを楽しむことができ、未クリアでは進めなかった何層もある深きダンジョンに潜ることができた。

 そこで更なる強敵ノソノソ芋虫に挑んで、触れただけで魂を持っていかれたり、最高クラスの装備品などを入手することもできたりと、色々と遊び心が満載だったせいもあったからだろうか……ファンタジアはとにかくやり尽くした感はある。


 その後、シリーズ二作目のデスティニー、三作目のエターニアなどとシリーズを堪能してきた私だったが、シンフォニア辺りになり、フィールド移動やバトル表現が3Dに変化した時点で私の中の発想が段々と変わり出す。


 ああ、もうこれアニメみたいなスタイルを通してきたテイルズじゃないや、売れ線のメジャーの道を進んだ展開だ、もういいや、お腹一杯と……。


 ……というわけでシンフォニアを中途半端に投げ出し、折角購入したハードごと、シンフォニアのソフトを買い取ってもらった。


 もうゲームは手元には無いが、テイルズオブファンタジア一作目がシリーズ最強作だったという概念は今になっても捨てきれないままである。

 ゲーマーを辞めて幾ばくか過ぎ、三頭身のキャラになり、テキストがフルボイスとなったファンタジアの完全版は未プレイのままでもあった……。


 ちなみに当初はきちんと全曲を収録したサントラは発売せず、BGMが聴きたいのならゲーム内のサウンドコーナーで聴きなさいという変わった感性だった。

 当然、ゲーム内の音源なので音質は最悪でノイズ混じりの暴力的サウンドを聴かされるはめになったが……。


 その後に20周年記念としてサントラBOXが発売したが、内容も音質が良いだけであり、大いに批判される結果となった。

 ゲームが良いだけに誠に残念な内容である……。


 ああ、今も頭に思い浮かぶ。

 クレスが時間を越えるために初めて時空剣を手にしたあの時を……。

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