第6話 サンダースピリッツ(STG)

 すでにご存じの方はいるかも知れないが、過去にこのエッセイの第2話で、私がスーファミのRーTYPEから横スクロール型の2DSTGにハマったことを綴ったことを覚えているだろうか……。


 あれからRーTYPEを遊び尽くして数ヵ月後、バイト代を握りしめて近所のゲーム販売店に寄ると、店内に飾られていた色とりどりの箱の中で、一際格好いいRPGのようなデザインの絵柄が目に入った。

 これが私とサンダースピリッツというゲームの出会いである。


 ──このゲームタイトルではサンダースピリッツの表記となっているが、本家はメガドライブからの移植作のサンダーフォースⅢのスーファミ版であり、スーファミならではのオリジナルのステージとかも楽しめた。


 ……と元ゲーマーの血が騒ぎ、熱く鼓舞しながら言いたい所だが、当時はサンダーフォースの名前すら知らず、箱の裏のパッケージを見ながら、これなら美味しいカレー(プレイ)が出来そうだとランランご乱心な気分で買って、エンディング映像のサザエさんのようにスキップしながら家の玄関をまたいだ記憶がある。


 ──今回も中古での購入だったが、箱も傷みはなく、ご丁寧に取説も付いていたので、このゲームのシステムをよく噛み砕いて消化した。

 口から食べるではなく、脳に直接読み聞かせをしたのだ。


 ──自機はパワーアップアイテムを取ることで攻撃できる方法がいつでも変えられ、前方に強力なレーザーが放てたり、後方がメインの攻撃、さらに敵や壁をすり抜けての超音波攻撃や、敵を追尾する球状の攻撃などと多彩な攻撃方法が可能である。

 また補助機能としてのオプションの自機の周りを回転するクローというアイテムが非常に役立ち、攻撃の強化や敵のノーマル攻撃をガードしてくれるありがたやーな効果があった。


 このゲームはこれらの武器を上手く使い分けていかないと攻略が難しく、実際に戦闘機で戦っているような戦術性が求められた。

 さらに大まかだが、機体の移動スピードも自由に調整できる。  


 だが、このゲームも一筋縄ではいかなかった。

 内容は難しかったが、基本ゆったりとした速度で近付いて、敵玉のスピードが速めなRーTYPEとは違い、高速で迫り来るモンスターがこれまた高速の攻撃を仕掛けてくる状況。


 しかも敵の装甲も固く、二、三発攻撃を当ててもビクともしない。

 それに加えて機体の当たり判定も大きく、少し敵弾がかすっただけでも粉砕されてしまう。


 RーTYPEとは違い、その場でラーメンの替え玉のように瞬時に復活出来るのはゲーム初心者にとって、少しでもステージが進めてやり易いのだが、攻撃をしていた時に使っていたアイテムを失ってしまうので逆に攻略が難しくなる。


 壊されてもノーマルショットの前方と後方攻撃のみが残るので、他のアイテムの装備を守るために、基本はこのノーマルショットの二点セットで進めていくという手法で私は何とかお茶碗と箸のように使い分けた。

 まあ、ノーマルモードしか、この手は使えないが……。


 ──スタート地点の森のステージから圧倒的で緻密な画質の良さに驚いた。

 これがサンダーフォースというファンタジーに溢れた世界観。

 スーファミなしからぬ、メガドラっぽい表現の色による配置に当時の私は息を飲んだ。


 大きなハチがこれまた大きなミサイルを持って突っ込んできたり、最後の締めくくりに巨大なドラゴンみたいなボスが登場したりと、これまたファンタジー色まっしぐらな敵キャラたち。


 ステージ1のラストに登場し、ドラゴンな見た目なガーゴイルが吐く巨大なキャンプファイアーな炎のうねりは、ゲーム初心者の私を調理に失敗した目玉焼きのようにとことん黒焦げにさせた。 


 このボスの動きに慣れずに苦戦をしていた私だったが、慣れとは怖いもの。

 その炎を高速で悠々と避け、ノーマルショットからパワーアップしたレーザー光線をガンガン浴びせていた私は期待のルーキーでも(ただのオタクじゃん)あった。


 そして、次の炎の星で待ち受けていたのは炎で出来た鳥の群れに、下の溶岩から迫り来る岩の固まり。

 その問答無用の攻防に、いきなりゲームのスクロールが速くなる。

 これがサンダーフォースで定番の『高速スクロール』というオツな展開である。


 速度が速い上に相手の攻撃も激しさを増し、これが噂の昼ピークというヤツかと思わせながら、儚く散っていく自分の戦闘機がいた……ああ、無念……。


 ──さて、このゲームはサンダーフォースⅢをベースにしたゲームということは伝えたが、このゲームはオリジナルよりステージ構成がちょっと長い。

 

 色々な星を旅して最終的には百年間に渡りドンパチをしてきた敵のオーン帝国のラスボスが眠る戦艦に乗り込むのだが、正直、短時間で気楽に遊べるゲームでもない。 


 ステージを進むうちに障害物の量も増え、避けることも計算しないと中々進めなくなる展開にもなってくる。   


 敵の出撃が急なのも大変だが、水の中では浮力の泡で機体が少し浮いたり、何の合図もなく逆スクロールになって狭い場所を細かく移動したりと、完全な覚えゲーでもあるため、慣れるまでは色々とハラハラな気分にさせられた。


 だが、販売元が産みの親のテクノソフトというメーカーからではなく、別の会社からの発売だったため、このサンダースピリッツは売り上げがあまり伸びないソフトでもあった。

 今さらながら、道理で店内の見える位置に堂々と並べていたのが分かる気がする。


 音楽もサウンドは素晴らしいセンスだったがスーファミの音源から流れてくるのはファミコン並みのピコピコ音。

 しかもそのサウンドを良質な音にしてのスピリッツ明記によるサントラの発売も無しときたものだ……。


 てやんでい、気になるならメガドラ版のサンダーフォースⅢを楽しんでくれい! ということだろうか。


 そうやって色んな問題も抱えていたが、ゲーム内容は完成度の高いⅢからの存在であり、良質な作品だけのことだけあって、別の意味でゲーマーの間で伝説のゲームとなった。


 しかし、メーカー側の大人の事情か、メガドラなどに、この作品が移植さえすることもなく、サンダースピリッツはスーファミオンリーでこの生涯を閉じた。


 余談だが、とある格闘ゲームと勘違いされそうなタイトルでもあるサンダースピリッツ。

 ゲーマーの批判は多いようだが、今思い出してもお気に入りのSTGの一つでもある。  

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