第3話 ストリートファイターⅡダッシュ+(格闘ACT )
「うおおー、そこだ、ビリビリ攻撃でやったれ!」
「いけー、ガードしてもゲージを削れる波動拳を撃ち放て!」
相手の激しい攻撃を全てガードして、時間ギリギリまでの熱い戦いをし、残りの体力ゲージの量で勝敗が決まる、今でいうと『何ですか、このアマチュアなのにプロゲーマ顔負けの子供たちは!? 神からの使者ですか?』と思っていた私にとって懐かしき時代。
今とは違い、友達が沢山いた私の周囲は常に光り輝いた世界で溢れていた。
友達とよく通っていた近所の駄菓子屋の出入り口に設置されたアーケードゲームの機体には某有名格闘ゲームが移植されていたのだ。
そのゲーム機体は対戦型の仕様にもなっており、さらにもう一台も置かれ、二台とも対戦者が見えない離れた場所に設置してあり、そのお陰か、常に緊迫した戦いが楽しめた。
後にスーファミでも発売され、ゲームの輪に入れなかった内気なキッズたちや、職務の休日を有効利用したいサラリーマンなど、格ゲーファンならぬ、世の中のゲーマーを鷲掴みにし、空前のヒットの話題作にもなったストリートファイターⅡ(タイトルが長いので以下略SFⅡ)の登場である。
当時は駄菓子屋にもアーケードゲームが置いてあった時代でもあり、菓子を買うついでにワンコインのゲームで遊ぶというスタイルが主流だった。
元を取るためにゲームの難易度は高めだったが……。
子供ながら漫画やゲームが好きだった私にはこの共通の話で盛り上がり、休日などは友達の家に遊びに行って家や外でゲームをするという生活をしていた。
だけどそんな関係は長くは続かなかった。
年齢層が上がるにつれて、ゲームは子供が遊ぶ物と認識され、世の中にはギャンブルやツーリング、グルメ、旅行などと、もっと大人的な遊びが色々とあるという、いわゆるゲーム離れの友達が増え、私の側から一人一人とゲーム仲間は去っていき、気づけば数人ほどの友達だけになっていった。
こうしてSFⅡとの出会いは外のアーケードからの情報からが発信源だったが、私がこのゲームがスーファミで発売されることを知ったのはこのソフトが発売されて数年後だった。
その頃には柔らかいソフトどころか、固く凝り固まった肩こりの状態になってしまう。
私の見かけは子供の体格と変わらず、頭脳も固い子供のままだった。
『はい、ママボトル一本追加』とジュースをボトルキープしたい気分だった。
話を戻すが、スーファミではターボ+という当初は意味不明なタイトルが付き、四天王というボスキャラが使用できたり、キャラの移動速度が変えられて、ある裏技で最速にすると超戦士同士が戦う、目にも止まらない速さの試合が展開されて思わず逝った。
恐らくターボとは、このようなターボエンジンのスペックの所から付けたかったのだろう。
日頃、カッコつけている貴金属を付けまくりなチャラなヤツが、これまた痺れるタイトルを後付けして、更なる爆儲けしたいと思って名付けたのか……いや、速すぎて目で追えません。
ある名人のように己の肉体を捨てて、神のボタン連打技を覚えるため、まずは人間離れしないと、まず追い付くのは無理なスピードです。
──舞台は二次元によるアニメのような絵柄な格ゲーだが、この格ゲーが格闘ゲームシーンの伝説を塗り替えたソフトでもあり、これを機会に色んな格ゲーが世に出回っていった。
私もバイトの厳しい現実から癒しを求め、すっかりスーファミのソフトの虜になり、このSFⅡが家で遊べることを知って、店で中古でゲットし、狂喜乱舞しながら家路へと急いだ記憶がうっすらとある。
もうあの頃の記憶がほとんど思い出せず、友達だった子の顔も名前も忘れてしまい……。
長らく人と接しないと、こうなってしまう私は若年性痴ほう症なのだろうか?
──ゲーム友達もめっきりと減り、家でのゲーム生活が主流になってきた私は多数のキャラが選べる中で、このゲームの主役でもあるリュウという一人の男でステージを進めていた。
格闘家の白い服装をした彼を選んだ理由としては技を繰り出すコマンド入力が比較的簡単な所だろう。
徐々に敵の懐に飛び込んで必殺技を放つというスタイルが確定されていった。
また、ゲーセンの大雑把なレバー(レバニラ炒め?)操作と家庭機種の細かなコントローラーの作りは両機とも恐ろしいほどにかけ離れていて、両方のコマンド入力を器用に操作できる相手は私の知る限りではほとんどいなかった。
ゲーセンで慣れている相手は家のゲーム機でもレバーの付いたコントローラーを別に購入し、心の洗車のように密かに腕を磨いていたのだ。
道理でゲーセンでやたらと強いわけである。
このゲームをゲーセンで遊んでいたら途中で乱入されてボコボコにされてそのゲームの主導権は向こうに渡るのがしょっちゅうだった。
ある時、静かにその場を離れず、どんな人なんだろうと好奇心で向かい際の対戦相手を覗きこむと、いかにもゲーマーやってます的な分厚い眼鏡をかけたおじさんだった。
今頃、そのおじさんはどこで何をしているのでしょうね。
渡米でもしてSFⅡの研究でもしているのでしょうか?
春麗のスピニングバードキックの再現は本当にリアルで実現可能なのかなどと……。
ちなみにキャラの中で一番安定した強さを持ったのは元軍人のガイル少佐であり、ガードをしながらできる飛び道具と、飛び込んできた相手を空中でなぎ払うサマーソルトキックと攻防に優れたキャラだった。
唯一の難点としてはコマンド入力がタメ仕様となっており、冷静に先を読まないと逆にやられる立場でもある。
まあ、接近して投げ技中心しかできないレスラーのザンギエフとは大違いだが……彼は動きが鈍いうえに敵に近づく隙ができる前に飛び道具などで倒されるだけに……。
技が三~四回決まれば確実に倒せることは確かだが、キャラによって性能さが離れすぎている。
明らかにザンギエフは離れ技だ。
それから所々にあった制限時間がある得点稼ぎのボーナスステージも爽快で、駐車した新品のスポーツカーを生身の攻撃でスクラップの廃車になるまでぶち壊すのも何とも言えなかった。
いや、相手は鉄の固まりですよ。
痛いですよね。
痛覚も鍛えられるものなのでしょうか……。
──近年SFシリーズも35周年を迎え、記念としてサントラも三枚同時リリースされた。
初の商品化となったこのサントラ、ゲームのモノラル音源からステレオでマスタリングされ、綺麗なサウンドとなり、今聴いても名曲揃いである。
ブックレットも豪華な作りで作品紹介に、BGMとキャラの紹介覧付きと色々と詰め込みすぎた驚きな内容だった。
サントラにはスーファミ版の他にセガ機種のメガドライブ版も収録されているが、メガドラの方が高スペックなのに対し、スーファミ版の方が収録時間も長くて、ノイズらしきものもなく、音質が良いという微妙な内容でもある。
映像はメガドラ版の方が上らしいが……。
****
『女神のカフェテラス』の漫画や、『妻、小学生になる』の実写ドラマ、人気お笑い番組『イッテQ』などにも登場し、絶大な人気を誇るSFシリーズ。
次はこの35周年を記念として、6を製作している最中らしい。
今後、安価になったセガサターンと同時購入したZEROシリーズなどにもハマり、私が唯一ハマった格ゲーシリーズだっただけに、新作の内容がお塩少々なほどに気になる性分でもある。
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