第24話車いすと少女

 暗黒街、そこは、イマージュの扉の一つを開けた世界にある。

 京介とハルは、追われていた。

 組織の手から。それは、イマージュの、幻かもしれない。

 夜の果てまで逃げていく。京介はハルと手をつなぎ、通りを走っていく。

 影たち。通りには、ひそひそ話す、影がいる。そして影をすり抜けて、

 雑踏の群がる群衆。

 京介とハルの手はまるでHEARTMARKでつながれた、ハートブレイカーみたく、そんな例えさえ、出てくるほどに、必死で逃げた。

 京介は、ちらっと横目で、ハルの顔を見た。

 ハルの目はなぜか、潤んでいた。口元には微笑さえ浮かんでいる。

 京介の息は上がり、ハルの体温も、手から伝わってくる。

 通りで、一人の男が現れた。

 その男は口元にうっすらと笑いを浮かべていた。

 そして背中には白い翼がある。

 そして、指を向けてくる。

 「モルドー」は名乗り、人差し指を差した。

  そして、モルドーの指さした先へと向かった。

 そして、雑踏を、群衆の影を、越えていき、大きな黒い館にたどり着いた。空には月があり、星々が輝き、青いアルルカンが、不意にやってきた。

 そして、京介に、一個の鍵を渡し、突然、夜が明けた。

 太陽が、東の空から上がってきた。

 黒い館の扉の鍵を開けた。

 出迎えるのは、さっき名乗ったモルドー。

「おはよう、京介君にハルさん」

「不思議な感じだ。あなたとは、さっき出会っていた」

 そう、京介は言った。

 モルドーは、ただ黙り、手招きする。

 奥の部屋。

 突き当りにある部屋まで、モルドーが招き、モルドーは奥の部屋まで案内し、ふっと消えた。ドアを開けた。

 大きな何もない部屋だった。そこには、鏡面で反射した世界があり、京介たちは戸惑った。食事をする老人、ちらりと京介は見て、ナイフとフォークを握る手を止めた。そして、ベルで呼んだ。

 すると一人の少女が現れた。少女は、老人を、持ち上げた。

「おお、悪いな、セレナ」

 と言って、老人を車いすに座らせた。

 その瞬間、車いすは消え、モルドーがよこに来て、京介がセレナの足を見た瞬間、そう視線がそれた瞬間、老人は青年になっていた。

 そして、こう言った。

「俺はブラックノーズ」

「そうか、俺はガラライザーだ」

「離れていろ、セレナ」

 とブラックノーズは言った。

 自然にハルもガラライザーから、離れていく。試すかのように。

 そして火花が散る。

 


 

 



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