第21話対話

 不意に肩がぶつかった。

 それは、パサージュの繁華な場所。

 パサージュは、無限の道がある。

 そして、その繁華な場所は「影」たちがうごめいている。

 そのうちの一体、それと京介の肩がぶつかった。

 影なのに、肩に感触を感じる。

 京介の超神刀が鳴る。

 背中に背負った超神刀を反射的に抜く。

 すると、影が、いっせいに襲い掛かってくる。

 京介は、超神刀で斬る。影を次から次へと、斬って斬って、斬りまくる。

 そのうちの一体、超神刀が、一瞬、ひるんだ。

「おい、貴様」

 とその影は言う。

「何だよ? 影ごときが、俺に何を言う?」

「貴様は、慢心している」

「んだと?」

「貴様は影たちがどれほど苦しんでいるか知っているのか?」

「……」

「その影は、死者の死者の、死者の、迷い、生きたいという意志が乗っている」

「……」

 京介は黙り込んだ。

「貴様、殺してやろうか?」

 と影は言う。

「……」

 京介は、恐怖を抱いた。

 それは、痛みを感じ取ったからか。

 否、迷いなのかもしれない。

「貴様、死を選ばせてやる。選択の余地はない」

 京介は震える。

 それは罪の意識か。暴力に対する痛みではない。自覚か。力の自覚、そう、京介はその瞬間解った。

『自分の刀は、ハルを守るためだけに使われる』

 と心の中で声がした。

 トゥータティス、何だろうか、そんな名前が聞こえた。

 とてつもない清らかさ。

 すると、影たちは一瞬で、一つになった。巨大な影。

 そして、交じり合う。

 一人の剣士となった。

「俺は京介、お前の名は?」

 と京介は訊いた。

「レディック。死の淵からよみがえった、古の英霊」

「そうか」

 と言って刀を鞘に戻した。

 レディックはこう言った。

「貴様が慢心しないように、ついていってやるよ」

「ふん、余計なお世話だ」

 京介の一億倍の思考力が、こう言わせた。

「その時が来たら、『最終戦争』、ん? なんだこれは?」

「最終戦争か。よし、その時が来たら、力を貸してやる」

 京介とレディックは、固く握手をした。

 そして、レディックは、違う道に行った。

 京介とハルは振り返らない。

 まるで決闘を終えた戦士たちが手を取り合い、別れるように。

 そうレディックも、振り返らない。

『最終戦争』。

 京介は思った。

「俺の超神刀、きっと、それは、憎しみには陥らない。影、否、レディックが俺に気づかせてくれた。俺はハルを守るために戦っているのだと」

 京介は笑った。

 その顔を見て、ハルも笑った。

 超克の旅は、まだ続く。


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