第16話スプリンガー登場

 京介は、ハルに手を引かれ、パサージュの奥深くへと進んでいった。

 そして、とある領域へと入っていった。

 そこは、闇の領域。ハルは手を離さない。京介の手を握っている。闇の中で、ハルの手のぬくもりが、京介の意識を、つなぎとめるかのように、伝わってくる。そこは闇が強く支配している領域。天井の青さえかき消されるほどの「闇」。さすがの京介ですら、畏怖に近いものを感じた。

 立ちはだかる敵があった。そう、それはスプリンガー。パサージュでは有名な荒くれ者。超神刀が感応しガラライザーが覚醒した。「敵」と認識したのだ。

 京介は、ハルの手を振り払い、こう言った。

「俺の後ろにいろ」

 ハルは、まるで試すかのような不可思議な笑みを浮かべ、京介の背後に隠れた。

 スプリンガーがこう言い放った。

「ハルをよこせ。それは危険だ」

 京介、否、ガラライザーはこう言い返す。不敵な笑みを浮かべ、

「やってみろよ。俺をやれたら、くれてやる」

 超神刀を素早く抜く。

 京介の眼が怪しく輝く。

 スプリンガーは、屈強な体躯で、素手でくる。そして速い。

 ガラライザーはすっと半眼となる。気配を探る。力の気配だ。

 すさまじい緊迫感。やり取りがなされる。殺気。そう、空間を震わせるような殺気。

 しばらく、向き合う。京介はふっと意識がそれた。

 友となりえる。そんな危険な感傷がふっと浮かび、それをついてくるかのように、スプリンガーは猛然と、速く、一気に迫ってきた。

 友となりえる。そんな感情ですら隙となりえるのだ。

 そして、まるですれ違うかのように、一瞬交錯して、刀と拳がぶつかり合い、はじけ飛ぶ。クラッシュだ。それから力の余韻。残響のような。

 超神刀は嗤う。京介の精神がそう感じた。そう、まるでインモラルな嘲笑のように。

 スプリンガーの拳から鮮血がほとばしる。しかし、スプリンガーは意にも介さず傷口をなめる。そして、どう猛な視線をガラライザーに向ける。スプリンガーはきっとこう思っていたはず。「やるな」と。

 それがガラライザーとスプリンガーの初めての接触だった。スプリンガーは、そのまま、立ち去った。地面に自身の血を残して。まるで特別な日のプレゼントのように。


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