第15話京介の決断
超神刀を持ち、ガラライザーとなった京介。
その反動はすさまじいものだ。
力が流入し、去っていく感覚。
それは、力をもぎとられるようなという感覚に近い。
京介は、超神刀、そしてガラライザーとなったその「瞬間」から、意識に、善と悪のバランス感覚が危うくなり始めた。
しかし、「意志」の力がそれを制する。
心の奥深くに入ってきたその感覚は、魂さえも揺さぶる。
京介は選ばねばならなかった。
正義を。本当の意味における正義を。あるいは悪を。
そして、京介は、十七歳のハルと、再び出会った。
パサージュの迷宮の中で。
ハル、否、その存在は圧倒的な畏怖を呼び起こす「神」にも似た存在。
善悪すら超越している最大の力を持つもの。
「こんにちは」
ハルが言った。
その時京介は一人だった。
雄太も芹那も別の場所にいた。
京介の力が、反応する。
いや、感応する。
ハルの力。
京介の力。
京介は一億倍の力。しかし、ハルはすべての力を超越している。
「ハルちゃん?」
京介は束に手を伸ばす。しかし、ハルの微笑は、京介にその手を離させた。察知した。
「また会えたね」
もう一度、ハルが言う。
京介に向かってハルが微笑む。
「ああ、ゲルムの部屋で」
再び、刀の鞘に手を伸ばす。
「ちがうわよ。小三の頃よ」
「え?」
ハルは記憶を失っている。いや、失っていくのだ。
「私の大事な親友の、京介君」
「ハルちゃん?」
「秘密基地に行こうよ」
「え?」
京介は、一瞬、戸惑った。
「ほら、私たちの秘密基地」
京介から超神刀の、そしてガラライザーの力が去っていく。
「敵」だと、京介は、認識しなかった。
「秘密基地に行こう」
ハルはまた言った。そして、にっこりと笑った。
抗えない力。
圧倒的なテンプテーション。
美には神が宿る。そんなジョークすら聞こえてきそうなほどの美しい笑顔だった。
ハルは京介の手を取った。
ハルの手に触れただけで、京介の感情の揺れは収まる。
「また、一緒に遊ぼうね。夕日の中で」
京介は誘われた。
その「感覚」が正しかったのかどうかは、まだわからない。
しかし、夕日に帰りたいという気持ちがハルから伝わってきた。
だから、京介は、共に行くと決断した。
「ああ、また遊ぼう」
と京介が答えた。
ハルの笑顔は一億倍の思考力さえ停止するようなそんな美しい笑顔だった。
だから京介は信じた。というよりも、疑うことさえできなかった。
こうして、雄太と芹那、京介の道はそれていった。
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