第13話接触

 接触があった。

 悪意に共振するように、京介の刀が反応する。

 何かしら「敵」の差し向ける刺客なのだ。

 京介は、刀を抜く。

 今立っている地点、十字路が先に見える。

 その右のはるか遠く、いや近くか。

 刀が鳴る。それは本当に、キイイインッという音とともに、京介の束に触れる指を伝って、脳に届くような、敵意だ。

 京介の心に一瞬、火花のような力が発し、同時に、走り出す。

 雄太も同じように、芹那も後に続く。

 すると、十字路を右に曲がった瞬間、空間も曲がる。

 「これは、何だ?」

 と京介が言う。

 地面が、揺れる。そして、一気に地面が崩落する。

 三人は、とっさに逃げおおせた。

 道の横にあった大きな岩の上に飛び乗ったのだ。

 そして、崩落して、そこには暗黒の空間がぽっかりと空く。

 三人は岩の上で、待つ。

 暗黒の空間から、何か得体のしれないものが姿を現した。

 それは、漆黒の体をした者だった。

 王冠を被っている。

 京介が叫ぶ。

「ゼビレイド!」

 そう、王冠を被った漆黒のもの、それは、魔の王ゼビレイドだった。

 王冠は漆黒の茨。まるで、見たこともないような異形の者。

 ゼビレイドがこう発した。

「人間よ。貴様らの持つ、大事なものは何だ?」

「答えるまでもない」

 と雄太が叫び返す。

 ゼビレイドは、嗤う。

「私は、貴様らの、すべてを奪う」

「なぜ?」

 ゼビレイドはまた嗤う。無言で、真っ赤なゆがんだ眼を三人に向ける。

 京介が、まず、先陣をきる。

「は!」

 と発し、岩から飛び上がる。中空を舞う。

 軽く三メートルは飛び上がった。

 ゼビレイドは、その巨大な体を揺らし、ただ嗤う。

 超神刀が、ゼビレイドの、肩に触れる。

 しかし、ゼビレイドは、意にも介しない。

 超神刀は、はじき返される。

 ゼビレイドが、腕を伸ばす。そして、中空で吹き飛ばされた京介をつかむ。

 一瞬、ゼビレイドの意識が京介にそれた瞬間、芹那が、叫びながら、突進する。

 そして、ゼビレイドのみぞおちあたりに拳をぶつける。

 ゼビレイドは、一瞬、ひるむ。

 雄太が、岩を蹴って、とびかかり、風神刀をふるう。

 風が、揺れる。

 そして風が、突風となって、ゼビレイドに襲い掛かる。

 ゼビレイドは、確かにひるんだ。

 そのすきに京介が、「おおおおおお!」と叫び、ゼビレイドの腕からもがき、脱する。

 京介のガラライザーが覚醒する。

 ガラライザーとなった京介が魔人刀をすさまじい勢いで振るった。一億倍の力で。

 するとゼビレイドの、片腕を飛ばす。しかし、次の瞬間、ゼビレイドの腕は、すぐに元に戻る。

 さすがの京介ですら、驚愕し、戦慄した。

「愚かなり、人間よ」

 三人は、呆然とする。

 そして、ゼビレイドは地面に空いた漆黒の世界に消えていった。

 ムンクの叫びのようにゆがんだ空間が、すっと元に戻る。

 芹那が腰が砕けたようにへなへなと地面にへたり込む。

 雄太は肩で息をする。

 京介は、歯を食いしばる。そして、暗黒があった場所を睨みつける。

 三人は、放心状態からかえり、

「とんでもない敵だ。俺たちはとんでもない世界に足を踏み入れたらしい」

 と雄太が言う。

 京介も芹那も、ただ無言でいるしかなかった。

しばらくしてから、我に返り、「それでも行くしかない。徹が待っている」

 と雄太が呟く。

 その眼にはおののきながらも、力強さが戻っていた。

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