第12話神々の戦い

 パサージュを歩いていると、一軒の本屋を見つけた。

 そこで、ワゴンの中に一冊の本があった。

 とても分厚い本だった。表紙には神々の言葉で書かれた秘文字がある。

 雄太たちはパサージュの空気を吸い、雰囲気を感じ、住人と接触するうちに、自然と秘文字が読めるようになった。それは不思議な力。秘文字の字はくねった奇妙な形をしていたが、まるで、何ということなく理解できた。後々知ったことだが、それは雄太たちが、パサージュの中で、パサージュの武器と防具、食べ物を口にしていたかららしい。「調和する」という言葉がある。雄太たちはパサージュと「調和した」のだ。

 そして、分厚い本の表紙がわかる。

 その本は「神々の戦い」と書かれている。

 雄太が開く。

 すると、挿絵があった。

 その雲の挿絵は、本の中で動く。色を帯びた夕空で雲が流れている。雲の切れ間に天使がラッパのようなものを吹いている。

 雄太はびっくりしてすぐに閉じた。

 もう一度ひらく。

 そこには剣を持ったカエルがいた。

「おい、京介」

 と雄太は京介に本を見せる。

「挿絵が動いてるぞ」

「ああ?」

 京介が本を覗き込む。

「うわ、やっべ、なんだこりゃ?」

 と京介も驚愕した。

 芹那も覗き込んで、目を丸くして、

「なんなのこれ?」

 と驚嘆する。

 そしてすぐに閉じる。

 また恐る恐る開く、今度は別の挿絵。

 挿絵の横の文字を見る。

 そこには神々の一柱「ザグエル」とあった。

 「聖なる神ザグエル、魔界へ赴く」

 とあった。

 ザグエルは剣を持ち、それを前方に突きつける。

 剣の切っ先が向いているのは、魔界の王ゼビレイド。

 すると挿絵が動く。挿絵はめまぐるしく動く。ザグエルとゼビレイドが互いに戦っている。挿絵で動くその二柱は決着がつかない。

 永遠と続く戦い。そして横の文章を追う。「これは善と悪の戦い。決して終わることのない永遠の戦い」

 雄太は本を閉じた。

 本屋に入って、宝玉で会計を済ませる。

 雄太たちは、たびたび本を開き、このパサージュがどういうものなのか理解し始めた。

「神々ですら夢を見る」

 神々の戦いの第一章一ページ目に書かれている序文だ。

 そして、三人は道を急いだ。

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