第10話進むべき道

 三人は、分岐点に立っている。大きな菩提樹が分岐点のすぐ横にある。

 目の前に道がある。

 道は、血管のように無数に枝分かれしている。そう、まるで迷路のように。

 一つの道に足を踏み入れ、進めば、行き止まりだったり、また別の道から七つに分れていたり、さらに別の道を取れば、幅の広い道に出たり。さながら迷宮。

 そう、パサージュは真っすぐの一本道を抜ければ、迷宮だったのだ。天井は果てしなく青いまま。幻想太陽はその青い天井に覆われて、拝むことはできない。永遠に青いまま。まるで、決して終わることのない青春時代のように。

 始まりの時。

 その始まりの時に三人はいるらしい。

 徹はいったいどの道を進み、どこへ行きつき、今、どうしているのか。

 ウサギ紳士は、葉巻を吸う。

 青い煙が天井へと揺らめいていく。そしてステンドグラスの青とまじりあうように滲んでいく。

「ここまでだね。さあ、後は三人で行くんだ。幸運を祈るよ」

 とウサギ紳士は言った。

 三人は迷宮に足を踏み入れる。

 一本道のまっすぐな道から、迷宮へ。真の魔術幻灯に。

 雄太の心は勇み、武者震いに震えていた。

 京介は、不敵な笑みを浮かべ、足を踏み出す。

 芹那は無表情で、つんと顎を上にあげて、何ともないわよ、という感じで、足を踏み入れる。

「必ず助けるからな。徹」

 と雄太は無意識に呟いていた。

「ハルちゃん、きっと事情があるはずよ」

 と芹那は天井の青を見上げながら目を滲ませてつぶやく。

「夢か……、パサージュの夢、俺にもかなえたい夢がある」

 と京介だけは、ふっと怪しい瞳の色のまま言う。

 こうして、魔術幻灯の大いなる戦いがいま始まったのだ。

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