第7話魔法の防具と狐の女店員
魔法の防具屋に入った。
「いらっしゃいませ」
と三人を迎え入れてくれたのは、長く大きなしっぽの付いた女性だ。
その尻尾は狐のようだ。
顔立ちは、目が少し吊り上がっていて、まさに狐を思わせる。
身のこなしが素早く、すすっと店内の商品をすり抜けるように近づき、「何をお探しですか?」と上目遣いで訊いてくる。
そしてすっと横に首を振って、まさに大きく長い尻尾のようなポニーテイルが揺れる。
空気から匂ってくる香りは、柑橘系のようだ。
「何か、防具を探しているのですが」
と雄太が言う。
「漠然としていますね」
と店員が答える。
「鎧とか?」
「あー、鎧はもう流行遅れですね」
「え? 防具に流行とかあるんですか?」
「ははー、ありますよ。最新の防具は大体バトルスーツですよ」
「というと?」
そう言って、雄太らは店内を見回した。
言われてみると、店内には甲冑や洋風の鎧、楯などは一つもない。
まるで、流行の服を売るアパレルショップのような佇まいだ。
よく耳を凝らすと、店内にはBGMが流れている。
流れている曲は、エレクトロニック・ミュージックのようだ。
聞いたことがない、近未来的な曲だ。
そして、狐の店員は、三人をまじまじと眺めてくる。
「お客さんには、こちら」
と雄太にバトルスーツをすすめてくる。
とりあえず、奥の試着室に入って、バトルスーツを着る。
それはタイトなバトルスーツだ。全身が緑と白の縞模様。まるで、アメコミのスーパーマンを思わせる体にぴったりとはりつくものだ。
胸の中央には、秘文字が刺繍されている。神々の秘文字。
「この文字は何を意味しているんですか」
「動物の意味です。神々の世界に住む、超動物と言うやつです。文字の意味は『アサス』。」
「どういう超動物なんです?」
「超高速で移動する動物。まるで速くて、肉眼では追えないほどです。それを着てさえいれば、超高速で移動できます」
「すっげー」
と雄太は率直に言う。
「金髪のお客様にはこれ」
そう言って、京介もバトルスーツを着る。
漆黒。そして胸に縫い込まれた秘文字は黄金。
「これは?」
「超動物の王と呼ばれる『ガラライザー』です」
「なんか、まるで特撮のヒーローみたいだな。どういう力が?」
「お客様の持つ力が、約一億倍に高まります」
「ずいぶん抽象的だな」
「はい、実際戦いになればわかります。思考力さえ、一億倍です」
「意味わかんないな。まあいいや、じゃあ俺はガラライザーだな」
芹那もすすめられるままに、バトルスーツを着る。
「どう?」
と芹那が胸を張る。
全身真っ赤なバトルスーツ。
そこに白い水玉がちりばめられている。
「すっげー」
と雄太。
「そう? 私に似合う?」
「Dだな]
と京介が目を細めながら言う。
「いや、Eだ」
と雄太が答える。
「え? 秘文字の意味が解るの?」
「ああ、成長したんだ」
「なに、なに?」
「いや、何でもない」
芹那が自分の胸をまじまじと見る。
芹那の顔がみるみる赤くなる。
「こんの、変態野郎ども!」
雄太と京介はさっと背後に同時に飛ぶ。
芹那が回し蹴りをかまそうとしたからだ。
「わりい、怒んなって」
「違う!」
と芹那が叫んで、
「わたしはF!」
と大声で叫んだ。
叫んだあとで、芹那は口に手を置く。
狐の店員は、芹那のバトルスーツ「シューカ」の説明をする。
それは敵の攻撃を千分の一に下げるというものだ。
「いったいどういう敵?」」
と芹那。
それに対し「戦いになればわかります」と狐の店員は答える。会計は点滅する宝玉を見せるだけ。
そして、三人は狐の女性店員に見送られ、魔法の防具屋を出た。
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