第34話 袋の中身はなんだろな。
【変身】。それは特異的な擬態能力を持つトランス星人を参考にし、作られた。
技術であり、科学であり、能力である。
様々な宇宙人が真似するその力は小さな違いはあれど、共通した特徴がある。
それは、別の種族に変身することは可能だが、詳細に姿を変化させることは出来ない。ということ。
ネコや犬に変身は可能だが、黒猫やトイプードルになる。と指定する事は出来ない。
あなたが「田中」だとしたら、火星人の「山本」にはなれない。あくまで「田中」が火星人として生まれ変わったら。の姿になる。
それともう一つ。肉体能力が上の存在の者に変身は出来ない。
あなたがトイプードルより弱ければ、犬に変身出来ないし、逆にあなたがゴリラよりも強ければ、ゴリラになれる。というかゴリラより強いってそれ、既にゴリラでは?
ゴリラさん、ここまで読んでくれてありがとう。
ギャラクシー祭の屋台を回り、たくさん遊んで満足した二人は、レジスタンスの根城である衛星に到着した。
「自分、何者や?」
レジスタンス軍の頭目であるリダン。彼は突如現れた《チキュー人》のような男に質問していた。
「事と次第によっては……」
リダンが片手を上げると、周りにいた100人余りの構成員が、銃口を二人に向ける。
自分達が目の敵にしている王。
その王の子たるセラル。と、その姫様を連れてきた見知らぬ男。
……疑わしきはなんとやら、答えを聞かずに
「オレは味方だ。この女は仲間に入れてもらうための手土産」
ふっ、やっぱり味方か……。それなら仕方ない、戦闘は避けられな───え?
「自分、味方なん?」
「そうだ、コイツを生かすも殺すも自由にしろ」
「キャッ、もっと優しく……いや、これはこれで──」
コイツほんまに信じていいんか?
姫さんに対してあの扱い、護衛軍の奴らではないんやろうけど……。
てかなんで姫さん、蹴り飛ばされたのに喜んでるん? ほんとにあれ、ワイらの宿敵なん?
……やめようかな、この仕事。
「ままええわ。その手土産に免じて仲間に入れたる。でも、完全に信じた訳やないで?」
「ああ、ありがとう。クソ
「ちゃうわ! これ、キャラ付けな! ホンマにこんな言葉遣いの宇宙人おったらシュールやわ!」
((この人、結成当初から訛ってたよな……))
それから数日間、兵藤とセラルはレジスタンス軍と共に、オーパーツの重要施設やインフラの破壊工作を実行し、危険を共とすることで仲間達との友情を育んでいった。
その結果─────、
「よし! あのクソ王をぶち殺しに行くぞ!!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
兵藤の掛け声と共に、レジスタンス軍は雄叫びを上げる。
レジスタンス軍のリーダー・兵藤。
彼は突如としてその姿を現し、革命家のあるべき姿を、自分自身の手で部下達に見せていった。
「あ、あの、ワイがいちようリーダー……」
「黙れよ、元リーダー。床掃除でもしとけ!」
「なーにが『ワイ』だよ、トイレも磨いとけな」
「お前たち、止めなさい。我々は革命の同志。仲間を大切にするんだ」
「兵藤さん……へへ、そっすね。決戦前でピリピリしてしました」
「やっぱりリーダーは器が違ぇわ……」
「なんなん、この扱いの違い……」
元部下達の態度を見てイジけるリダン。
トイレ掃除をした後、セラルが皆に手料理を振る舞っていたが、決戦前に緊張感がない。と断った。
「せっかくセラルちゃんがご飯をよそってくれたのに、食べねーのかよアイツ」
ヒソヒソと聞こえる声。リダンは聞こえないフリをしながら自室に戻り、体育座りになって涙を流した。
「おかわりだセラル」
「はい、ダーリンの分もたくさん作ってるから、安心して食べてね」
「おっ、兵藤さんいいな~。俺たちが食ってるのとは別のモンも用意してもらってんのかぁ」
こうしてレジスタンス軍数百名は、腹を満たして決戦の準備を完了した。
既に王宮内の護衛隊と戦っても問題ないだけの装備は整えている。
後は一般人の被害を少なくするため速やかに王の元に行き、その首を打ち取れば作戦完了。
作戦は早急に
革命家・兵藤の指揮もあり、想定よりも早く、そしてより効率的に侵入に成功。
デオニスのいる玉座までの制圧を完了し、あとは首を穫るだけ。
そんな作戦の元、突入して間もなく……。
「クソキング! 貴様の命もここまでだ!!」
「ミイラ取りがミイラになってて、
王は兵藤と愉快な仲間たちに囲まれるも慌てるそぶりもなく、
自分の
「何かおかしい! 早く撃てリダン!」
「お、おうッ!」
リダンは銃弾や濃縮ガンマ光線弾をデニオスに向けて撃ちまくる。がまったく効かない。というより、当たっていない。
その様子を見た王は、少し飽きたような素振りを見せて指を鳴らす。
その指音と共に──王は消えた。
いや、正確には王のホログラムは消えた。
「さて、諸君らには2つの選択肢がある」
先ほどまで横たわっていたはずの護衛達が、スッと当たり前のように立ちあがり、レジスタンス達の周りを囲って武器を向ける。
「き、貴様! 図ったな!!」
兵藤は騙されたかのように怒る。
「いやいや、図ったの君だよね? 一緒にレジスタンス倒そうぜ。って図った仲なのになんで平然と撃てるの?」
とグダグダ問答を続けている元気な二人とは対称的に、構成員たちの体には異変が起こりだす。
「うぅ……なんだか眠い……」
「手が痺れて動けない…………」
「うおえええええええええええええええええ」
「なんや!? いったい何が起こっとるんや!」
構成員たちは症状に差はあれど、バタバタと体の自由が利かなくなっていく。
その様子に軽い混乱を起こしていたリダンであったが、隣にいた兵藤の表情を見て確信した。
「お、お前か兵藤! お前、やりよったな!」
「なんのことだ? 仲間を疑うなんて最低だぞ」
楽しそうに笑う兵藤と、飼い犬を褒めるような手つきで撫でられて喜ぶセラル。
「クソっ……」
既に構成員の大半は行動不能になり、武装した護衛隊に袋のネズミにされている。
肝心の王はどこか別の安全な場所へ既に既を潜めて隠れている。
摘んだ─────。
「だからなんやねんボケが……こっちは50年かけとるんやぞ……」
「そうかそうか、大変だったな。後は牢屋の中でゆっくりするといい。そしたら皆が食べた料理も差し入れに持って行ってやるからな」
「………」
リダンは長い年月をかけて反対派を煽りレジスタンスを結成し、装備や情報を集めた。それは自分の意志ではなく上からの指示。
そんな仕事にも誇りと責任を持って進めてきたのにも関わらず、姫を誘拐した奴だからと手を組んでしまった自分の愚かさと、計画を台無しにされた怒りに耐え切れなかったリダンは──演技をやめた。
「もういい……」
「ワイ……いや、自分の任務はデニオスの始末。場所が分からないなら……星ごとぶっ壊すだけの事」
何かを諦めたような顔をしたリダンは、兵藤の顔を見て言い放つ。
「先輩、辞めたくせに邪魔しないでくださいよ」
そして、自身の持っている武装を全て起動させながら、続けて呟く……。
「変身─『解除』」
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