第30話 何事も経験。
エネルギー
距離7万。目標物砲撃可能まで後5秒───。
ツァーリー砲・エネルギー出力最大!!
3……2……1…………。
「発射」
俺たちは今、宇宙エネルギーステーションと呼ばれるサービスエリアに来ている。
隕石を対処するために使用した燃料の補給と、小休憩のためだ。
ここでは全星人に合わせた食堂・トイレ・休憩所の他に、その銀河ご当地特産品・お土産が売られている。
また、宇宙空間を移動するためにココを利用する者も多く、俺たち以外の宇宙人も沢山いた。
といってもお互いに絡むことはなく、広大な大きさのステーションで何度も顔を合わせることもない。
しかし、今俺は絡まれていた。いや正確には俺たちは絡まれていた。
ヌルヌルの触手に──────。
「ぷにゅ〜〜〜」
それはそれは絡み、全身をヌメヌメのネチョネチョにされ、大量の触手に
ぺぺ星人。彼らは無性生物であり、自身で生命エネルギーを自己保管できるため、他星人に害を与えることはない。
しかし友好的であるがゆえに、他星人に対してスキンシップを取りたがる。
結果、その友好の証として、ヌメヌメの粘液を分泌した触手で全身を触ってくる。
正直、気持ちは良くない。ローションのような粘度を持つ体液は、直接当ててマッサージでもしてもらえればいいが、今は服の上から触られている。
いつもの俺ならツッコミで叫んで抗うところだが、今回は違う。
このぺぺ星人の触手プレイ──ごほんッ、失礼。コミュニケーションに巻き込まれているのは俺だけではない。そう! 山田もなのだッ!
このぺぺ星人の粘液はどうやら聖水と同じように霊の実体を捉える効果があり、触手は山田も捕らえることに成功した!
つまり!! このヌメヌメネチョネチョの体液によって必然的に透ける服!!!
触手によって擦れる体!!! その刺激に声を出さないように耐えつつも漏れる声!!!!
「あっ……んっ………」
俺は触手に巻きつかれ、空中に持ち上げられていた。が、微動だにすることなく二の腕を組み、耳を済ませ、一切まばたきをしなかった。
宇宙……それは夢。
宇宙……それは神秘。
宇宙……男たちは今、ロマンを求めて飛び立つ。
そう! 僕は今!! 宇宙の真理を
「おー、ぺぺ星人じゃん」
「!?、 テロルヌルチョぺーーーーッ!」
「あれ、逃げちゃった」
さよなら、僕の宇宙…………。
おかえり兵藤。その食ってるモチみたい物をノドにつまらせて死んでくれ。頼むから。
「大変でしたね」
兵藤の登場によって逃げていったぺぺ星人。売店で買ったタオルで体を拭いていると、誰かが話しかけてきた。
「え! 地球人!?」
「はは、よく似てると言われます」
俺たちに話しかけてきたのは、俺たち地球人に見た目が酷似しているサピエンス星人だった。
ぺぺ星人に絡まれている俺たちを助けたかったが、結局どうにもできずに見ていたらしい。
「申し訳ない」
「いやいや、いいんすよ」
背は190はありそうな長身。体つきも良く、顔も端正で男前。もしも地球にいたら、かなりモテそうな奴だ。
その男は俺と話ながらもジッと見ていた。
なんだ? 何を見てんだ?
!、わかったぞ!! 山田だな?
ははーん、お目が高い。宇宙人でも山田の魅力はやはり伝わってしまうものなのですね?
しかし、残念。そうは
山田を狙う男は、この永岡パパが牽制させていただきます。
「山田、先に船に戻ってろ」
「?、分かった」
山田は不思議そうな顔をしていた。やれやれ、男は狼。そんなんじゃあ、お父さんは心配だよ。
俺は山田にサピエンス星人と話があるといって船に戻らせた。それを見ていたコイツも、ハッという顔をして俺についてきた。
そして今、俺はサピエンス星人とトイレにいる。
「おい、お前。どう思ってるんだ?」
「気がつかれたのですね……」
サピエンス星人は観念したように話しだした。ぺぺ星人に絡まれている所を見て助けられなかったのではなく、興奮して魅入ってしまったこと、話しかけてキッカケを作って仲良くなろうと思っていたことを。
「正直、好みだったのです」
そうか、確かにこの宇宙人は地球人に間違われるような奴だ。異性の好みが人間に近くてもおかしくはない。
それに山田は魅力的だ。その上でヌメヌメになった山田なんて、この俺ですら腕を組んで見ずにはいられなかった。
「そうか……残念だが──」
打って変わって宇宙船に戻った山田は、燃料補給を完了し、軌道設定の調節をしていた兵藤とまったりと話をしていた。
「そういえば永岡は?」
「サピエンス星人っていう宇宙人と二人っきりで話があるってどっか行ったよー」
「アイツ、そういう趣味があったのか」
───?????
山田は意味か分からなかった。そんな様子に気づいた兵藤は、サピエンス星人について話し出した。
"サピエンス星人"。彼らは男性のみで行為を行う生物。彼らはお互いに気にいった者同士で生殖行為に及び、お互いが子を生む生き物である。
そして、その性的嗜好や恋愛感情は他星人にも及ぶ。そのため、他星人ではそういった趣向や価値観でない者は、必要以上にサピエンス星人と接触しない。
それは彼ら自身を傷つけないためであり、男性の他星人が、自分自身を守るためでもある。
つまり、彼らに二人きりで近づくという行為は、
そういうことである。
「残念だが──」
「アナタのことが好きです」
───は???
え? は? え? なんて? えっ?
「大丈夫、はじめは痛いかもだけど……大丈夫」
え? え? え?
「さあ、力を抜いて────」
あ? え? あっ…………。
「アッーーーーーーーーーーー!!!」
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