第27話 生きることは選択の連続。

「変身─『限定解除』」


 ベリアルの一撃からなんとか逃れた俺とセラルは急いで船に乗り込み、命からがら星から飛び出して宇宙空間にいた。


 そして今、目の前に120年前いたとされる""が、ちゅうを飛びながらベリアルと対峙している。


「キ、貴様は勇者!? なぜキサマが……!!」 


 変身を解除した兵藤は、魔王を倒し世界を救った勇者"アルカディアス"の姿になっていた。


 変身解除前とは別人──いや別種族だ。

 なんせ宇宙人だしコイツ。


「うるさい、骨だけチキン」

 兵藤は100㎞以上あるデカさのベリアルを思いっきりぶん殴る。


 完全に物理法則を無視し、飛行に合わせて放ったその殴打はベリアルを大きくのけ反らせる。


「骨から炭に変わっとけ」


 そしてそのまま兵藤は指を突き出し、その指先から巨大な光の球を出現させ──ベリアルに向かって真っすぐ放つ。


「グ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああ!!!」


 そのエネルギーの光線はベリアルの腹を貫き、胴を文字通り『ガラ空き』にした。


ちりになっても、やはり死人は死なないか」


 体を貫かれ穴がいた。が、聖なる光と漆黒の炎に包まれたベリアルは何ごともなかったかのように一瞬で元通りになる。


「それじゃあ、これならどうだ?」

 兵藤は剣にモウコンダから貰った聖水をぶっかけ、ベリアルをみじん切りに切り刻む。


 ──が、当たり前のように再生して元に戻る。


「ムダッ! ムダッ! ワタシは『無敵』!!」


 山田は死にながらにしてこの世に存在し、アンデットでありながら治癒の力を使える。


 つまり【死】を否定する存在。

 しかし山田自身の力は弱かったこともあり、その規模や力は小さなものに収まっていた。


 だがベリアルは千を超える亡霊の力と掛け合わせることによって無限に成長し、自身を死と生のどちらでもない混沌の存在と化した。


 つまり、弱点のない完全な"無敵"となったのだ。


 そしてそんな化け物と化した髑髏どくろひたいから、ベリアルの本体が浮き出て言い放つ。


「勇者……いや、アルカディアス! お前は昔、私にあんな辱めを……。あんなことをしておいて生きて帰れると思うな!!」 


「知るか、あの世で言ってろ」


 再度、兵藤は手の平から巨大なエネルギーの塊をベリアルに放つ。


「グガァアアアアアアアアアッッ!!!!!」


 そして再生の隙をつき、更にエネルギー弾を何発もぶち込みながら、兵藤は俺たちの宇宙船に乗り込んできた。


「ふう……」

「おかえりなさいダーリン! 大丈夫!?」

「ただいま、大丈夫だ。あとお前の旦那ではない」


 俺はこのバカップルの間の抜けた会話を無視し、宇宙船から見えるベリアルを凝視した。


「おい、アイツ、さらにデカくなってね……?」


 兵藤の攻撃を受けてなお、倒せないのもそうだが、それ以上にまだまだその大きさを増していく姿に俺は驚きを隠せないでいた。


「安心しろ、奴の弱点は──」

「!、兵藤……まさかすでに弱点を!!」


「ない」

 いや、ねーのかよ。


「あいつは殺しても死なない概念的存在であり、しかも加速度的に力を増す……詰んでるな」


 あの兵藤が弱音を吐くなんて負けイベントのボスじゃねぇか……。


 しかしここはゲームの世界であると同時に、現実の世界でもある。死んだら終わりなんだ。

 

早合点はやがってんするな。弱点がないだけで倒す方法はある」

「本当か!!」


「ああ、あいつの力の根源は山田だ。その山田の力さえなんとかすれば弱体化する」

「なるほど……それで、どうするんだ?」


「山田は死に際に永岡、つまりお前の呪縛霊になることで存在を保った訳だ」

「ふむふむ」


「だからその呪縛先を消せばいい」

「んッ? え?」


つまり─────。


「永岡、お前を殺す」

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