第8話 7つ集めてもダメかもしれない。
おっす! オラ永岡!
男の楽園ってスゲーッ!!
オラ女と風呂へぇるなんて初めてだ!
せっかく風呂にへぇるんなら、ぺぇぺぇが大きい方がオラわくわくすっぞ!
なんでも[ホルステイン]ってぇのは重さ700kg体長2m近くあるってぇんだから、びっくりだぁ。
オラもどう攻めたらいいか……ピーンチ!
次回 ミリタリージャケットDT
『大誤算! ナガオカ壊れちゃった!?』。
絶対見てくれよな!!
そして、戦いを終えた戦士は店を後にし、裏路地を抜けた大通りの真ん中に立っていた。
俺はいつのまにか空を見つめていた。あざ笑うかのように、光輝く一つの太陽が眩しい。
心なしか動くたびに骨盤がグジャグジャに砕け、悲鳴を上げているかのような音が、股間から聞こえている。そんな気がするが、きっと……気のせい。
「あれ永岡? こんなところで何してんの?」
そんな俺に話かけてきたのは、高校時代からの友人である山田。
「何も聞くな山田。今はただ、ソッとしてくれ」
「永岡……泣いてるの?」
「おっと、雨が降ってきたな……」
「?、雨なんて降って────」
「いや……雨だよ」
◇
「おい、そのピッケルなんだ?」
「ん? 突き刺さった地面ごと掘り起こせばいいだろ?」
「こういうのは正攻法で望むから良いんだ」
「……チッ」
不満そうな表情をする兵藤。
俺たちは今、勇者が残したとされる[選定の剣]が刺さった岩の前にいる。
この剣は【魔王】や【邪神】など、この世界を脅かしていた存在を叩き斬ったとされるまさに伝説の剣。
心配しなくとも、この永岡善之助が抜いて見せますとも。やれやれ、主人公はつらいぜ。
「あッ、抜けた」
はああああああああああああ!?
コイツ普通に抜きやがった…………。
「うーん、いらね。売るか」
こうして[選定の剣]を抜いた兵藤とその仲間達は質屋に来ていた。
「ははーん、兄ちゃんコレは偽物だね」
「舐めちゃいけないよ、偽物を持ってくるにしても物は選ばないと」
あの剣は勇者が突き刺してから100年以上抜けていなかった。勘違いするのも無理はない。
「そうだな、それでいくらになる?」
めんどくさいからってあきらめたなコイツ。もっと粘れよ、本物なんだぞソレ。
「まあまあ状態もいいし、剣としては悪くない……金貨1枚ってとこだな」
あのクソビー玉の10分の1。さすがに売れないな。「よし、売った」
いや、売るんかい。
伝説の武器を売った後、俺は色々と疲れたので先に宿に戻ることにした。
そうして宿の前まで歩いていた俺の耳に、住人の話し声が偶然聞こえてきた。
「ねえ、聞いた奥さん、領主の家宝が最近盗まれたらしいわよ」
「いやねぇ、この街も物騒になったわねぇ」
なんでも最近街に空き巣や窃盗事件が続発しており、領主は盗まれた家宝を心底大事にしていたため犯人を
盗人を捕まえ家宝を取り返したら領主から莫大な謝礼が出るっていうんで、街の冒険者もクエストそっちのけで探し回ってる連中もいるらしい。
異世界もそこらへんは変わらねぇんだなぁ……。
「それで領主の家宝っていうのはどんなものなの?」
「伝説の種族ドワーホが手掛けたとされる壺よ」
えっ……壺? 壺って言った?
ハハ、まさかな……。
「ほら号外に乗ってるわよ」
「ちょっと失礼、それ見せてもらっていいすか?」
その紙に書かれていたのは見覚えのある──
ダサい壺だった。
俺は気が付くと小走りで自室に戻り、部屋に入るやいなや床を見ていた。
「いやぁ~まさかね。いや~そんなぁ、ははは」
「…………」
見たらダメだ……、見たら終わっちまう。
しかし現実逃避しても仕方ない、現実っていうかココ異世界だし。
数分の間を置いてから俺は意を決し、前を向き、そして奴のベットを見た。
「ー-----ッ!」
俺は住人から貰った特徴の書かれた絵と、兵藤の枕元に置かれた壺を見比べ、固まった。
宝くじが当たった人ってきっとこんな感じなんだろうな……。何度も何度も確認したが、ビックリするぐらい同じ──ダさい壺。
この現実を受け入れることが出来そうもなかった俺は───。
考えることを辞めた。
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