第4話
白い液体の正体はそう、もちろん牛乳だ。
冒頭でも触れたがRは牛乳もアレルギーだ。
Hがクレーンをゆっくりと降下させていく、
R「やめでぇ!!とめでぇ!!!」
叫ぶRに聞く耳を持たず下げ続けるがRの足の裏が着くか着かないかの瀬戸際でクレーンを止める。
そこでTが何やらラジカセを持ってきて一枚のCDを再生し始めた。大音量で流れて来たのは軍歌だ。
Rは自衛官であり自らが自衛官である事を誇りに思っていた。そして4人で集まる度に自衛隊での出来事を自慢げに語っていたのだ。
それが3人からすれば不快であり、沸点であったのだ。
A「なぁR?お前自衛官だよな?それを浮かべてこの曲聴きながら今の自分の姿見てみろよ?」
自らが自衛官である誇りと責任感それらを全て踏み躙る(にじる)行為だ。
Rは涙を浮かべる。悔し涙なのか悲し涙か。
3人「大日本帝国!万歳!」
掛け声と共にクレーンが再び降下する。Rの脛から膝、遂には首から下まで全て牛乳に浸かった。
3人はRの苦しむ顔を真剣に見て今か今かとクレーンを上げるタイミングを見計らっている。
5分を経過した辺りでクレーンを引き上げる。
Rの全身が出てきた。露出した肌は真っ赤に腫れ上がりアトピー部は酷く爛れ(ただれ)ゼリー状に膿が溜まっている。Rは叫ぶ気力も残っていない、ただただ痒いだけなのだ。でも拘束によってかけない。
Tが流れ続ける軍歌を止める。
T「どうだった?やばくね?R?」
Rは何も喋らない。意識を保つのに精一杯だ。
クレーンで最初の場所へとRを戻すと3人はRに少し待つようにと伝え倉庫を出て行った。
長い 長い 監禁されてからどれくらい経った?何時間経過した?1日ぐらいは経ったか?
塗られた蕎麦粉、蜂蜜、牛乳が乾燥して来て痒みは更に増す。Rは拘束を解こうとするが念入りに縛られている為絶対取れない。
何か無いか?何かこの状況を変えられるものは…
あった。クレーンのリモコンがすぐ近くに。
さっきHが操作していたリモコンとは違う形のものだが配線はクレーンの方へと繋がっている。リモコンは2つあったのか。
幸いにも3人は椅子にかけたワイヤーを外す事なく出て行ったのだ。
拘束されているが指さえ届けばイケる!
希望の兆しが見えてきた。
拘束されているRの場所の目の前に机がある。その上にリモコンがあるのだ。
Rは全身を動かそうと力を入れる。動いた!
少しだが椅子ごと動けた。
このまま動ければリモコンに触れられる。
動かす度に拘束用のラッシングベルトに肘や首元が擦れアトピー部の膿が痛む。
が、ここは我慢だ。ここを乗り切れば脱出出来るかもしれない。指からリモコンまでの距離およそ3センチ…
と、届いた!!
Rの考えはこうだ。
クレーンで自らを吊り上げ横移動を左右繰り返し、振れを利用して倉庫の梁(はり)に椅子やベルトを打ち付け破壊して拘束を足だけでも外せれば…
ここまで痛めつけられたんだ。梁に少し体を当てようが無問題だ。
クレーンの上げのスイッチを押す…!
え?
クレーンは動かない。
が次の瞬間上から20リットルほどの牛乳がRの体に降り注ぐ。
全部作戦だったのだ。わざとRの近くに机とリモコンを置きダミーの配線を繋いであたかも本物のように見せて…
「苦」 @takamurabe
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