25.「ヒーロー、ですか?」
恋愛結婚といえば、ルトガーにとってはそうなのだが、シュテファニにとってはひょっとしたら違うのかもしれない。
告白から恋人期間を経て、というルトガーの予定は大きく狂ってしまい、まずは婚約を結ぶことになった二人。
なんだかんだでめでたく婚約が成ったシュテファニとルトガーは、一緒に住み始めていた。
「好きだよ。」
「私もです。」
「愛してる。」
「私もです。いい家族になりましょうね。」
ルトガーの『愛してる恋してる好きだよ大作戦』はこの日も実行されていた。しかしお聞きおよびの通り、ルトガーがLOVEをぶつけても、返ってくるのはLIKEだった。
もう何度このやり取りをしたことかわからないが、めげずにシュテファニに想いを伝えるルトガーだった。
「思い返してみれば、あなたはとても思いやりのある人だったね。知り合った頃から、そういうところに惹かれたのかな。」
「まあ、ありがとうございます。私も、何かと助けてくださるルトガー様は、とても優しい方だなと思っておりました。」
「そうか。私はあなたのヒーローになれていたのかな?」
「ヒーロー、ですか?」
「ああ。」
「ヒーローというと、ザビですわね。」
「ちょっ……!」
室内でも、通常は護衛のために控えていなければならないので、壁と同化して気配を消していたザビは、自分の名前を出した主人を慌てて遮った。
「主、そういうのは――」
「ああ、でもヒーローというよりは、闇に紛れて活躍する、というようなイメージだから、ダークヒーローかしら?」
「いやいやそれはまさにバルシュミーデ家の十八番だから。」
「……。」
国の暗部も請け負うバルシュミーデ家の次期公爵として教育を受けていたルトガーだったが、まさかのダークヒーローの称号を護衛に取られてしまい、黙ってしまった。
付き合いの長さから、断然ザビのほうが信頼されているのだ。学生時代も自分が気づければシュテファニを助けていたが、常に一緒にいる護衛には敵わない。
護衛は守るのが仕事なので守るなとも離れていろとも言えない。だから、ザビをどうにかするのではなく、自分が信頼に値する男だと示す必要がある。ルトガーは、相手を貶めるより自身を磨き、高める男だ。
そんな彼の当面の目標は、ザビと同じくらいの信頼を得ること、になった。
「君には負けないよ。」
「やめてくださいよ……。」
めんどくさい人に目をつけられたな、と思うザビだった。
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