24.「正気か? フーゴ。」※

☆閲覧注意!




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さてここからは、バーデン家の私兵や王都警備隊、バルシュミーデ家の監視のための兵と王国騎士団の騎馬隊合わせて100人ほどで強制労働施設に向かったフーゴの話をしよう。

あの日、フーゴは移送中の逃亡を計画していた。しかし目の前に現れた護送兵のあまりの多さにそれは断念せざるを得なかった。仕方なく大人しく馬車に詰め込まれ、屋敷から程遠い強制労働施設までの道のりを恐々としながら進んだ。


施設についてからの手続きはひどいものだった。身体検査をされ、荷物はすべて没収。聞いていた話と違うと吠えるものの、ここでの常識は世間とかけ離れたフーゴの常識からも逸脱したものだった。

日用品から宝石からすべて取り上げられ、隠していないかと尻の穴まで調べられる始末だ。


ひどい屈辱を味わったフーゴは、怒りでどうにかなりそうだった。


施設での仕事内容は多岐に渡る。延々と同じパーツの木材を組み立てるという作業を繰り返して頭がおかしくなる者もいるし、単純に肉体労働で体を壊す者もいる。


はじめにフーゴに割り当てられた仕事は、こっちの砂利を袋に詰めてあっちに運ぶという単純作業だった。

やることは簡単だが、何せ袋の重さがひとつで30Kgあったので、体力のないフーゴはそれを持ち上げることができなかった。

なのでしばらくは、同じ施設に入っている労働者に「お嬢ちゃん」などといってからかわれる日々が続いた。



「仕事が出来ないならやることはわかってんだろ?」


「いいぞやっちまえー!」


「や、やめろ……! 来るなっ!!」


「「はははははーっ!」」



泣いても喚いても、止まることはなかった。もう自分に何が起こっているのかわからないような状態が続いた。


しかし、人間とは順応する生き物で、そんな劣悪な環境でもフーゴは、時間はかかったが着実に力をつけていった。

毎日の労働で筋肉がつき、ならず者たちとの喧嘩でも勝てるようになった。そうすると、夜もよく眠ることができた。


ある時、どこぞの貴族だったという女が送られてきた。当然、力仕事をするためではない。女は、高位貴族に囲われていい生活を送っていたが、それを知った夫人が激怒し、ここに送られて来たという。

そういうことはたまにあるみたいで、しかし今まで見かけなかったのは、前回の女はもう壊れて使い物にならなくなって処分されたからだと聞いた。だから顔のきれいな男が入ると、労働者たちはこぞって群がるのだ。



「久しぶりの女だな。」


「今回はどれくらいもつか、賭けようぜ。」


「それよりダナルさんとこ連れてかねえと。」


「ちょっと待て、俺が最初だ。」


「正気か? フーゴ。」


「ああ。ずっとやられっぱなしだったからな。」



ダナルというのはここの労働者の中でも群を抜いて腕の立つ男だった。しかし、元々の素質があったのか、フーゴはそれをも凌駕する力をつけたのだ。

今ではここのボスは自分である。文句を言う者はいない。



「ちょっと、離してよ! 私は伯爵様に愛されている女よ?! こんなことしてタダで済むと――っやめ、やめてっ!!」



あまりに喚くので、頬を叩いて女を連れて部屋へ向かうフーゴ。ここに来てはじめはその辺に雑魚寝させられていたが、登り詰めて個室を手に入れた。部屋に入ろうというところで、ダナルがこちらを見ているのに気づいた。



「おめえ、あんまり調子に乗るなよ?」


「うるさいぞ。」



そう言って、さっさと扉を閉めた。




その夜、フーゴの部屋にダナル一派が踏み込んできて乱闘になった。しかし、持ち込まれたナイフを奪ったフーゴは、ひとりで、押し入った者たちを返り討ちにした。



「まっていろ、まってろシュテファニ……!! おれを、こんなめに、あわせた……おまえをっ!! 



……めちゃくちゃに、してやる。」




その日の朝を無事に迎えたフーゴは、まるで別人になったかのような風貌だった。






※2022/09/29 運営からのご指摘で性描写を一部変更しました。

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