第10話



 駅からの帰りは二人と一匹である。

コミネとサエは並んで歩いている。

ぺペンギンはリュックの中である。


「その後、如何でしたか?」


コミネはサエを気遣うように静かに尋ねる。


「ええ、色々ありました」


サエも静かに答える。


「まさか泊まる宿が同じだったなんて奇遇ですね」


「そうでしょうか? マルセリーノ統括教授によると、この世界に偶然は無い、何処かで必然が生まれてその必然が重なり合ってできる必然。その必然との出会いを人は偶然と呼んでいるだけに過ぎない、だそうですよ」


サエは清々しい笑顔で応える。


「変わった人ですね」


「当然ではないでしょうか? 言葉を喋るペンギンて、じゃなくてぺペンギンなんて存在自体が変わっていません?」


「今でも信じられないですよ」


「目の前に存在しています」


「そうですね・・・。ところで統括教授とおっしゃられていましたが?」


「ええ、とあるお星様に住んでおられて、お仕事は、そのお星様の研究所の統括教授らしいですよ」


「専門分野は何なんでしょうか」


「宇宙理論物理学? だったと思います」


「物理学の統括教授ですか・・・。」


「いいえ、マルセリーノ統括教授は、研究所全体の統括だそうで、全ての研究の責任者だそうですよ」


「よくご存知ですね」


「お付き合いが長い?深い?かな?ですから」


「そんなに前からお知り合いだったのですか?」


「さあ、どうでしょう。これもマルセリーノ統括教授の言葉ですけど、運命というものがあるとしたなら、その良し悪しを決めるのは時間の長さではなく、その量でもない、そこにある精神の輝きであって、時間と量は相対的なものであり絶対ではない、だそうですよ」


「ぺペンギンか・・・。」


「ええ、ぺペンギンです」

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