第4話



 ペンギンの言う通りに歩いてみた

暫く歩くと駅からの元の表通りに出る。

午前中に通った道。

私はこの橋を渡って河原に降りたのだなということを覚えている。

橋を渡ってからの道をまっすぐに歩いていくと何軒かの店がある。

酒屋と土産物売り場?みたいな店の間に普通の民家と変わらないような建物がある。


「ここや」


 とペンギンが指示を出す。

私は民家のような宿屋の前に立ち全体を見渡す。


「入ろか、てか引き戸引いて入ってや」


私は引き戸を引いて中へ入り引き戸を閉めると、


「客やでー」


 とぺンギンが中の人に声をかける。

すると中から出てきたのは幼気いたいけな少女、私は一瞬、眩暈めまいのようなものを覚える。


「ぺぺちゃん、おかえりー」


ペンギンは答えない、どういうことだ? 


「おじさん、お泊まりですか?」


「あ、ああ、はい、泊まらせていただけますか?」


「あははは、おじさん、おもしろいね、ここはお宿だよ」


「ああ、そうだったね」


「ちょっと待っててね、お父さん、呼んでくるからね」


 私が軽く返事をして暫くすると、奥から愛想の良さそうな中年くらいの男性が出てきた。


「済みません、お待たせしちゃって。お泊まりですね? えーと、ご予約の方ではないですね。一泊でよろしいでしょうか? こちらの方に記帳だけお願いいたします」


 宿屋のご主人と思える男性は、そう言いながら大きな宿帳らしきものとペンを玄関の横にある棚から出してきた。

私は、記帳を済ますと、


「晩御飯とかは用意してもらえるのでしょうか」


と尋ねた。


「ええ、大丈夫ですよ。ちょうどお三人、お泊まりの方がいらっしゃいますので、一緒に作りましょう」


「それは有難いです、よろしくお願いします」


「いえいえ、名物料理と言えるようなものはございませんが。どうぞお上がりください。お部屋をご案内させていただきます」

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